XRを取り巻く技術の正体と未来とは? ミダスキャピタル主催の社員向け勉強会開催

「Metaverse(メタバース)とWeb3の本質や正体」「これらの関係性」、「メタバースe以前に盛り上がっていたミラーワールドはどこに行ったのか」、「このようなトレンドはいつに向けてどのように準備をすべきなのか」は最近のビジネスシーンでの必須教養になっています。ミダスキャピタルでは、22年5月に、株式会社MESON 最高経営責任者(CEO)梶谷健人氏をゲストに迎え、「XRを取り巻く技術の正体と未来」と題した勉強会をオンラインで実施しました。

◆プロフィール

株式会社MESON 最高経営責任者(CEO)
梶谷健人(かじたに・けんと)氏

株式会社VASILYにて国内最大級のファッションSNS「iQON」のグロースや広告事業を担当し、「いちばんやさしいグロースハックの教本」を執筆。フリーランスとして、日本、アメリカ、インドそれぞれで現地のスタートアップや、トヨタや資生堂などの大手ブランド向けにサービスデザインとグロースハックのコンサルティングに従事。海外で日本の技術の存在感が薄れていることへの憤りから2017年にMESONを創業。

 

XRを取り巻く技術の正体

仮想空間であるMetaverse(メタバース)、仮想空間と現実空間のチャネルとなるVR/AR、仮想空間のインフラとなるWeb3

「XRの世界には、『メタバース』『Web3』『ミラーワールド』『デジタルツイン』といった数多くの技術や概念が存在しています。これらは似ているようで異なる概念であるため、
きちんとこういった概念の正体を捉えた上で事業を行っていくことが重要です」(梶谷さん)まずはそれぞれの概念の代表事例や一般的な定義についてご紹介いただきました。

Metaverse(メタバース)

メタバースとは、リアルタイムで、ソーシャルな三次元のメディアを意味します。そのうえでは、独自の経済圏が成り立っており、1社だけで作るのではなく、複数社が一緒に作り上げる参加型メディアです。端的に言ってしまえば、「三次元的なインターネット」と言えるでしょう。代表事例としてはMeta社(旧Facebook)が提供するメタバース「Horizon World」が挙げられます。

Meta社が提供するメタバース「Horizon World」

「Meta社は毎年1兆円をメタバースに投資すると発表しており、実際に直近の1年で1兆円の投資を行い、この『Horizon World』プラットフォームも含めて、彼らは本気で作りにきたりしています」(梶谷さん)

Epic GamesやAnimoca BrandsといったグローバルのBig Tech企業がこぞって巨額の資金を投じながらメタバースプラットフォームを開発しています。
また、Tech企業だけでなく、さまざまなブランド、IP企業なども自社のアセットを活用したメタバース体験の構築を進めています。

メタバースの注目事例

メタバースを理解する上では、メタバースの「現状」と「流派」を理解することも大事であると梶谷さんは言います。

「非常にミスリーディングだと感じるのは、メタバースがいま実現しているのかしていないのかについて、人によって言うことが違います。ここでは、まだ実現していない、という立場に立って考えたほうが理解がしやすいのではないかと考えます」(梶谷さん)

メタバースの現状

メタバースの本来的な定義は、三次元的なインターネットですが、現状は先ほどご紹介したようなWebサイトが個別に独立して存在しているという状態です。それらが有機的に繋がり、ユーザーがその中を相互に行き来しながらアセットを引き継ぐ、という状態には現状なっていません。本来的にはその次元まで到達した状態がメタバースですが、現状はメタバースの過渡期だといえます。

また、メタバースには3つの流派があると梶谷さんは言います。

「何をもってメタバースとみなすかには、大きく3流派あります。XRを使ったソーシャル体験がメタバースだとする流派、Web3を基盤にしたプラットフォームがメタバースだとする流派、3D Gamesがソーシャル化したものがメタバースだとする流派です」(梶谷さん)

これらはいずれも必要な要素であり、実現したい「メタバースの本来の姿」にたどり着くための、いわば「山の登り方の違い」であり、最終的にはこれらを組み合わせていく必要があるという点に変わりはありません。

Web3

続いて、Web3の定義や代表例についてご説明いただきました。
Web3の定義

「Web3とは、端的にいえばブロックチェーン技術を活用した分散型Webの世界です。巨大企業ではなく、ユーザー自身がデータを保持し、ネットワーク上のデータの正しさを分散的に検証でき、データをユーザーが所有できて、その中で収益化もできるようなインセンティブ構造がついている、というのがWeb3の構造です」(梶谷さん)

Read-Write-OwnができるようになったWeb3

ポータルサイトに情報を読みにいく、という形の「Read」しかできなかったWeb1.0に対して、Web2.0になるとTwitterで投稿ができるようになる「Read‐Write」が可能になり、Web3.0では、「Read-Write-Own」ができるようになりました。Read-Writeだけでなく、自分のデータ、コンテンツをOwnできることによって分散的なサービス運営も可能になり、そこにインセンティブ構造がつくことで、これまでのサービスの制約が変わってくる。これがWeb3の本質であると梶谷さんは言います。

