ミダスキャピタルは2025年7月18日、投資家や金融機関関係者に向けた初の「MIDAS IR DAY」を都内で開催しました。ミダスキャピタルのビジョンや、投資先企業群の事業理解を目的としています。レポート後編では、上場グロース企業3社、株式会社BuySell Technologies、株式会社GENDA、株式会社AViCの代表が各社の現在地と今後の展望について語りました。
◆登壇者プロフィール
株式会社BuySell Technologies 代表取締役社長兼CEO 徳重 浩介氏
立教大学社会学部卒。2006年に新卒で株式会社リクルート(現:リクルートホールディングス)に入社。飲食情報領域の営業を経て、株式会社リクルートマーケティングパートナーズにおいてマーケティング支援事業・教育支援事業の責任者として従事。2015年同社執行役員に就任。2019年に株式会社リクルートライフスタイルの執行役員に就任し、飲食店向け集客メディアやDX支援等を推進。2024年4月株式会社BuySell Technologies代表取締役社長兼CEOへ就任。
株式会社GENDA 代表取締役社長CEO 片岡 尚氏
慶應義塾大学経済学部卒。1995年、ジャスコ株式会社(現・イオン株式会社)入社。2004年、株式会社イオンファンタジーに転籍し、2008年、同社取締役、2012年、常務取締役、2013年、代表取締役社長に就任。2017年よりイオンエンターテイメント株式会社代表取締役社長を兼務。2018年5月、株式会社GENDAを設立。2019年9月より代表取締役会長、2023年12月、ギャガ株式会社代表取締役会長に就任(現任)。2025年4月より現職。
株式会社AViC 代表取締役社長 市原 創吾氏
2009年、青山学院大学理工学部を卒業後、株式会社サイバーエージェントに入社。広告事業部門にて複数の大手クライアントを担当し、インターネット広告を中心としたWebマーケティングにおけるコンサルティング業務に従事。その後、マネジメント業務にも携わり、2015年に局長に就任。2018年4月、株式会社AViCを創業、代表取締役社長に就任。
株式会社Dual Bridge Capital 代表パートナー 寺田 修輔氏(モデレーター)
東京大学経済学部卒業。2009年よりシティグループ証券株式会社にて株式調査業務や財務アドバイザリー業務に従事し、ディレクターや不動産チームヘッドを歴任。2016年に株式会社じげんに入社し、取締役執行役員CFOとしてM&Aを中心とする投資戦略、財務戦略を牽引。 2020年7月より株式会社ミダスキャピタルに取締役パートナーとして参画、 2023年4月にミダスグループ内のベンチャーキャピタル運営会社としてDual Bridge Capitalを創業し代表パートナーに就任。Chartered Financial Analyst(CFA協会認定証券アナリスト)。
事業概要について
寺田 最初に皆さんの自己紹介と会社の事業概要について教えてください。
徳重 BuySell Technologies(以下、バイセル)の徳重です。当社はリユース事業を展開しており、出張訪問買取と店舗買取の2本柱があります。出張訪問買取では売上高1位を誇ります。2024年10月には同領域で第2位の「買取 福ちゃん」をM&Aし、現在もっとも成長している領域です。
寺田 バイセルの社長に就任されたのはいつですか。
徳重 2024年4月にリファラルで参画しました。新卒でリクルートに入社し18年間、ホットペッパーやスタディサプリなどの担当役員、事業責任者を務めました。
寺田 ありがとうございます。では、片岡さんお願いします。
片岡 GENDAの片岡です。GENDAは2018年に創業しました。会社を設立した当初から、世界一のエンタメ企業になることを目標にしてきました。2023年に東証に上場し、創業7期目で売上高1,000億円を達成しました。国内のスタートアップでは過去最高水準のスピードで1,000億円を達成しました。
寺田 片岡さんも前職のお話をお願いいたします。
片岡 前職はイオングループの上場子会社のイオンファンタジーという会社で、5年間社長をしていました。最後の1年間はイオンシネマを運営する映画興業会社の社長と兼務し、イオングループのエンタメ事業の責任者のようなポジションでした。
寺田 GENDAで2社目の上場企業経営ということですね。では市原さんお願いします。
