1,000万人の推し活をアップデートする——ミダス×アソビの挑戦

社会現象化する「推し活」。芸能、スポーツ、アニメといったあらゆる分野に広がる巨大マーケットに成長しました。そうした中、株式会社ミダスキャピタルと、タレントマネジメント事業などを手がけるアソビシステム株式会社は2025年7月、新会社アソビダスを設立しました。「推し活」プラットフォームを立ち上げ、潜在層の掘り起こしやマーケット拡大を狙います。

「きゃりーぱみゅぱみゅ」「新しい学校のリーダーズ」「FRUITS ZIPPER」を輩出するアソビシステムと、ミダスキャピタルがタッグを組んだ狙いとは。アソビダスの代表取締役に就任した田村光紀氏、アソビシステム代表取締役の中川悠介氏、ミダスキャピタル代表パートナーの吉村英毅氏が語ります。(記事中敬称略)

◆プロフィール

株式会社アソビダス 代表取締役CEO
田村 光紀(たむら・ひろき)氏

株式会社PIFホールディングス代表取締役。エンターテインメント、タレントマネジメント、地方創生、プロモーション企画など多角的事業を統括。2020年の設立以来、“人と人をつなぎ、感動を生み出す”を理念に、オンライン・オフライン両面でエンタメ体験の質向上を牽引している。アソビシステム株式会社では創業パートナーであり取締役を務める。2025年7月、株式会社アソビダスの代表取締役CEOに就任。

アソビシステム株式会社 代表取締役
中川 悠介(なかがわ・ゆうすけ)氏

大学在学中よりイベントオーガナイザーとして、クラブイベントやファッションショーなどの企画に携わる。2007年にアソビシステム株式会社を設立。「青文字系カルチャー」の生みの親として、「HARAJUKU CULTURE」を国内外に発信。イベントプロモーションやアーティストマネジメントなどを通じ、日本のポップカルチャーを世界へと広げる事業を展開している。内閣官房「クールジャパン官民連携プラットフォーム」構成員。

株式会社ミダスキャピタル 代表パートナー
吉村 英毅(よしむら・ひでき)氏

東京大学経済学部卒業。2003年大学在学中に株式会社Valcomを創業。2007年株式会社エアトリを共同創業し代表取締役社長に就任(現在は退任) 。 2016年株式会社エアトリを東証マザーズに、2017年東証1部に上場。その後2017年ミダスキャピタルを創業。ミダス企業群であるBuySell Technologies、GENDA、AViCが東証上場。公益財団法人ミダス財団代表理事、一般財団法人ネクストジャパン・イニシアティブ代表理事も務める。

コロナ禍を経て、市民権を得た「推し活」

――最初に皆さんが出会った経緯をお聞かせください。

田村
アソビシステムの中川さんとは、20代のときから一緒に仕事をしてきました。当時、私は学生イベントの企画・運営をしていたのですが、中川さんも大学でイベントサークルを運営していて、お互いやっていることが似ていたんですね。そこから「一緒に全国ツアーをしよう」という話になったのがきっかけでした。

当時のイベントは、服飾系や美容系の学生たちがファッションやヘアメイクショーを開くといったものでした。SNSもほとんどない時代です。出演者を集めるために札幌や福岡に出向き、街頭でビラを配ったりして、地道に準備を進めたのを覚えています。

ミダスキャピタルの吉村さんとは同じ年齢で、1982年生まれの経営者や上場企業の社長、アーティストや俳優などが集う「82年会」で知り合いました。

――民間の市場調査会社の推計などによると、推し活市場規模は数兆円とも言われています。「推し活」が社会現象になっている背景をどのように見ていますか。

中川
推し活自体は以前からありましたが、近年になって「推し活」という言葉で表現されるようになったのが大きいです。コロナ禍が収束し、ライブへの参加やグッズの購入といったリアルな活動が活発になったことも影響しています。

また、これまでは異性に対する推し活が中心でしたが、コロナ禍を境に同性への推し活が増え、幅が広がった。さらにSNSで自身の推し活を発信する人が増えたことで、多くの人の目に留まりやすくなり、結果として推し活がより目立つようになりました。

中川悠介氏

田村
中川さんがおっしゃるように、推し活は市民権を得たと感じています。以前はメディアで取り上げられても、どこかネガティブな面もありました。

しかし、今は老若男女問わず、多くの人がさまざまなジャンルの推し活を楽しむようになった。そのため、以前はネガティブに捉えられがちだった、グッズ販売や応援広告といったビジネスが、前向きに受け入れられる時代になったと思います。