デジタルツイン

続いて、デジタルツインの定義についてもご説明いただきました。

デジタルツインの定義と代表例

「デジタルツインは、『物理世界と対になるデジタルデータ』を意味し、現実の世界から収集した様々なデータを利用して、デジタル上で物理世界を再現する技術です。XRやIoT、スマートシティなどの領域で活用されています」(梶谷さん)

例えば、国土交通省が主導している日本全国の主要都市の3Dデータとメタデータ(このビルはどういうビルであるといったようなデータ)を構築して、それをオープンデータとして公開しています。また、Google Mapのデータを使った、地球規模の三次元データの生成なども行われています。

ミラーワールド

ミラーワールドの定義と代表例

「そして、主にARやMRなどのインターフェイスやデジタルツインデータを用いてデジタル世界と物理世界がブレンドされた世界のことを「ミラーワールド」と呼んでいる、と梶谷さんは言います。

 

各技術・概念の正体や関係性を説明する概念「テクニウム」

わかりそうでわからないこれらの技術や概念を理解しやすくするために、梶谷さんは『テクニウム』という思想についてご説明くださいました。

メタバースやWeb3といった概念を理解するために役立つ思想が書かれた書籍『テクニウム』

「テクニウムという本は、Tech領域でビジネスをする上で非常に示唆深い本ですので、是非読んでいただきたいおススメの本です」(梶谷さん)

『テクニウム』は、「WIRED」の創業者ケヴィン・ケリー氏が執筆した書籍ですが、ここでは、「テクニウムとは、テクノロジーの進化には『ある種の意思』がある。言い換えるとテクノロジーの進化には決まった方向性、『力学』がある」とする考え方について語られています。

テクニウム思想の概念図

テクニウム思想とは、複数の技術進化の影響や社会の要求といったさまざまな要因によって、テクノロジーがまるで意思をもったようにある1つの方向に進化する様子が「観測」されている、とする考え方を示しています。

テクニウム思想の事例

有史以前、当時交流のなかったアフリカ、西ユーラシア、東アジアの3地域において、53の共通のイノベーションが、ほぼ同じ順序で、独立して発明されたことがわかっています。

このように、テクノロジーの進化には「ある種の意思」、「決まった力学」がある、と梶谷さんは説明します。

ソフトウェアにおけるテクノロジーの力学

「では、ソフトウェアにおけるテクノロジーの力学は何か? それは、近づける力、引力と、押し広げる力、斥力(せきりょく)の2つである、ということです」(梶谷さん)
引力とは、デジタル空間と物理世界を近づける力。例えば、メインフレーム、パーソナルコンピュータ、フィーチャーフォン、スマートフォンの流れをイメージして、目の前のお店を知るまでの距離を考えるとわかりやすいでしょう。
一方で斥力とは、TikTokyaTwitter上で自分たちのアイデンティティがより拡張していったように、デジタル空間を推し広げてこれまでできなかった表現をしていける力を指しています。

ソフトウェアテクノロジーにおける各種概念の関係図

「このように考えると、デジタル空間と物理世界をつなげていく青の引力と、デジタル空間を押し広げ、新しい世界や社会のレベルまで広げていこうという赤のベクトル、斥力。これらが、メタバース、Web3、デジタルツイン、ミラーワールドに該当する、と考えることができるのです」(梶谷さん)

つまり、デジタル空間と物理世界を近づけるためには「対応付け」する必要があります。
「対応付け」するためのデータを作ろうとしているのが、デジタルツインという考え方です。

「対応付け」を使いながら、実際にデジタル空間と物理世界がブレンドされた世界を作ろうとしているのが、ミラーワールドの領域です。

デジタル空間を押し広げて新しい世界を作っていこうとしているのがメタバース、新しい社会を作っていこうとしているのが、Web3の考え方。

そして、この引力と斥力という2つの力を加速させるインターフェースがXRとなります。

メタバースが目指す「世界」とWeb3が目指す「社会」の関係図

「まず、私たちが生きている空間としての『世界』と、それを支える基盤システムとしての『社会』という形で捉えるとわかりやすいと思います」(梶谷さん)

私たちは物理世界に住んでいますが、その物理世界を支える社会システムとして、法律や通貨、金融、企業、希少価値といったものが存在しています。社会システムは『サピエンス全史』でいうところの「虚構=Trust」です。存在を信じているから生まれている価値です。
Trustで成り立っている社会と言い換えることができます。

「世界」としてはメタバース空間を作っていく、デジタル世界における社会システムに相当するものがWeb3である。つまり、虚構によって成り立っている社会システムをプロトコルベースで虚構レスに構築していこうとしているのがWeb3の正体である、ということです。

メタバース、XR、Web3の関係図

メタバースとミラーワールドのリバランス

ミラーワールドとメタバースの関係図

ミラーワールドとメタバースの関係

「物理世界をデジタル空間とつなげていき、より便利で豊かな社会にしていこうというのがミラーワールドの考え方です。従って、世界というレイヤーで対になるような概念であるということがわかります」(梶谷さん)