市原 株式会社AViC代表の市原と申します。デジタルマーケティング事業を展開しており、前職はサイバーエージェントに在籍していました。2018年4月にAViCを立ち上げて間もないころに、ミダスキャピタルと出会い、ジョインさせていただいています。2022年に東証に上場しました。
事業拡大の軌跡
寺田 上場もしくは創業以来、どのように成長されてきたのか、3社の事業拡大の軌跡を教えてください。まずはAViCの市原さん、お願いします。
市原 売上高、営業利益/営業利益率、時価総額についてグラフを示しています。当社は創業以来、クオリティ・グロースを重視しており、売上と営業利益は年平均40%以上の成長を維持しています。時価総額は直近で100億円を超え、150億円弱まで到達しました。
寺田 ほぼ右肩上がりで成長していますが、どのようなお客さまに対してサービスをされているか、また、競合はどのようなところを意識されていますか。
市原 エンタープライズのお客さまを中心に、マーケティング集客支援をさせていただいております。競合で申し上げますと、上場前は中堅の広告代理店やマーケティング会社でしたが、上場後は大手広告代理店が競合になっています。
寺田 ありがとうございます。大手広告代理店に対して、どうされていくかも後ほどお話を伺えればと思います。続いてGENDAもお願いします。
片岡 創業が2018年で、ここに掲示しているグラフは7期目までのグラフです。私たちは一番重要な指標としてEBITDAを掲げていますが、これをしっかり伸ばしてきた結果として、時価総額は直近、1,700億円ぐらいまできております。この成長は主にM&Aでつくってきていまして、IPOまでの5年間で11件、IPO後の2年間で37件、計48件のM&Aを実行してきました。(2025 年6月末時点)
寺田 21年1月期から22年1月期にかけてや、24年1月期から25年1月期もすさまじいジャンプアップになっていますが、それぞれどのようなことがあったのでしょうか。
片岡 21年1月期から22年1月期にかけてはちょうどコロナ禍だったのですが、セガサミーグループさんからセガのゲームセンター事業を、M&Aで引き受けさせていただきました。ここは大きな転機になっています。24年1月期から25年1月期にかけては、上場準備中の間にできなかったM&Aを一気に行いました。大きなところではカラオケ事業に参入し「カラオケBanBan」を運営するシン・コーポレーションが加わったのが、このジャンプアップの部分ですね。
寺田 48件M&Aをされている中で、今はどれぐらいの売上構成比になっていますか。
片岡 国内外のアミューズメント施設運営関連が売上の7割弱です。カラオケ事業が2割、残りの1割強がそれ以外、例えば映画配給などのコンテンツ&プロモーションやフード&ビバレッジなどに種をまいています。
寺田 複数事業を経営される中で、片岡さんや経営チームの皆さんが、どんなところにマインドシェアと時間を使われているかということも、後ほどお伺いできればと思います。ではバイセルの徳重さん、お願いいたします。
徳重 2019年の上場以来、オーガニックの成長に加えM&Aでも順調に成長しています。今期(2025年12月期)大きく成長しているのですが、これは「買取 福ちゃん」ブランドを展開するレクストホールディングスをM&Aしたことなどが要因で、さらに大きく成長していけると思います。
追記:8月14日のIRで上方修正を発表
https://ssl4.eir-parts.net/doc/7685/tdnet/2676381/00.pdf
寺田 営業利益の推移を拝見すると、2023年に一度落ち込んで、そこからV字回復されて、今期に大きく成長していますが、どのような理由で業績の変動があったのか、今後そういうことがまた起こりうるのか、対策はされているのかを教えていただけますか。
徳重 2023年に一度営業利益が落ち込みましたが、これは広域強盗事件の影響で訪問営業への不安が一時的に高まり、問い合わせが減少したためです。広告投資も重なり利益率が悪化しましたが、その後、柔軟なオペレーション体制を構築し、V字回復を実現しました。
寺田 事業に関しては出張訪問買取が中心でしょうか。
徳重 6対4ぐらいですね。出張訪問買取のほか、店舗のM&Aも推進していて既に400店舗近くがあります。全体で成長していきたいと考えています。
会社の変曲点
