14年来の業態を変更し、残りの人生を外食DXに捧げる!フードテックキャピタル鈴木大徳社長の挑戦

オンラインフードデリバリーサービスの統合管理システム『delico(デリコ)』などを手掛ける株式会社フードテックキャピタルは、2022年2月、株式会社ダイニングイノベーション創業者西山知義氏他を引き受け手とする第三者割当増資により、1億4000万円の資金調達を実施しました。

主力事業である『delico(デリコ)』開発の経緯や、今後の取り組みについて同社代表取締役社長鈴木大徳氏にお話を伺いました。

◆プロフィール

株式会社フードテックキャピタル
代表取締役社長
鈴木大徳

2004年株式会社CFO Consulting Groupを創業。累計1,000社以上の財務コンサルティングを手掛け、外食企業クライ アントは300社4000店舗以上に上る。そのうち上場した企業は一家ダイニングプロジェクト、串カツ田中、ギフト、NATTY SWANKY等 (出資先含む)

 

財務コンサルティング会社からの業態変換 残りの人生を外食DXに捧げる決意

 

――まず、外食産業との出会いについてお聞かせください。

もともと私は会計事務所出身で、そこから独立して資金調達を得意とする財務コンサルティングの会社を運営していました。独立後、最初に財務のお手伝いをさせていただいたのが、ブライダルやホテル運営で有名なPlan・Do・See Inc.という企業です。飲食業界は横の連携が強いため、そこからご紹介をいただく形で業界内の案件が広がっていきました。

同時に、地方銀行100行の東京進出支援も手掛けていたので、この100行の金融機関を顧問企業1000社に紹介し、10年間で3000~4000億円規模の資金をソーシングしてきました。その中で、飲食のベンチャー企業が300社、計4000店舗弱の顧問先があり、年間1社程度しか上場しないといわれる飲食業界で、3年で4社の上場を支援しました。

 

――そんな中、2020年12月1日に社名を変更されました。財務コンサルティング事業から大きく舵を切られた理由は?

2020年に世界中を大混乱に陥れた新型コロナウイルスによって、最も打撃を受けた業界の一つが飲食業界でした。顧問先の300社が大変な状況に陥り、20~30代を共に駆け抜けてきた同志の社長たちが次々と倒れていくのを目の当たりにしたのです。年商300億円の企業が年商100億円に、時価総額が0円になるという状況です。年間で数十億円の固定費が必要な一方で、営業休止を要請される。何とかできないだろうかと思いました。

そしてコロナ禍で劇的に変革したのがオンラインフードデリバリーサービスでした。出前といえば「ラーメン一丁!」と電話するのが当たり前だった飲食業界で、アプリで注文してタブレットで受注、店員ではない配達員が出前を届けるというDXが一気に進みました。

時を同じくして、もともと縁のあったミダスキャピタルの周りにテクノロジー人材が集まり始めていました。日本最高峰のテック人材と組めば、新しい世界を作れるのではないか。

目の前で困っているお客様を何とか救いたいという思いから、残りの人生をかけて外食のDXに挑戦しようと決意しました。役員も全員交代し、14年続けたThe CFO Consultingという社名を変更。一気にメンバーを集めて、2021年4月から取り組みをスタート。10月に『delico』のサービスをローンチすることに成功しました。

 

――スピード感のあるご決断でした。迷わず新たな業態に飛び込めたのはなぜでしょうか。

飲食店は日本全国で70万事業所あると言われており、その9割以上は中小零細企業、いわゆる個店です。1企業で1~3店舗を所有する個店にITやテックのリテラシーはこれまで必要ありませんでした。飲食業界で最初のDXといえば、商品マスター登録をして、在庫管理のできるPOSレジを導入するという世界です。昭和の時代から50年かけてろくにレジすら導入されなかった業界で、たった1~2年の間に延べ約20万店舗でオンラインデリバリーサービスを受注するためのタブレットが導入されました。

イートインでの店舗運営が難しくなった中で、テイクアウトやデリバリーを行う。居酒屋がお弁当を販売する。やらなければ生き残れないという危機感の中で、劇的にDXが進みました。そして、ハンバーガーや寿司、ピザなど、過去最高益を叩き出して息を吹き返している店舗がたくさんあります。