メタバースとミラーワールドの定義

メタバースは、主にVRなどを使って、デジタル世界の拡張をしています。
ミラーワールドは、デジタルツインやAR/MR技術を使ってフィジカル世界とデジタル世界の融合を実現していこうとしています。

ところが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、人が物理的に集まることが難しくなった状況下やMeta社の動き、Web3の潮流によってメタバースが活況を呈する一方で、ミラーワールドの歩みは鈍化してしまった、と梶谷さんは指摘します。

「ミラーワールド、すなわち物理世界とデジタル世界を融合しながら拡張していくという動きは、ここから再加速していく、つまりリバランスしてくると予想しています。誤解を恐れずに単純化すると、VRとARの登場から明らかにVR優位になり進化してきましたが、これからはARがリバランスして、VRとARが同時に進化していくような状況になっていくだろうと考えている、ということです」(梶谷さん)

ミラーワールド構築の再加速の兆し

ミラーワールド構築の再加速の兆し

ミラーワールド構築が再加速していく兆しとして、「新型コロナの収束」「Big TechのAR領域での発表」「Web3とARの接近」という3つの軸があります。

新型コロナの収束については、世界最大級の音楽フェスティバルが開催されていることや、マスク着用義務の段階的な解除が世界中で起こっていることからも明らかです。
人が集まれる社会が戻ってきたことで、ミラーワールドのような体験を実装していくインセンティブが強まっているといえるでしょう。

また、Big TechのAR領域での発表が、ここ数カ月で立て続けに起こっていることにも注目したい、と梶谷さんは言います。
例えば、Snap社が発表したAR機能・提携に関するニュースは大きなインパクトがありました。

Snap社が発表したAR機能・提携に関するニュース①

Snap社が発表したAR機能・提携に関するニュース②

Googleが発表したGeospatial API

「中でも最も衝撃的だったのは、Googleが発表したGeospatial APIです」(梶谷さん)

Geospatial APIは、Googleが地球規模でARの位置合わせが可能なAPIで、街の中でミラーワールド的な体験ができるというもの。
これまで、街の構造に即した形で情報やコンテンツを出していくためには、事前に開発者が現地を事前スキャンする必要がありましたが、世界中のストリートビューデータを機械学習させ、そこでスキャンをしているため、事前スキャンが必要なくなったという点が画期的といえます。

続いて、ミラーワールド構築が再加速していく兆しの3つ目である「Web3とARの接近」についてもご説明いただきました。

Web3とARの接近

「いま、世界中でWeb3のプロジェクトが増えていますが、NFTの所有価値を高めたい、そして非Web3ユーザー層にリーチしたい、という2つの理由からARを活用するケースが増えています」(梶谷さん)

NFTの所有実感を持たせるためにARを活用する、難しい概念であるWeb3を非Web3ユーザー層に興味をもってもらうためにARを活用する、という取り組みが増えているといいます。

Web3とARの接近/各社の取り組み①

Web3とARの接近/各社の取り組み②

このような各社の取り組みは、Web3側のインセンティブもあり、AR側で可能な領域が増えてきたことも相まって、今後さらに増えていくことが予想されます。
メタバースだけでなく、ミラーワールドにも着目して考える、VRだけでなくARもセットで考えていくということが重要だと梶谷さんは言います。

 

XRを取り巻く技術の時間軸と必要な準備

最後に、XR関連技術は今後どういった時間軸で発展していくのか、そしてその時間軸に対してどのように準備していくべきなのかについてお話いただきました。

「そこを考えていく上でBig Techの動きに着目するとわかりやすいかもしれません」(梶谷さん)

例えば、Meta社。Meta社はトップページにメタバースに触れられており、リッチなメタバース体験を提供するためのハイエンドVRデバイスの買う発に取り組んでいます。

Meta社の動き①

Meta社の動き②

Meta社が発表しているデバイスロードマップによれば、2024年までに4つのVRヘッドセットと2つのARグラスをリリース予定です。

一方、メタバースには否定的でミラーワールド体験の構築を目指しているのが、ポケモンGOで知られるNiantic社です。

Niantic社の動き

また、日本ではあまり知られていませんが、海外ではARの大家として知られるSnap社は、AR/MR関連の機能を続々リリースしています。

Snap社の動き

その他のBigTechの動き

「このようにXRを取り巻くいくつもの技術がいつ実現するのかというと、構築に終わりはないので、完了時期を予測することは難しいですが、加速の時期としては2024年頃に一気に加速するだろうと予測しています」(梶谷さん)

すなわち、2024年に向けての2022~2023年は、その加速に向けた準備期間であるといえます。この準備期間でいかにXRのユースケースの構築やシステム構築をしておけるかが勝敗をわけるだろう、と梶谷さんは指摘します。

「来たるXR時代に向けて、是非準備していきましょう!」(梶谷さん)

ミダスキャピタルでは、ミダスキャピタル投資先の社員向けに定期的にこのような勉強会を開催しています。企業群が横断してナレッジをシェアすることで、企業群としての成長ができる強みがあると考えています。これからも、このような勉強会を引き続き開催してまいります。

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