オンライン医薬品販売の株式会社LATRICO(ラトリコ)、創業1年で3億円の資金調達を実現

オンライン医薬品のECプラットフォームを運営する株式会社LATRICO(ラトリコ)は、2022年1月に約3億円の資金調達を実施しました。新たな市場を切り開き、規模拡大を目指す、同社CEOの濱口友彰氏に資金調達の狙いと今後の展望を聞きました。

◆プロフィール

株式会社LATRICO 代表取締役CEO
濱口友彰氏

三井情報開発(現三井情報)を経て、ボストンコンサルティンググループにて多くの大手企業の成長戦略策定・新規事業展開、組織再構築等を支援。その後、西友、地域経済活性化支援機(REVIC)、千趣会(REVIC投資先)の取締役を経て、2020年10月にLATRICOに参画。2021年10月から現職。

 

――まずは、LATRICOの事業内容について教えてください。

LATRICOは2020年に創業した、ヘルスケアのスタートアップです。美容クリニックと提携し、医師が処方する医薬品をオンラインで購入できるeコマースプラットフォーム「東京美肌堂クリニック」を開発・運営しています。医療機関に行くことをためらい、症状を悪化させてしまう人が多いという課題に着目して始めたサービスで、お肌にお悩みを持つ方々に対して医療用医薬品を用いたスキンケアをご提供しています。

医師とお客様のコミュニケーションはLINEのビデオ通話を利用し、診療から医薬品購入まで、すべてのプロセスがオンラインで完結します。現時点では、お客様のほとんどが女性で、20~30代がメインですが、ニキビに悩む10代から50~60代まで、どんどん年齢層は広がっています。処方薬セットは、月額4180円(税込)〜で、無理なくご利用いただける金額設定になっています。

オンライン診療のシステムを提供している会社は他にもありますが、我々はインフラを提供するだけでなく、「医療用医薬品を用いたスキンケア」という新しいソリューションを提供しています。オンライン診療は高齢化やコロナ禍によりニーズは高まっているものの、法制面などのハードルの高さが課題になっています。ソリューションとインフラをセットで提供していかなければ、世の中に広がっていかないだろうと考え、新たな市場に挑戦しているところです。

 

規模拡大を見据え、初の外部資金調達を実現

 

――2022年1月に3億円という大きな資金調達を実施されました。その狙いは何でしょうか。

資金調達の狙いは3つあります。一つはマーケティング投資です。これまでは主にSNSを通じた運用型広告を利用した集客に注力してきたのですが、このままだと規模拡大の壁にぶつかることは分かっていました。そこで、無料でユーザーを獲得できる手段として、オウンドメディアを構築する予定です。また、SNSをはじめ、さまざまなチャネルの公式アカウントを整備したいと考えています。ここから2年ほどで、自然流入のお客様の割合を半数にまで増やすことを目指しています。

2つめが、オンラインシステムの機能向上です。事業の根幹となる、医師とお客様がコミュニケーションを取る仕組みのユーザビリティのアップ、効率化や基盤の増強といったところに投資したいと考えています。今は外部委託しているシステム開発・運用を内製化できるよう準備を進めています。

3つめは、人材採用です。システム内製化に伴い、エンジニアチームの組織化が急務です。また、IT人材以外にも、カスタマーサクセスやバックオフィスを担うメンバーも採用していきたいと考えています。

 

――「コロプラネクスト」と「HIRAC FUND」が引受先となり、第三者割当増資としての資金調達でした。こちらの経緯を教えていだけますか。

LATRICOはミダスキャピタルによる投資先企業の1つとしてスタートしており、外部からの資金調達は初めての経験でした。右も左も分からない中で、ミダスの皆さんに相談したところ、いくつかのVC(ベンチャーキャピタル)をご紹介いただき、その中で当社のサービスに共感していただいた2社からの資金調達が実現したというのが経緯になります。

資金調達のプロセスでは、特にミダスキャピタル取締役パートナーの寺田修輔さんに非常に助けていただきました。資金調達先へのプレゼン資料の構成からデリバリーまで、非常に実践的なアドバイスをいただき、まさにミダス企業群だからこそのサポートと大変感謝しています。

 

――VCには、どのような点をアピールされ、どのようなポイントが資金調達の決め手になったとお考えですか。

Instagram広告1本だった集客方法をYouTubeなど複数チャネルに広げた効果が出て、サービスを利用するお客様のLINE登録数は2022年1月時点で10万人を超えました。資金調達段階においても、すでに飛躍的成長の兆しが見え始めていることを強くアピールし、市場性と規模拡大の可能性を伝えました。さらに、類似プレーヤーと比較して自社の競合優位性がどこにあるのか、またガバナンスや医療業界における法的な規制もクリアしていることなど、クリーンな会社であることもしっかり伝えました。

