2023年2月、データサイエンスの力で営業組織の生産性を底上げする、株式会社トキハナツが創業しました。同社の主軸である「セールスイネーブルメント・経営コンサルティング」事業はどのようにして誕生したのか。同社の代表取締役である梅野真也氏に、創業に至った経緯と同社の強み、今後の事業展開についてお話を伺いました。
◆プロフィール
株式会社トキハナツ 代表取締役社長
梅野 真也
1981年生まれ。東京工業大学卒業。米マサチューセッツ工科大学(MIT)大学院修士課程終了。東芝、楽天でのデータサイエンティストを経て、17年よりマイネットに参画。データドリブン統括として全社横串のディレクションを担当。18年子会社mynet.aiを創設し、代表取締役社長(兼務)としてDXコンサル/AI受託開発事業を立上げ。19年マイネット執行役員に就任。2022年2月、トキハナツ代表に就任。
データサイエンティストとして黎明期を体験してきた
――昔からデータや数字には興味があったのですか?
思い返して見ると、幼少期から数字やデータが好きな子供でした。特にバーコードに興味を持ち、バーコードの法則性を見つけ出すのが好きでした。自然と自分の武器は数字やデータを扱うことだと思うようになった気がします。
――幼少期からの興味がそのまま大学や専攻に繋がっていったのですね
はい、データをコンピュータで分析すれば、人間の力だけでは成し遂げられないことも可能になる。そこに可能性を見出し魅了されていきました。国内の大学で学んだあと、海外の大学院でもコンピュータサイエンスの研究を続けました。
――卒業後の経歴を見ると、一貫してデータサイエンティストとして活躍されてきました。
データサイエンティストという職種は比較的新しく、私はその黎明期を体験してきたと自負しています。大学院を卒業後、東芝に入社し、研究開発部門でデータサイエンティストとして主にスマートグリッド事業に従事していました。電気利用のデータを活用し、有効的な電力利用を促進する仕事です。当時は、東日本大震災後で原発が使用停止となっていたこともあり、この分野への理解が進んでいた時期でもありました。公共性の高い仕事でもあり、非常に充実していたと思います。
ただ、仕事をしていく中で、B to Cの特に「to C」へダイレクトに働きかける仕事に興味を持つようになり、楽天へ転職をすることを決めました。転職先の楽天では、ビッグデータを扱い、集計した数字を可視化したり、データ分析をしたりと顧客へのダイレクトなアプローチを試みることができたことが面白かったですね。それに、インターネットの世界というのは、事業スピードも非常に速い。スピード感を持って仕事に取り組むことができました。
一方、スピード感があるが故に、思った以上に早く成果を出すことができ、更に新しい分野への興味が高まっていきました。その時期から起業への興味が芽生えてきたように思います。
――楽天を退社後、すぐには起業せず、オンラインゲームを手がけるマイネットに入社されています。その理由をお聞かせください。
当時のマイネットはマザース上場から日も浅く、ベンチャー感が溢れる会社でした。将来、起業したいという自分の意志も汲んでもらえた。何より、社長の直下で働ける仕事だった事は魅力で、これは起業の勉強になるなという思いがありました。
入社後は、データドリブン統括として横串のディレクションを担当。その後、子会社の代表取締役も兼務し、最終的に本社の執行役員を勤めました。この時期に部下を多く抱えることを経験し、マネジメントを含め、会社経営への知見を深めることができたと思います。
営業組織の生産性をデータサイエンスの力で解決する
――ミダスキャピタルとの出会いについてお伺いします。
昨年7月、知人からミダスのメンバーを紹介されました。その後、何度かメンバーと会っていく中で、「セールスイネーブルメント」という言葉を何度も聞くことになり、非常に興味を持つようになりました。営業組織の生産性をデータサイエンスの力を使って解決していくという話に、これは自分の武器であるデータサイエンティストとしての知見が使えるぞと確信しました。
メンバーとの対話の中で、私のデータサイエンティストとしてのノウハウと、ミダスの持っている知見を活用すると面白いのではないかと話がまとまり、今年の2月に「株式会社トキハナツ」をミダスの出資を受けて創業する運びとなりました。
――セールスイネーブルメントという概念が梅野さんを突き動かしたのですね。
その通りです。イネーブルメントという言葉は「育成」という意味がありますが、その言葉で幼少期の苦い思い出が蘇ったんです。我が家は父親がスポーツマンで私も小さい頃から野球をやってきました。ただ、私は父親とは違い運動全般が苦手。そのため、幼少期は運動に対してコンプレックスを感じながら過ごしてきました。
そのスポーツでくすぶった経験を思い出すたびに感じることは、「出来ないことで後ろ向きになるより、ワクワクする気持ちで成長や成果に向かうことが大切」ということ。成功の再現性を担保していく法則をチームで分かち合うことと、それによってビジネスパーソンが仕事で成長ポテンシャルを感じることが一番重要だと思っています。
――イネーブルメント(育成)に関しては、梅野さんご自身が社員をマネジメントする過程で学んだこともありますか?