「成功に不可欠なピースが全てそろうチーム」

――アソビダスの構想が生まれた経緯を教えてください。ミダスキャピタルとアソビシステムという異色の組み合わせが成立した決定的理由はなんでしょうか。

田村
私たちの業態だと、ちょっとIPOは難しいなという課題があるなかで、以前から吉村さんに「上場を目指せるエンタメの会社を創りたい」と伝えていました。

そうした中、ミダスキャピタルでエンタメとテクノロジーを掛け合わせた、新しい推し活プラットフォームの構想が浮上したときに、「どの企業とタッグを組むべきか」という相談を受けたんです。

原宿発のカルチャーを牽引し、「きゃりーぱみゅぱみゅ」や「FRUITS ZIPPER」などをプロデュースするアソビシステムしかないと思って、中川さんに声をかけたのが始まりです。

田村光紀氏

吉村
推し活マーケットの成長や盛り上がりを見て、私たちも参入の機会をずっとうかがっていました。先ほどの田村さんのお話の通り、ミダスキャピタルで「推し活市場へ参入する場合、アソビシステムと一緒にやれるならぜひやりたい」という結論に至り、そのうえでご相談させていただいたという経緯です。

エンタメ領域に関しては、アソビシステムがプロフェッショナルですので、私たちとしてはファイナンスや、管理部門やテクノロジーの人員強化といった部分で貢献していきたいと考えています。

中川
エンタメ業界で活動する中で、僕たちはアーティストのマネジメントやコンテンツを制作してきましたが、サービスを立ち上げて拡張させることには、難しさを感じていました。

推し活が盛り上がっているのを肌で感じ、コンテンツ提供以外にも、サービスを作る側になりたいと思っていました。ただ、プラットフォームを立ち上げようとしてもノウハウがなく実現が難しかったんです。

そうした中で、今回のお話をいただきました。大きな決め手となったのはファイナンス、プラットフォーム運用、サービス開発という、成功に不可欠なピースがこのチームなら揃うと確信できたことです。

これまでにも、連携の打診はいろいろいただいていましたが、多くは開発や資金調達のみなど、僕たちが目指すことすべてを一緒に実現できるものは少なかった。でも「アソビダス」という枠組みであれば、長年描いてきた大きな目標を実現できる。ピースがこれほど完璧に揃うチャンスは滅多にないので、非常にワクワクしています。

田村
実を言うと、アソビダス設立までの助走期間はかなり長かったんです。何度も会議や懇親を重ねて、少しずつ前に進んできました。その過程において、毎回着実な進展を実感できたのは、吉村さんをはじめとするミダスキャピタルの皆さんが、私たちのペースや感覚に合わせていただいたからこそと思っています。

――社名の「アソビダス」は語感が面白いですね。由来はなんでしょうか。

田村
アソビシステムの「アソビ」と、ミダスキャピタルの「ミ“ダス”」をとって「アソビダス」としました。「遊び出す」という言葉にかけていて、まさに私たちが取り組む事業内容にぴったりだと考えています。

スポーツから「2.5次元」まで 多様なジャンル展開

――アソビダスが提供するサービスは、具体的にどのようなものでしょうか。差別化ポイントもお聞かせください。

田村
さまざまな「推し活」ジャンルのプラットフォームを提供します。ファンクラブや、オンラインくじやECなどのコンテンツをはじめ、ファンとプロダクションをつなぐ機能も想定しています。

展開する領域は多岐にわたります。スポーツの分野では相撲やバスケットボール、サッカーを軸に進めています。アニメや漫画を舞台化した「2.5次元ミュージカル」の領域でもサービスリリースを予定しています。この領域は、近年とても活況で有望なマーケットです。

将来的には地域活性化・地方創生の切り口で、「地域への推し活」も広げていく考えです。日本の誇るべき地域のお祭りや重要文化財を「推し」という枠組みで捉え直していくことも、私たちが目指す大きな目標の一つです。インバウンドに向けても発信します。

中川
推し活という言葉が、アイドルやアーティストだけに限らず、スポーツや他の分野にもジャンルレスに広がっている時代だと思うので、そこに向かっていく一つのプラットフォームとして成長するイメージを描いています。

――新プラットフォームでは、アーティストやユーザー体験はどのように変化しますか?