寺田 ここからは細かい業績の話というよりも、どのようなところに経営者として意識を向けているかといったことをお伺いできればと思います。グロース企業ですので、普通の会社に比べて変化が多いかと思いますが、直近で会社の成長の変化、変曲点はありますか。
市原 上場前は、広告主の広告予算の中でいうとミドル層をメインターゲットにしていました。上場後は、売上や利益が一気に成長していますが、大きな要因は顧客ターゲットの切り替えです。今はメインターゲットをエンタープライズに切り替えております。
寺田 普通に考えると、エンタープライズの方が競争が激しそうです。大手広告代理店と戦う上で、どう勝ち筋を見出しているのでしょうか。市原さんは前職で最大手のインターネット広告代理店に10年近くいらっしゃり、最後は広告局長をされていたので、大手の内情もよくご存知だと思います。実際に比べて、どういうところが違うのか、なぜその効果が出ているのかを紐解くといかがでしょうか。
市原 大手だから何かができるというよりも、コンサルタントの質が全てだと考えています。AViCは人材育成と仕組み化が得意な会社なので、仕事を属人化せず、社内の教育システムを整えています。セールスイネーブルメント(成果を出す営業社員を輩出し続ける人材育成の仕組み)などのプロジェクトを数年前から走らせていて、どんなメンバーでも、他店のエースプレーヤーより効果を出せるように育成してきました。若手社員中心のチームで、エンタープライズ顧客を大手からリプレイスし、リプレイス後の広告効果でも大手に勝ったという経験により、社員のインナーモチベーションが変わったのが大きな変曲点でした。
寺田 バイセルの変曲点を教えていただいてもいいですか。
徳重 過去に5件、累計で200億円のM&Aを実行しております。このうち既に4社が去年の実績で投資時のEV合計に対するEBITDA倍率は3倍となり、約3年で回収できる非常に高い投資効率を実現できています。M&Aした会社は私たちの3、4年前の状況と似ているため、解像度が高く、再現性を持って利益を成長させることができます。
寺田 出張訪問買取業界2位の会社をM&Aして、リユース業界でのM&Aは今後もまだまだあり得るものなのか、一旦落ち着くのでしょうか。
徳重 ロングテールな業界で出張訪問買取も増えてきているので、まだまだあると思います。あとは海外ですね。リユースは日本だけではなく、東南アジアを含め、世界的にすごくいい風が吹いていますので、追い風になると考えています。
注力する経営課題
寺田 続いてのテーマは、社長CEOの皆さんが今、注力している経営課題について聞かせてください。片岡さんからお願いいたします。
片岡 世界一のエンタメ企業になるために、海外展開を本気でやっていこうとしています。この2年間で北米で4件のM&Aを実行しました。12カ月稼働で、売上で450億円ぐらいの規模の事業を北米につくることができているかなという状況です。
寺田 マーケットにいた人間からすると、日本企業の海外M&Aに対し、かなりアレルギーのある投資家の方もいらっしゃるのではと思います。これまでの日本企業の海外M&Aのトラックレコードであったり、実際に高値づかみをしやすいとか、現地のマネジメントが非常に難しいといった、やれない理由を言い始めるときりがないと思うのですが、ぜひ片岡社長の勝算を教えていただきたいです。
片岡 私は帰国子女で、アメリカは“ホーム”と呼べる場所です(笑)。GENDAは創業の1年目にはアメリカにKiddletonという会社を設立し、5年以上現地市場を研究した上で、精度の高いM&Aを実行しています。アミューズメント施設運営事業は私が30年近く関わってきた得意領域。ここに絞ってやっていきますので、間違いないだろうと思います。
寺田 どのようにして、北米のアミューズメント施設をGENDAグループに迎え入れ、業績を上げるか道筋を教えてください。
片岡 北米でM&Aした4つの会社は基本的にやっていることは同じです。具体的にどう売上を上げていくかというと、今皆さんもご存知の通り、日本のアニメがすごくブームになっていて、日本のアニメキャラクターグッズに対する欲求がすごく高いんですね。そこで私たちがもともと現地にあったアミューズメント施設の中身を入れ替えています。具体的には、私たちが企画して中国のOEMで製造してもらったクレーンゲーム機を入れて、その中に日本のアニメキャラクターグッズなどを入れていっています。この施策によって直近M&Aした会社は、平均で1か月当たりの売上が倍になっていっています。
