セミナーリポート プロフェッショナルファームの実情と働く価値に迫る

会計事務所や投資会社、コンサルティングファームなど、専門性の高いサービスを提供しているプロフェッショナルファーム。そこで働くことはその後のキャリアにどのような影響を与えるのか、また職場の様子や仕事内容、評価基準はどういったものなのか、特に学生にとって、知る機会はそう多くないだろう。

2021年9月18日、株式会社ミダスキャピタルが「学生向けネクストプロフェッショナルセミナー」をオンラインで開催した。セミナーにはプロフェッショナルファーム勤務経験があり、現在「CxO」もしくはそれに準ずるポジションで活躍している5人のメンバーが登壇して、学生たちにメッセージを届けた。
その様子をレポートでお伝えしたい。

■登壇者プロフィール

SheepMedical 株式会社 取締役 CSO
田畑信哉氏

慶應義塾大学法学部卒業。2005 年大和証券 SMBC に入社し、 M&A アドバイザリー業務に従事。その後マッコーリーにてクロスボーダーM&A を中心とする投資銀行業務に携わった後、 CITICキャピタルの日本ファンドにて国内 PE 投資に従事。2015 年ジェフリーズの東京での投資銀行部門立ち上げメンバーとして参画し、国内外の M&A 及び資本調達に従事。2021 年 2 月より Sheep Medical 株式会社に参画し、現職。

 

C2C PTE. LTD. CFO
羽嶋優氏

京都大学法学部卒業。2007 年新日本有限責任監査法人入所。国際部にて外資系企業及び総合商社の法定監査に従事。その後 UBS 証券株式調査部、デロイトトーマツフィナンシャルアドバイザリー株式会社を経て、 2015 年よりアントキャピタルパートナーズ株式会社にてプライベート・エクイティ投資業務に従事。2021 年 C2C PTE. LTD に参画。

 

株式会社GENDA CFO
渡邊太樹氏

一橋大学商学部卒業。2011 年 4 月、株式会社みずほコーポレート銀行(現・株式会社みずほ銀行)入行。本店営業部にて、 事業法人のリレーションシップ・マネージャーを担当。2015 年 4 月、ゴールドマン・サックス証券株式会社入社。投資銀行部門アドバイザリー・グループのヴァイス・プレジデントとして、主にクロスボーダー M A の助言業務及び株式・債券による資金調達関連業務に従事。2021 年 6 月に株式会社 GENDA に参画し、現職。

 

株式会社ミダスキャピタル ディレクター
香川恵美氏

東京大学工学部卒業。2009 年総務省入省。地方自治・地方行財政業務に従事。2015 年ソフトバンク子会社にて事業開発、海外事業展開プロジェクトリーダー。2017 年からベイン・アンド・カンパニーにて戦略コンサルティング業務に従事。2020 年株式会社ミダスキャピタルに入社し、現職。

 

モデレーター>

株式会社ミダスキャピタル 取締役パートナー
寺田修輔氏

東京大学経済学部卒業。 Chartered Financial Analyst(CFA 協会認定証券アナリスト)。2009 年よりシティグループ証券株式会社にて株式調査業務や財務アドバイザリー業務に従事し、ディレクターや不動産チームヘッドを歴任。2016 年に株式会社じげんに入社し、取締役執行役員CFO として M&A を中心とする投資戦略、財務戦略、経営企画の統括や東証 1 部への市場変更、コーポレート体制の強化を牽引。2020 年 7 月より株式会社ミダスキャピタルに取締役パートナーとして参画。

 

ファームの違いは「コアビジネス」「サービス」にあり

株式会社ミダスキャピタル 取締役パートナー寺田修輔氏

 

寺田:プロフェッショナルファームにはそれぞれに特徴がありますよね。田畑さんは、複数のファームに在籍された経験がありますが、雰囲気の違いについて教えてください。

田畑:本社がどこにあるのか、会社のコアビジネスが何かというところで、雰囲気が違ってくる印象がありますね。まず、日本の会社はクライアントとの間に長年の歴史や関係があり、また、長年在籍することが前提となるカルチャーというのが色濃いと感じます。次に勤務したマッコーリーはオーストラリアの大手投資銀行ですが、自己資金で投資したり、世の中を騒がせるような案件を世界で仕掛けるなど、非常に勢いがありました。本業としてはアセットマネジメント(資産運用)に強いのが特徴で、超長期のアプローチが得意なのがファームのカルチャーでしたね。

また、次に勤務したジェフリーズはアメリカの金融持株会社ですが、投資銀行の仕事だけに特化していました。エクイティビジネスに強く、また、収益をあげることへのモチベーションが強くて、とにかくアグレッシブでしたね。当時、ランキングを駆けあがっているところだったので、「とにかく案件をとっていくぞ」という雰囲気だったんです。会社の成り立ちやあり方も、その雰囲気に大きく影響していると感じます。

SheepMedical 株式会社 取締役 CSO 田畑信哉氏

 

寺田:羽嶋さんは、職種が異なる形で複数のファームに所属されていましたが、それぞれの違いについてはいかがですか?