はい、実は自分自身、「部下の育成」に関しては失敗もしてきました。マイネットで子会社の社長に就任していた時期は、40人くらいの部下がいたのですが、1対40という状況に自分自身がパンクしてしまったこともありました。
自分の仕事が忙しく、月に1回、職種面談としてしか部下たちと接する時間がない。本当は彼らの心配ごとや悩みに向き合いたかったのに余裕がなかったのです。その経験のおかげで、マネージメントの仕組み化は組織経営において重要だなという強い思いを持つようになりました。
ワクワクを感じるチーム作りを目指したい
――トキハナツでの事業を具体的に教えてください。
営業組織の生産性を上げるために、データ分析と育成の手法を活用して、組織の課題解決に導くコンサルティング業務を行っています。具体的には、様々な営業指標を収集した上で、特に売上寄与度の高い因子をデータサイエンスによって特定し、育成プログラムを伴走しながら支援するサービスを提供しています。
根底には、ワクワクと前向きに働けるチームを作りたいという強い思いがあります。どんなチームにも、営業のやり方がわからず、100点満点で言ったら50点60点でくすぶっているメンバーというのはいますよね。
営業という仕事は、はっきりと成績で出る部分があるので、成績が悪いと本人も非常に辛い。そういうメンバーに対して伸ばすべき能力を絞って集中的にトレーニングして、80点以上を取れるようにしようというのが我々の考えるプログラムです。営業チームの中で分散化している営業成績を質・量共に標準化することをゴールと考えています。
そのためには、何が不得手で何を伸ばせば良いのかチーム全体で共有できる「共通言語」が必要です。我々のデータ分析により、そこが誰の目にも分かりやすく明確に示せることを目指しています。
――今後の展望についてはどのようにお考えですか?
個別のクライアントワークに留まらず、プロダクトやテック活用を積極的に行っていきたいと考えています。データの収集・蓄積を進めることで、再現性・持続性のある成果が出る組織の構築実現を目指しています。
例えば、個人別のスキルデータやパフォーマンスデータを収集・蓄積することで、それを元に業種や業界別での共通点などを横断的に網羅していくことも可能になります。経営者には経営改革を、ビジネスパーソンには個人の育成目標を、我々のデータサイエンスによってより詳細に提供することができます。
また、ChatGPTを使った研究開発も進めています。数年内を目処にこれら先端テックを活用したビジネスも展開したいと考えています。
――最後にトキハナツで一緒に働きたい人材について教えてください。
これに関しては明確です。「ワクワクと働く人」を一人でも増やしたい、そういう人が増える世の中にしたい、と心から思える人にジョインしていただきたい。
私は、業績が上がらずくすぶっている人が、ポジティブに仕事に取り組めるようになる社会を作りたいと思い、会社を創業しました。その信念に共感し、自らも「ワクワク」しながら働きたいというメンバーと会社を育てていきたいと思っています。ぜひ、興味のある方はご連絡ください。
――ありがとうございました。