また、長期的に見ても、日本の外食産業は約30兆円以上といわれる、非常に大きなマーケットです。そして、世界的課題であり、日本が絶対に解決しなければならない課題といえるのが、労働力の確保です。

日本の高齢化社会によって外食産業で働く労働力は明らかに減少していきます。

一方で、日本の食のレベルは非常に高い。200~300円の牛丼のクオリティも素晴らしく、5~10万円というミシュランを獲得できるような飲食店の数も日本がいちばん多いといわれています。外食における日本の品質と安全性は世界ナンバーワンだと思っているので、これを死守していくためにもDXは必要です。今後10年でさらに外食のDXが進むことは間違いないという手ごたえを感じ、外食DX元年なんだと直感しました。

 

――サービスローンチ以来、飛躍的に導入数を増やしているオンラインフードデリバリー統合管理システム『delico(デリコ)』について改めてお聞かせください。

コロナ禍でオンラインフードデリバリーが普及しました。先ほど20万店舗でそのためのタブレットが導入されているとお話ししましたが、うち約10万店舗は複数タブレットを導入していると推定されています。これによって飲食店側で何が起きたかというと、一つは「タブレット地獄」と呼ばれる状況です。

オンラインフードデリバリーサービスを手掛ける事業者は、Uber Eatsや出前館、menuなど複数存在しています。飲食店としては、たくさんのプラットフォームに出店しているほうが注文を受けやすいのでできるだけ多くのプラットフォームと取り引きしたいと考えます。ところがフードデリバリーの仕組みは各社バラバラなので、サービス業者ごとにタブレットを導入する必要がある。

もう一つ、コロナ禍でリアル店舗が運営できなくなった一方で、アプリ上でのみ出店するゴーストレストラン、バーチャルレストランと呼ばれる業態が誕生しました。平たくいうとコロナ禍で店舗運営ができなくなった居酒屋が、餃子屋、唐揚げ屋、お弁当屋といった形で居酒屋のキッチンを使って複数業態を始めるといった状況です。そうすると、サービス業者ごとのタブレットが必要であるのは当然のこと、業態ごとにもタブレットを導入する必要が出てきます。

通常飲食店ではハンディで受けた注文をPOSレジに飛ばし、POSレジからKDS(キッチンディスプレイシステム)に飛ばすことでホール、レジ、キッチンの情報を統制しています。

ここにオンラインデリバリーサービスのタブレットが複数導入されるとどうなるか。
当然他社のタブレット同士の情報は連携されないため、どのサービスで受けた注文なのか、何の調理を始める必要があるのかを手書きでやり取りする、それぞれの端末の総合計をエクセルに手打ちして店舗としての売上の総合計を算出し直す、というオペレーションが発生します。ミスも起きやすく、業務負荷も大きい。

この状況を解決するのが、統合管理システム『delico』です。
1枚のタブレットでオーダーを一元管理し、印字、売上管理などを行うことができます。これによって飲食店の生産性は劇的に向上し、収益増加を図ることができるのです。

『delico』は2021年10月のローンチ以来、約半年で導入店舗が1000店舗に迫る勢いとなっています。これを1年で5000店舗、2年で1万店舗を目指していきたい。

そのために、エンジニアの採用を強化してプロダクトのさらなる品質向上を進めていきたいと考えており、今回の資金調達の主目的もそこに置いています。

 

キッチン付きオフィス、実験店舗運営を通じて 徹底的に飲食店に寄り添う

――競合他社の追随もある中で、改めて御社の強みとは。

一つはミダスキャピタルのおかげで、豊富なスキルやノウハウを持つ経営陣がこの1年半で集まったということ。CTOはヘルスケアテックのFiNC立ち上げメンバーで非常に優秀なエンジニアです。これまでまったくDXが進んでいなかった飲食業界に優秀なテック人材を集めることは難しかったので、この巨大な産業に優秀な人材が集まってくれることには非常に価値があると思っています。

