生成AIが加速度的に進化する中で、各業界の地図が大きく塗り替えられようとしています。AIとSaaSを掛け合わせたサービスを開発する株式会社GROWTH VERSE(以下、グロースヴァース)CEO室長の葉山裕基さんは、コンサルティングファーム出身。コンサルで培った強みを生かし、AIを武器にビジネスを再定義し続けています。「コンサル出身だからこそAI時代に価値提供できる」と語る葉山さんに、自身のキャリアの転機、再春館製薬所様との取り組み、AI時代に求められる人材像について聞きました。
◆プロフィール
株式会社GROWTH VERSE CEO室長
(株式会社ミダスキャピタルから出向中)
葉山 裕基(はやま ゆうき)氏
東京大学経済学部経営学科卒。2021年に新卒でリブ・コンサルティングに入社。中堅企業を中心にベンチャーから大手までエンタープライズ業界における事業戦略・新規事業コンサルティングに従事。2024年2月にミダスキャピタルへ参画、GROWTH VERSEへ出向。最大手クライアントのアカウント責任者、リード獲得、M&AにおけるビジネスDDの責任者を兼任。2024年10月よりコンサルティング部門を立ち上げる。
主体的な意思決定を求め、事業会社へ
――これまでの葉山さんのキャリアを教えてください。
2021年に新卒でコンサルティング会社に入り、ベンチャーから中堅、大企業までマーケティングや戦略策定、事業開発支援をしてきました。コンサル時代のクライアントワークで磨いたスキルは主に3つで課題発見力、仮説を持ち物事を進める推進力、実際に業績改善し成果を出すことです。
クライアントワークは好きでしたが、主体となって意思決定し、会社の数字に直接影響を与えたいと2024年2月、ミダスキャピタルに参画し、投資先企業であるグロースヴァースに出向しました。過去に積み上げてきたことが通じるかのチャレンジでしたね。
――グロースヴァースへの参画にあたり、どんな点が評価されたと思いますか。
先日、採用に携わってくださった朝倉さん(ミダスキャピタル・プリンシパル)からこう言われたんです。
「葉山さんはコンサルティングファームで、新人のときから中堅企業のプロジェクト責任者としてチームをリードし、社長のカウンターパートで成果を出してきた」と。
新人のときから1つのプロジェクトをリードした実績を評価していただけたのかなと感じました。担当した企業規模もさまざまなので、多様な投資先があるミダスキャピタルとは親和性があると思います。
――グロースヴァースの筆頭株主であるミダスキャピタルのイメージは。
2つあります。事業モデルの面白さと、目指す景色の高さです。
前者は半永久的に投資先企業群の成長に貢献すること。後者は投資先企業群の時価総額を1兆円、10兆円、100兆円にすることを目指していること。直近の企業群の時価総額は4,500億円超の水準に達しています。そうした高いレベルの話を言い切れる吉村さん(ミダスキャピタル代表)の本気度を感じます。
さらにミダス財団による特別養子縁組への社会貢献や、日本という国をよくしたいという信念にも共感しています。
入社半年後のプロジェクトで成果
――グロースヴァースはAIとSaaSを掛け合わせたサービス開発が柱です。参画当時の取り組みはどのようなものでしたか。
参画した2024年2月当時は代表取締役CTOに南野さん、CFOに諸冨さんが就いて経営体制を刷新したばかり。受託寄りだった事業モデルをSaaS型へ転換し、経営管理指標を立て直すなど変革のタイミングでした。
最初のミッションとして、事業モデル変更に伴う案件開拓へのKPI設定、最初のM&AへのDDのリードも担いました。コンサル時代のDD経験が生きた形で、社内での信頼が厚くなったように思います。
私は営業経験はありませんでしたが、クライアントとのアライアンス形成は、当社の方向性との共通項を見つけるというコンサルに近いテーマだったので、成果を出しやすかったです。着任時には未達傾向だった、アライアンス活動を通じたKPI目標を最終的には達成基調にもっていくことができました。
――入社半年後に大きな取り組みがスタートします。
化粧品大手・再春館製薬所様との取り組みです。クライアントの経営課題に対し、当社のAIソリューションを活用し、コンサルティングとAI両面でアプローチしました。
再春館製薬所様の本社がある熊本へ何度も足を運び、経営陣や若手リーダーとコミュニケーションをとり、課題をヒアリングしました。足を使って現場に行くことは結果を出すために重要です。売り上げを分解してボトルネックになっていた課題を特定し、解決策を練る。コンサルとして培ったアクションを経て、AIで最も効果的な施策を打てる層に向けてアプローチしたところ、短期間で成果を出せました。