寺田 AViCの市原さんがいま一番時間を使っていることを教えていただけますか。
市原 どの産業も同じだと思いますが、AIへの対応は真剣に考えていかなければならないフェーズだと感じています。私たちの業界もプラットフォームの進展で、サービスの自動化が進んでいます。そうなるとクオリティの差がなくなり、同質化されていくのではないのかなと。中長期で価格競争が始まる可能性があります。私たちはデータドリブン経営で営業利益率を高水準に保ち続けることを創業以来続けています。AI導入を進めることで、これまで以上の営業利益率を目指したいと考えています。
寺田 AIの活用によってどのあたりの費用に対して、あるいは売上の構成要素に対して、直接的なインパクトが出そうですか。
市原 当社は販管費の大半を人件費が占めております。1人当たりの生産性を上げようと社内のAI化を進めています。
寺田 先ほどサービスの同質化になるかもしれないというお話の中で、利益率は大丈夫なのかなというオーディエンスの方がいらっしゃると思うのですが、別の見立てを持っていらっしゃいますか。
市原 2つ考えています。1つはAIによる効率化でイーブン、もしくはそれ以上に高い利益率にしていきたいと。もう1つは、広告事業以外でもお客さまの課題解決になる利益率の高いソリューションを今つくっています。総合的に利益率をマネジメントする形に切り替える準備をしている状況です。
経営陣として追いかける指標
寺田 続いてのテーマに移ります。投資家の方との面談でも出る質問かと思いますが、経営陣としてどの指標を追いかけていますか?徳重さん、いかがでしょうか。
徳重 1つは短期的には営業利益率ですね。ここを10%近く安定して出せるようなオペレーションマネジメントを構築することに取り組んでいます。もう1つは、これまで投資したM&Aに対して、投資以上のリターンを早期に回収することが大事だと考えています。
寺田 GENDAはいかがでしょうか。
片岡 GENDAで一番大事にしているのはEBITDAです。ここで出てきたキャッシュを次のM&Aに活用していくという意味で、いかにスピード感を持って大きくしていくかと。ただ、これだけを追いかけると、無謀なM&Aになる可能性もあり、1つ1つのM&Aで一株当たりの利益が上がるのか、きちんと見るようにしています。
寺田 GENDAは常務取締役CFOの渡邊さんが中心になり、IRを丁寧に実施されていますが、社内でどの指標を重視するか議論はされますか。
片岡 私たちが成し遂げたいことは世界一のエンタメ企業になることです。なにをもって世界一かというと、売上とEBITDAと時価総額の3つです。この3つで例えばウォルトディズニーやNetflixのような企業を本気で超えたいと考えています。そのためには株式市場から支持され続けなければならないので、株価にネガティブな動きはなるべくしないよう議論しながら、一株あたりの利益をしっかり上げることを目指しています。
寺田 AViCはいかがでしょうか。
市原 AViCとしては営業利益の絶対額を重視しています。IR資料にも書かせていただいているとおり、常にクオリティ・グロースにこだわって経営しています。きたるタイミングでM&Aをしていくために、借入余力をしっかり担保するところも含めて、営業利益の絶対額を予算に対してミートしていくことを重要視しています。
ミダスキャピタルとの関わり
寺田 最後の質問ですが、企業群の皆さんから見て、ミダスキャピタルと相互扶助などでどのような関わりがありますか。
徳重 リファラルによる人材紹介がたくさんあり、助かっています。また、ミダスキャピタルにはバリューアップチームという各発行体を支援するチームがあるのですが、PMI支援をしていただくなど力を貸していただいています。横のつながりでは、片岡さん、市原さんをはじめ経営陣同士の勉強会も刺激になります。みんなで新しい景色を見ようという、志が同じ人たちが集まっているので、すごく楽しくやらせていただいています。
片岡 創業時から資金面や人材面でお世話になっています。IPOのときは資料作成のアドバイスからステークホルダーとの対応まで手厚くサポートいただきました。経営陣同士も、気軽に相談をし合える環境で、新しい景色をみんなで見に行く仲間としていいメンバーだと思っています。
寺田 ありがとうございました。