イベントリポート バイセルテクノロジーズが女性社員の幹部登用を促進するための勉強会を開催

2019年の内閣府の調査によると、日本で管理職の女性はわずか14.8%。ここ最近で着実に上昇はしているものの、諸外国に比べると依然として際立って低い水準だ。各企業が、管理職の女性を増やすために努力をしているが、なかなか結果が伴わない場合も多い。

では、女性幹部を増やすために企業側はどのような努力をすればいいのか、そして女性側はどのようなマインドを持ち、幹部はどのような点を理解していくべきなのだろうか。今回は、管理職候補の女性たちに向けて、株式会社BuySell Technologies(バイセルテクノロジーズ)が開催した勉強会の様子をお伝えしたい。

 

バイセルテクノロジーズが目指すダイバーシティ

 

勉強会には、バイセルテクノロジーズに勤務する幹部候補の女性社員14人と、代表を含む男性幹部3人が参加。最初に岩田 匡平(いわた・きょうへい)CEOが、着物やブランド品などのリユース事業に取り組むバイセルテクノロジーズの現状について説明した。バイセルテクノロジーズでは、2015年12月期に1.06億円だった経常利益が2021年12月期末には22億円になると予想されている。約20倍もの成長が見込まれていて、コロナ禍にも関わらず、6期連続での増収増益となる予測だ。

 

岩田CEOは、さらなる事業成長を実現させるための具体的な施策の一つを「ダイバーシティ経営」だとして、女性幹部の登用に力を入れていきたいと話す。現在、バイセルテクノロジーズにおける女性の従業員比率は全体の4割を占める一方で、女性幹部(マネージャー以上)の割合は約1割と、決して高い値とは言えないのが現状だ。「バイセルは商材として着物やブランドバッグ、ジュエリーを扱っているため、お客様の8割が女性です。だからこそ、女性の幹部の割合をもっと増やすべきだと考えています。女性の幹部候補を、社内から輩出したい」。(岩田CEO)

 

 

そして、「性別や国籍、世代など、多様性がある人材が集まることで、ダイバーシティ経営が可能になる。多様な価値観がぶつかることで、企業価値も上がると思うのです。壁は高いと感じますが、バイセルが日本有数のエクセレントカンパニーになるために、多様性をより高めていきたい」と力を込めた。

 

女性がライフイベントとキャリアを両立する方法

 

続いて、バイセルテクノロジーズと同じミダスキャピタルの投資先企業である株式会社GENDAの申真衣(しん・まい)代表取締役社長が講師として登壇。「女性のライフイベントとキャリアを両立する方法」について、自身の経験談をもとに語った。申さんは、新卒でゴールドマン・サックス証券株式会社に入社してから、これまで数々のキャリアを積んできて、現在は5歳と0歳の子どもを育てながら、社長業をこなしている。

 

まず、申さんは「そもそも、パートナーを持つかどうか、そしてどんなパートナーを持つかによって、女性のキャリア選択は変わってきます。パートナーが『家事、育児は女性がやるものだ』と思っているタイプだったら、その価値観を変えるのが難しく、女性がキャリアを諦めざるを得なくなる可能性があります。もしキャリアを積んでいきたいと思っているなら、パートナー選びは重要だと思います」と話した。

 

 

それから、出産後の女性たちの働き方について言及。比較として挙げたのが、アメリカのシビアな保育事情だ。アメリカには公的な保育園がないため、自宅にシッターを呼ぶのが主流で、そのためには、月々何十万円もの高額なシッター代がかかる。一方、日本では待機児童問題はあるものの公的な保育園が整備されており、出産後も女性が働き続けるための社会インフラは整ってきていると言える。就業を阻んでいるのは社会インフラの不整備ではなく、女性に家事や育児を押し付ける社会的なプレッシャーだと申さんは感じている。

 

さらに申さんは、「管理職になった方が働き方のフレキシビリティが上がるケースがある」と、自らの経験をもとに語る。「ライフイベントを控えているから、責任のある仕事に就かないという考え方もありますが、私は管理職になってからの方が子どもを持ちながら働きやすいと感じました。管理職で、ミーティングの必須出席者であれば、日時を決める前に自分の予定を確認してもらえますから、子どもの保護者会など、どうしても大事にしたい用事を守ることができると気付いたのです」。(申さん)

 

 

そして、最後に語りかけたのは「制約をチャンスに変えて」と言うメッセージだ。「子どもができると、産休を取らなければならないので、その中でどうやって自分のキャリアを積むか不安に感じる人は多いと思います。私自身も1人目の産休を取るとき、戻った時に自分の仕事がなくなるのではないかと不安でした。でも、部下に仕事を託して4ヶ月の産休から戻ったら、部下が成長していたんです。すると、私も自然とさらにレベルの高い仕事が受け取れるようになり、結果的にキャリアのステップアップができました。もちろん産後の働き方には制約がありますが、それをうまくチャンスに変えようという、マインドを持ってみてほしいです」と、申さんは女性社員たちにエールを送った。

 

女性たちの悩み相談

 

それから、子育て経験のある株式会社ミダスキャピタルディレクターの香川恵美氏も講師として加わり、参加者の女性たちから質問を募った。営業部で働く女性社員からは、「仕事をする上で、男性と女性の違いはある思いますか?」という質問が寄せられ、これに対して申さんは、「生まれながらの男女の違いはないと思っています。生まれてから育てられる中で、『男だから、女だからこうしなさい』と言われる過程で、違いが生まれるのではないでしょうか。もちろん、タイプごとの違いはあると思うので、それぞれの個性を見ています」と回答。さらに、香川さんは「最近コロナ禍では、飲み会などもなくなり、以前よりは男女差がなくなっている気がします。私自身、新卒で働いていた時は夜中まで働いて、それから飲みに行くという生活をしていたこともあります。そうなると、どうしても体力のない女性にとっては不利ですよね。当時に比べると、環境がかなり改善していると思います」と話した。

 

また、「結婚や出産などのライフスタイルの変化は会社にとっては迷惑になるのではないかと感じてしまう。仕事のモチベーションに変化はありましたか?」という質問も寄せられました。これに対して申さんは、「誰しも自分が産んだ赤ちゃんを目の前にして、気持ちが揺らぐことはあると思います。『もう離れられない』と思って仕事を辞める人もいるし、それはそれぞれの選択ですから」と回答した。香川さんは、「私自身は、育児が想像していたより大変で、『仕事の方が得意だから早く仕事に戻りたい』と思っていました。もちろん、想定していた産後と本当の産後は違っていて、体調面において大変なこともありましたが、それでも仕事している自分の方が、自分らしく生活できました」と振り返った。

 

 

そして、参加した男性幹部からは「女性社員向けの制度ができても、風土が定着するまでには時間がかかりますよね。ライフスタイルとキャリアを両立するロールモデルをすぐに作ること難しいとしても、こうやって女性社員の意見を聞きながら学び続けてリテラシーを高めることで、実現していきたいと感じました」と感想が寄せられた。最後に、岩田CEOが参加者に対して、「一生に一度の人生ですから、ワクワクできる楽しいことをやってもらいたい。管理職になることだけが全てではないですが、会社として、社員の多様性を充実させることについては、考え続けることが大事だと思っています。それこそが、『風土』を定着させることだと思います」と語りかけた。

 

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