羽嶋:サービスラインによって、ファームのカルチャーは変わってくると思います。最初に在籍した監査法人はコンサバ(保守的)なカルチャーでしたが、サービスとして間違ったことは言えないし、粉飾を見逃してはいけない慎重な職務であることが影響していたと思います。とにかく調べ尽くして、結論が出てから話をするというカルチャーが根付いていたと感じますね。

また、UBSは「反応速度が命」のマーケット部門に在籍していました。そこでは、「おおよそ正しいことをいかに早く回答するか」を常に求められていましたね。デロイトでは私は投資銀行出身の上司のチームに所属していたので、 投資銀行に似た雰囲気でしたが、上司やメンバーによってチームの色は違っていたように思います。その後に転職したアントは、「何かしろ」と言われることはほとんどなく、仕事は自身で作り出すカルチャーでしたが、その分結果を出すことにはシビアでしたね。結果に対する責任を負うという意味で、PEファンドは厳しさがあったと思います。

 

日系はハイコンテクスト、外資はローコンテクスト?

寺田:日系と外資系を意識した上での社風や働き方の違いについては、いかがですか?

香川:私は総務省から日本企業に転職して、さらに外資系のベインにうつりました。日系はすごくハイコンテクストで、「過去のことをどれだけ知っているか」、「この人のことをいかによく知っているか」が、仕事の成果にも直結しがちです。ある意味では、非効率的な努力が必要になります。しかし、チームメンバーや上司とシンクロしていくことで、事前説明なしに進んでいけるような効率性を獲得できる場合もあります。その状態になるまでは非常に大変ですし、上司と合わない時は最悪ですけどね。困った時に誰かが察して助けてくれる、家族のような安心感があるところはよかったと思います。

一方、外資系はローコンテクストで、テーブルに上がっている情報だけで判断します。コミュニケーションを丁寧にすることで、そこにいる人は誰でもすぐにキャッチアップできます。ただ、困っている時に「私、困っています」と言わないと、察してはもらえません。それぞれに良し悪しがありましたね。

株式会社ミダスキャピタル ディレクター香川恵美氏

 

寺田:渡邊さんが在籍されていたゴールドマン・サックスは社風にこだわりがあると認識していますが、いかがですか?

渡邊:日系と外資系の大きな違いは、終身雇用を前提としているかどうかだと思います。日系は「総合職」採用が多いですが、つまりは自分の意思とは異なっていても会社の異動命令には必ず従い「なんでもやる」という採用です。今は少し雲行きが怪しくなっていますが、基本的には定年までの雇用がほぼ確実に保証されています。

一方、外資は「部門」で採用します。採用担当も「人事」ではなく、あくまで「同じ部門」の人です。例えるなら、サッカー部に入ってずっとサッカーをする感覚で、サッカー部の人がサッカー部員を採用しています。そこにいる人は長年サッカーをしていて、かつ長年在籍していることは、サッカーがうまいことの証左なんです。世界トップクラスで優秀な外国人もいるので、まるでクリスティアーノ・ロナウドと試合にも出られることもあるようなイメージです。一方、長年同じスポーツをさせると、個人間の巧拙は如実に出るため、会社を去る人が多いのも事実です。

寺田:働き方については、いかがですか?

渡邊:銀行に勤めていた時は「少し忙しい日本の会社員」という感じでした。土日は完全に休日なので、自主トレのように勉強を結構していました。ゴールドマン・サックスに転職したあとは、古き良き外資系投資銀行のスタイルで働いていました(笑)。現在はずいぶん働き方も変わってきていると思います。

寺田:ゴールドマン・サックスに在籍されていた時、チームの1〜2年目の社員の働き方はいかがでしたか?

渡邊:ワークライフバランスは明らかに改善しました。ただ、コロナの影響でリモートワークが進んでいて、先輩のPCスクリーンを見て学んだり、食事をしながら疑問点を解消したりする機会がないので、どんなに優秀な新卒社員でも作業効率は下がらざるをえず、労働時間は思うほどに減少していないかもしれません。あとは、みんなでワイワイするのではなく家で孤独に残業するのは結構つらいので、コロナ禍でも若い方々は本当によく頑張っていらっしゃると思います。

 

プロファームで評価される人の共通点

寺田:選考のポイントについて、羽嶋さんに、セカンドキャリアとしてPEファンドを検討している方もいると思うので、アントにおられた時にかかわられた採用の話を聞かせてください。

羽嶋:アントでは、最初の面談や2回目の面談を担当することが多かったです。そもそも、PEファンドはファンド期間である10年間は少なくとも同じチームで動くので、家族のように相当仲が良くないとやっていけません。ですから新しく誰かを採用する場合、アントではメンバー20人全員が面接をするんです。最初はジュニアやメンバークラス、中堅、マネジングディレクター、そして最後に社長面接という感じですね。