中川
アーティストやコンテンツクリエイターの立場で考えると、「推してくれる人をどう増やしていくか」が大事なテーマになります。その点で、僕たちが提供するサービスは、推し活をしていない人でも、思わず参加してみたくなるようなきっかけを生み出し、新しいファンの獲得につなげていくことを目指しています。

田村
全ての業界に共通する重要なポイントは、ファンとコンテンツホルダーが一緒に市場を育てていくことです。そのために、他業界の成功事例を掛け合わせることで、マーケットの「幅」と「高さ」を同時に引き出し、業界全体の価値観をアップデートしていきたいと考えています。

――テック、技術面の強みをどう構築しますか。

田村
テックの面では、長年コンシューマー向けのサービスを作ってきた経験から、ユーザーのニーズを反映したプロダクト設計ができる点が強みです。また、ミダスキャピタルのネットワークによって、優秀なテック人材をチームに迎え入れることができます。

一般的なプロジェクトでは、システムを構築する側とサービスを提供する側が分かれており、連携で悩むことが多いかと思います。一方、アソビダスは最初からサービス運営と開発のスペシャリストが一体となってスタートする。この点が、大きな強みだと考えています。

吉村英毅氏

吉村
ミダスキャピタルは、M&AやIPOへの成長支援だけではなく、多種多様な事業をグロースさせてきた実績があり、その過程で必要な人材を適材適所に配置できるのが強みです。

なかでも私たちが得意とする領域の一つがテクノロジー分野で、あらゆる業種・業態で培ってきた開発の知見を今回のプロジェクトでも活かします。

5年以内に1,000万人を目指す 「推し活文化」を世界へ

――アソビダスが最も大事にしている価値観は何でしょうか。

田村
「推し活」の本質である人と人の繋がりを大切にし、コンテンツを作る側の思いをユーザーへ届けることは、サービス設計において最も重要なポイントだと考えています。先ほどお話したように、テックとコンテンツのスペシャリストが一気通貫でプロダクト開発に関わることで、ユーザーの充実感に繋がります。

現在、日本にはさまざまな「推し活」サービスがあるものの、分断されていてユーザーが使いにくさを感じている点が課題です。自分の推し活に対して時間とお金を使いたいのに、サービスごとに毎回ログインする必要があったり、各社で手数料を取られたりする状況を改善し、より良い推し活にアップデートしていきます。

――最後に、事業目標や今後の展望についてお聞かせください。

田村
目指すのは「推し活のグローバル化」です。サービス開始から5年以内に国内外のユーザー1,000万人のプラットフォームに成長させるのが目標です。

超高齢化社会の日本では今後、国内需要だけで成り立つジャンルはほとんどありません。音楽でもスポーツでも、海外で公演したりワールドツアーをしたりして、外貨を獲得するという視点はすごく大事になってきます。

中川
政府は、2033年までに日本発のコンテンツの海外売上高を20兆円規模にする目標を掲げています。日本のエンタメコンテンツの海外進出は、国を挙げて期待されている領域です。

そのなかで、日本独自の「推し活カルチャー」は、世界を席巻するポテンシャルを秘めています。アソビダスが、日本の推し活文化をスムーズに世界へ届けるインフラを構築することは、日本の産業振興にとって大きな意義があると考えます。

吉村
推し活は今も非常に大きなマーケットですが、潜在的には遥かに大きなマーケットだろうと見ています。現状は推し活のプラットフォームが分散していることで、ユーザーから見ても、コンテンツクリエイターから見ても、不便かつ高コストになっているかと思います。

アソビダスがこれらを統合しブラッシュアップしていくことで、推し活プラットフォームとしてナンバーワンになり、潜在層の掘り起こしや、ジャンル拡大でマーケット全体を広げることができれば素敵だなと思っています。

――ありがとうございました。サービス立ち上げが楽しみです。

New Articles

最新記事
Midas Talent

Recruiting

ミダスキャピタル、及びミダスキャピタル出資先企業群にて、世界に冠たる企業群を創りあげるというビジョン実現のために、傑出した実績や才能を持つ人材を積極的に募集しています。

To Entrepreneur

ミダスキャピタルでは一般的な株式の買取だけではなく、株式を現物出資することによって企業オーナー様がオーナーシップを保有したまま、ミダス企業群を形成する一社として長期に渡り企業価値最大化のお手伝いをさせて頂くことが可能です。