また、テック人材だけでなく、食、経営、ファイナンス領域のプロフェッショナルなど、各ジャンルのトップ人材をしっかり集めて外食DXを成し遂げたいと考えています。

二つ目は飲食店にどこまでも寄り添う、ということ。そもそも目の前で苦しんでいた飲食店や飲食店経営者、飲食産業を何とかしたいという入り口からこの業態をスタートしているので、ただシステムを提供するだけでなく、店舗側にとって何が本当に便利なのかを本気で追求していく。その象徴的ともいえる取り組みが、キッチン付きのオフィスです。実際にゴーストキッチンとして出店しており、キッチンでデリバリーの注文を受けて調理します。そこで、本当に何が問題なのかを突き詰めてUI、UXに反映させていきます。エンジニアがそこで体験しながら開発しているというのは他にない特徴だと思います。

さらに、実際に僕たちは直営20店舗、フランチャイズ20店舗、合計40店舗、「七宝麻辣湯(チーパオマーラータン)」をはじめとするラーメン店等を所有して、飲食店経営をしています。ここにタブレットを置いて、この店舗ですべて実験をしているのです。店内の配置設計や最適な技術の選定を行い、技術とオペレーションの間で不都合が起こらないか、イートインとデリバリーのバランスは何が最適でどうなるとオペレーションが崩れるのかといったことをすべてこれらの店舗で実験しています。

プロダクトが改良され新バージョンとなった際は、自分たちで試験をして、良くなったものを世の中へ。これを繰り返していきます。実際に自分たちで使って運営してみないとその人たちにとって本当に便利かどうかはわかりません。その思想と発想で開発をしています。delicoの導入を検討されている方に我々の店舗を見に来ていただくこともあります。

プロダクトで差別化できることはもちろん、店舗を実際に持っていて、そこで開発をしている。かつ、これだけのスピード感、これだけのメンバー、これだけの思いでやっているというのは他ではまねできないことだと思っています。

 

――今後注力していきたい取り組みは何ですか。

現在の事業を伸長させていくことがまず一つ。

もう一つは、コロナ禍を超えて強い業態開発のお手伝いをしていくこと。飲食店の人たちは、これから新しい業態に変わっていく必要があっても、自分たちでそれを開発していくことは簡単ではありません。それを僕たちがテクノロジーを駆使してお手伝いさせて頂く。

例えば、「焼肉ライク」という焼肉店があります。今回の資金調達先でもある株式会社ダイニングイノベーション創業者西山知義氏が立ち上げられたブランドですが、焼肉ライクは一人焼肉が売りで、客単価は1300円、平均滞在時間は20分です。牛丼チェーンは同じく顧客の平均滞在時間は20分ですが、客単価は300円。同じ回転をすると仮定した場合、こちらのほうが売上が上がります。このような形で業態そのもの、そして入り口となるアプリ開発、調理指示システム設計などを一緒に手掛けていく。パートナーと組んで、業態そのもののDX開発のお手伝いにさらに注力していきます。

 

――中長期的な展望についてお聞かせください。

今後、確実にロボット技術が発達していきます。一つのロボットで数百種類もの調理ができる調理ロボットや鍋振りロボットなどもすでに登場しています。つまり近い将来、そのような最先端テクノロジーと飲食店の融合が始まっていく。ごく当たり前のように、調理場でロボットが活躍する時代がくるでしょう。

しかし、技術が単体で飲食店に入ってきても、デリバリーサービスでタブレット地獄を引き起こしたのと同様、既存の店舗オペレーションを棄損するような事態が起こることは目に見えています。店舗に見合った技術を一緒にデザインしていくことが必要です。それを僕たちの店舗で実際に実験をして実現させていきます。

飲食店現場のDXをデザインし、各技術を滑らかにつなぐ企業になっていく。そのために、実際のR&D用の店舗を所有する必要がありますし、同時に各分野のビジネスプロフェッショナルが集まる必要もあります。

その中で最終的には飲食業界70万事業所の皆さんをしっかりと幸せにしていきたい。飲食店に寄り添う、飲食店ファーストを基本思想として、これからも外食のDX化に取り組んでいきます。

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