受けにくる方は、プロフェッショナルファーム出身の方が多くて、スキルセットでは特に言うことはないくらい優秀です。ただ、採用されない人には共通点があって、「成長したい」という発言なんですよね。私たちが知りたいのは、「その人がチームに対してどういう価値が提供できるか」、「その人がどういうことを実現したいか」です。それなのに、インプット思考で来られると、ちょっと困ってしまいます。逆に、「チャレンジしたい」など「こういうことを実現したい」という人には好感を抱きました。その人の”マインド”を重視していましたね。

C2C PTE. LTD. CFO 羽嶋優氏

(編集注:この後、香川さん、渡邊さんからもベインやゴールドマンの選考基準について説明がありましたが、セミナー限りでの発信とさせていただきます。)

 

寺田:評価される人や、出世する人に共通点はありますか?

羽島:やはり、コミュニケーションを取れる人が一番評価されると思います。プロフェッショナルファームではプロジェクトベースで仕事をすることが多いのですが、アサインされるかは、周りからの評価に依存します。いいプロジェクトに入れると、それが自分の評価になり、報酬にも反映されます。自分のできることとできないことを把握して、それを適切に上司に伝えられることは、とても重要です。そして、自分の主張を大きな声で周囲に伝えられることも、評価される人の特徴だと感じます。

寺田:田畑さんはいかがですか?

田畑さん:上司から言われて印象に残った言葉があって、「what have you done for me today?」なんですよね。やはりみんな人間なので、1から10まで説明しなくてもやってくれていたり、一歩先をやってくれていたりする人を評価したいと感じます。もちろん、よきコミュニケータであることは大前提で、それにプラスアルファを提供してくれる人は、どこでも求められているんです。自分もこれまで意識してやってきたことですし、社内で活躍している人は、しっかり根回しもやっている人だと思いますね。

 

若手時代にやった方がいいこと、メッセージ

寺田:振り返って思う若手時代を過ごすにあたって意識すべきことはありますか?

香川:若手の時は、睡眠も取らずに頑張ってしまう時期だと思いますが、周りでも倒れた友人が何人もいました。メンタルや体力を過信せずに、ちゃんとストレス発散をしながら働いていただきたいです。そして、家族や友人などの自分の原点を大事にすることが、自分を守ることにもつながると思います。

新卒で希望の職場に内定をもらうと、万能感に包まれてしまいがちで、「上司の言うことは絶対違う」と思うこともあると思います。それでも、「まだ自分は若手だ」ということを念頭に置いて、もし違うと思っても、まずは流されてみるゆとりを持ってほしいですね。一旦自分の意見は飲み込んで、流されて失敗したとしても、「それもいい経験になるよ」と伝えたいです。

株式会社GENDA CFO 渡邊太樹氏

 

渡邊:私は「こうやって宝くじを当てました!」みたいな方法ではなく、あくまで再現性があることとして思いつくことは、メモを取って復習することです。私は、仕事中に分からなかったことや間違えたことを、全部メモしていました。手書きでは間に合わないので、まずはWordファイルやメールにザクっとコピペして、空いた時間に清書して見返すという感じで、最終的に180ページくらいたまりました。年長者との経験値の差を、いかに早く埋めるかが重要だと思っていたので、一度見聞きしたことは、なんとかして自分の肥やしにしていく積み重ねをしていましたが、これは明らかに効果がありました。

寺田:ありがとうございました。

寺田氏、田畑氏、羽嶋氏、渡邊氏、香川氏(左から順に)

 

セミナーの最後に紹介されたのは、「ミダスキャピタルビジネスコンテスト2021」だ。「自分のビジネススキルを試したい」というプロフェッショナルファーム志望の学生向けに、昨年に引き続き今年も開催される予定だ。参加した学生たちにはビジネスプランを練ってもらい、最終日に発表を行う。優勝チームには賞金100万円が贈られるほか、特に優秀な参加者は、ミダスキャピタル及び投資先企業の新卒採用選考プロセスのインターンに招待される。今回のセミナーに登壇したメンバーも、コンテストではメンターや審査員として参加するので、ぜひ気になった方は参加してみてはいかがだろうか。コンテストの開催期間は2021年10月17日から24日までで、応募締め切りは10月1日までとなっている。

■ミダスキャピタルキャリアプログラム「ビジネスコンテスト2021」開催日時:2021年10月17日〜24日(初日に開会式、閉会式あり)
会場:東京都内(開会式と閉会式のみ参加必須、期間中はオンライン、オフライン不問)
募集対象:プロフェッショナルファーム志望の大学生・大学院生
申込締切:10月1日午後6時
応募URL:https://peatix.com/event/2182440/view

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