プレゼンの時から非常にいい空気感だったのですが、今回の2社には市場性の高さを認めていただいたほか、ミダス企業群のバックアップがあることや、当社がすでにチームとして機能できている点もご評価いただけたのではないかと思っています。HIRACさんには「幹部の層が厚いですね」と言っていただけました。スタートアップは一般的に、社長が1人で始めて友人を巻き込み、2〜3年ほど経って初めて本格的に外部から採用するパターンが多いように思いますが、当社は1年ですでに10人の優秀なメンバーがいます。

 

――資金調達後の周囲の反応はいかがでしたか。

発表したばかりですが、採用の応募者が少し増えました。また、これまではこちらからアプローチしなければ接触できなかった金融機関などから声をかけていただく機会が増えました。メディアも含め、さまざまなプレーヤーの方とのつながりができて、新たな世界が開けています。大きな資金調達を得られたことで、社会的な信頼もアップしたと感じています。

 

――今回、初めて経験された資金調達を踏まえて、後輩の起業家にアドバイスするとしたらどんなことでしょうか。

準備は早めに始めたほうがいいと思います。僕は9月から準備を始めて、10月にはプレゼンを終え、11月に結果が出るというかなり短期間で進めました。普段から資料作成には慣れているほうですが、それでも1ヶ月ちょっとでかなりの数のスライドを作り、ピッチを重ねるのはハードでした。

スタートアップの創業者は思いが強いがゆえに、独りよがりのプレゼンになってしまうケースもあるかと思います。そうではなく、相手が何を気にされているのか、市場性や競合が参入してきたときの優位性など、投資家の目線で資料作成やプレゼンをすることが大事です。

また、僕はどんな質問が来ても打ち返せるような資料作成を心がけました。寺田さんからさまざまな視点をいただけたおかげもあり、Q&Aがあまり発生しないプレゼンができたと自負しています。実際、あるVCの方にはプレゼンの後で「聞きたいことは全部資料に書いてあるので質問はありません」と言っていただきました。それはものすごくうれしかったですね。

 

新たな市場を切り開き、創業5年でIPOを目指す

 

――濱口さんがなぜLATRICOのCEOになられたのか、これまでのご経歴について改めてお聞かせください。

僕は社会人経験としてはコンサルティング会社が一番長く、約8年間勤めました。主に大企業の企業価値向上のための戦略立案を担当していました。その後、事業会社もいくつか経験する中で、どうしても自分でゼロから事業を立ち上げることに挑戦したいと考えるようになったんです。そんなタイミングで、ミダスキャピタルの代表パートナーを務める吉村英毅さんにLATRICOのオンライン医薬品販売事業のアイデアを聞き、社会的価値の高さや事業のポテンシャルに惹かれました。

ちまたには、“錬金術”のようなビジネスもたくさんありますが、僕はそうではなく社会課題の解決と収益性を両立できるビジネスに携わりたかった。LATRICOが展開するオンライン医薬品ECプラットフォームはそれを実現できる稀有なビジネスモデルだと感じました。何より、ちょうど40歳を迎えるタイミングで、「ここでゼロからビジネスを生み出す道を選ばなかったら、一生後悔する」という直感が働いたというのが大きいですね。

 

――創業から1年を振り返っていかがですか。大変なことも多かったと思いますが。

正直、大変でしたね(苦笑)。でも、これからの方がもっと大変だと思いますし、それ以上に、ゼロから市場を作る面白さをすごく実感しています。今、我々とまったく同じビジネスモデルの会社は世の中にありません。

事業を作るのは、住宅を作るのと似ているなと感じているのですが、分譲マンションを購入するのとは違って、基礎から窓の形、柱の材質まで全部を自分で決めなければなりません。ポンコツ住宅を作ってしまったらすべて自分の責任です。でも、全部自分達で作り上げていける。こんな楽しいことはありません。

 

――今後の展望についてお聞かせください。

まずは、既存のスキンケア領域でしっかり市場をとりにいきます。まだ課題もたくさんあるので、この1年で、1つ1つクリアしていきたいですね。

さらに、今回の資金調達の目的の1つでもある集客のためのオウンドメディアの仕組みをできるだけ早く構築するとともに、提携クリニックも増やしていきます。

サブスクモデルなので新規ユーザーの獲得数が重要になるのですが、2022年末には月間獲得数を現状の2〜3倍に増やすことを目標に掲げています。

スキンケア領域を軌道に乗せた後は、他の領域にもサービスを広げていくことを考えています。今はまだ言えませんが、すでに狙っている市場もいくつかあります。

 

――資金調達の先のEXITについてはどのようにお考えですか。

IPO(新規上場)でのEXITを狙っています。最短2025年を目指します。2020年にIPOした会社の創業から上場までの平均年数が17年という数字から考えても、5年でIPOするのはかなり難しいことかもしれません。でも、やれないことはないと思っています。3年後、東証の鐘を鳴らせるよう、仲間たちと一緒にしっかり取り組んでいきます。

 

――ありがとうございました。

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