解くべき問いを立て、推進することは人にしかできない
――AIが加速度的に進化する中で、コンサルタントにしかできないことは何でしょうか。
AIによって解決できる経営課題はかなり増えていますが、解くべき問いを立て、経営陣だけではなく現場の人たちにも理解や共感を得る形で進めていくことは、まだまだコンサルタントにしかできないと思います。
関連して、AIのケイパビリティーを持ったコンサルティング会社と、事業会社のコンサルティングに近いポジションでの仕事の違いについても説明させてください。
コンサルティング会社の場合、多くの事業会社と提携しソリューションを提案できます。しかし、顧客最適化、カスタマイズまでやり切れる会社はまだ多くありません。クライアントにAIの使い方を教えることはできても、AIで成果を出すまでは時間がかかっている段階ではないでしょうか。
一方、事業会社の場合は、顧客の課題解決を提示した上で自社の優秀なエンジニアたちに、必要な開発やオーダーがすぐにできます。エンジニアから成果物として返ってきたものを顧客の業績向上という成果につなげる。このスピード感にやりがいを感じています。
前職では課題解決策という納品物は出せるけれども、継続的に実行・改善するにあたり高額なコンサルフィーを払い続けることはクライアントにとってコスト面で難しく、歯痒さを感じていました。他方、AIは課題を解決した上で半永久的に改善し続けられます。グロースヴァースにはこの強みがあります。
業界地図が塗り替わる時代 M&Aでシェアを広げる
――AIの進化に伴い、業界はどう変わると考えますか。
現状はAIを使い業務効率化する段階です。しかし、AIが自律的に作業を進めて業務が完結する「AIエージェント」時代が迫ってきていて、2025年には革新が起きると思います。
インターネットやSaaSが登場した時と同じで、変革期には各業界でさまざまなサービスが勃興し、業界地図が塗り替えられます。グロースヴァースの強みの1つがM&Aの手段を持っていることですが、変化が大きい時代だからこそ効いてくるでしょう。
サービスをつくり、AIを実装し、顧客獲得するという地道な勝負では、業界地図塗り替えの面取り合戦に勝つのは難しいように思います。M&Aした会社にAIを実装し、業界のシェアを広げる戦い方ができれば有利です。
グロースヴァースはデータ収集・活用にもノウハウがあります。顧客情報を一元管理し、デジタルチャネルを通じてマーケティングを自動化するツールや、顧客の属性や行動データを一元管理するプラットフォームでサービスを広げています。
――経営コンサルは、事業会社で強みを発揮できますか。
優秀な営業や優秀なエンジニアはいるけれども、顧客から課題を聞き取りAIに載せるというコンサルタントの役割が、今はミッシングパーツになっている状態です。若手のコンサルでも十分に活躍できる環境です。
グロースヴァースの場合で言えば、M&A後には基盤となるAIをベースに業界ごとに最適化します。その要件定義こそコンサルが必要とされています。
コンサルを目指す人にも参画してほしい
――どんな人材にグロースヴァースに来てほしいですか。
成長する会社で、AI時代のフロントラインで価値創造したい方にマッチしていると思います。コンサル経験者だけではなく、コンサルを目指そうとしている方にもぜひジョインしてほしいです。
実は私自身、新卒のときはDXはビジネスにおいて本質ではないと思っていたんです。それが今、AIを活用しているとは思いもしませんでした(笑)。でも、こうしたフロントラインに立っているのは、本当にいい意思決定ができたと思います。
――グロースヴァースでコンサルティング部門を立ち上げました。葉山さんの次のチャレンジについても教えてください。
2つあります。あらゆる業界において顧客の課題を見つけ出し、ビジネスグロースを実現すること、もう一つは各業界の課題解決につながるAIプロダクトを生み出すことです。前者はコンサルタントの仕事そのものですが、事業会社がコンサルティングの機能を持つ意味が後者にこそあります。
AIによるプロダクトの実装スピードは爆発的に上がり、実装範囲は大きく広がりました。
この変化に対応するには、課題を見つける力に加え、ソリューションを定義する力、そしてAIの実装力が必要です。
これらすべてを提供できるコンサルティング会社ももちろん存在しますが、顧客に選ばれ続けるという観点では、事業会社の提供するプロダクトだからこそ、品質が高く、コストパフォーマンスに優れたものを提供できるのではと思っています。
――ありがとうございました。今後の展開が楽しみですね。