好奇心の赴く方へ、常に挑戦を続けるという意志 ゼスト 一色淳之介代表取締役社長インタビュー

2022年9月にゼストの代表取締役社長に就任した一色淳之介氏。大手企業のマーケターとしてキャリアのスタートを切り、創業期の経営プロフェッショナルファームに参画。そしてゼストに合流するなど、常に新しい挑戦を続けています。その背景にあるのは、自身の好奇心、そして社会課題を解決したいという強い思いでした。

 

◆プロフィール

株式会社ゼスト 代表取締役社長
一色淳之介(いっしき・じゅんのすけ)氏

東京大学農学部を卒業後、東京大学大学院農学生命科学研究科を修了。新卒でP&Gジャパンのマーケティング部門に所属し、日本及びシンガポールでヘアケアブランドのマーケティングに従事。2013年に創業期の株式会社ヤマトキャピタルパートナーズ(現・株式会社YCP Solidiance)に参画。パートナーとして、様々な企業に対するマーケティング、経営戦略、さらには新規事業立案等のコンサルティング支援を行う。また投資先であったエンターテイメント企業においては自らが役員として、事業戦略・組織戦略・資本政策などを牽引し、事業再生を実現。2022年9月1日付けで株式会社ゼスト 代表取締役社長に就任。

 

大企業の力を借りず、個人の力を試したいと思った

――これまでの一色さんの経歴について、改めて教えてください。

新卒でP&Gのマーケティング部門に所属し、ヘアケアカテゴリを担当していました。入社後約2年間は国内にいましたが、その後シンガポール勤務となりました。ヤマトキャピタルパートナーズ(以下、YCP)に転職するきっかけとなったのは、シンガポールにいた時のこと。YCPは大学時代の先輩とP&Gの先輩が創業したのですが、私に参画しないかとお誘いをいただきました。

話を聞いて、率直に面白そうだと感じました。当時はヘアケアブランドを担当し、マーケティング部門は、営業、ファイナンス、生産を管轄する部署など、多岐にわたる部門へのリーダーシップをとっていました。P&Gのような大企業は1ブランドに避ける予算も大きく、ブランドの力も強いので小売店との交渉もスムーズに進みます。営業の人員も多いです。やりがいを感じる一方で、大企業の力を借りず、私個人にどれだけの力があるのかを試したいと思っていたのも事実です。

YCPは立ち上げてまもなく、ありとあらゆるアセットがない状況。そんな中で非常に優秀な同世代のメンバーが集まり、会社を成長させていくことに単純に好奇心をそそられました。メンバーも名だたる企業で活躍していた人ばかりで、自分にとって良い学びの機会になるのではないかと考えたのです。ここならマーケティング以外の領域の経験や経営戦略についても深められるような気がしました。

 

――2013年にYCPに入社されています。ここではどのような経験を積まれたのでしょうか。

主にファッションイベントを手がける企業に参画して、自ら役員としてさまざまな立て直しを行いました。バックグラウンドのマーケティングに留まらず、バックオフィス、イベント制作、営業や事業計画の作成。ありとあらゆることに関わりました。こう話すとなんでもすんなり進んだようですが、実は困難の連続でした。何せP&G時代は契約書も見たことがなく、資金繰りを考えたこともなかったんです。経営についてほとんど知らないということに気づきました。ただ、YCPには投資銀行出身者も多かったので、金融の知識を授けてもらえました。コンサル出身者からは資料の作り方も一から学びました。ここで過ごした数年間で、自分も大きく成長したと思っています。

 

ゼストのみんなとムーブメントをつくっていきたい

――ゼストにはどのような経緯で参画されたのでしょうか。

ミダスキャピタル代表パートナーの吉村さんから、「面白い会社がある」と紹介してもらったのがきっかけです。吉村さんはサークルの一学年先輩で、以前から時々食事する機会がありました。そんな時に、ふいにお声がけいただきました。

ゼストについて詳しく話を聞くうちに、私の中で大きく心が動いていくのが分かりました。何よりフィールドが面白い。人口構造を考えても、在宅医療の領域は今後大きく成長していきます。一方で課題も少なくありません。団塊世代の全員が75歳を迎える「2025年問題」や介護の人手不足は、放置できない問題です。私自身、親がそうした年代に差し掛かってきて、他人事ではないという思いがありました。

会社のステージにも興味が湧きました。すでにできがっている事業にかかわるのではなく、これから成長していく企業の一員になれること。YCP創業期に参画したころの高揚感を思い出しました。ここからゼストのみんなとムーブメントをつくっていきたい。そう強く思えたのです。

そう思わせてくれた背景には、学生時代から感じていた吉村さんへの信頼感も大きかったです。何をやるかもですが、誰とやるかも同じくらい大事なことだと思います。
――好奇心が動く方へ進む。一色さんのお人柄がわかるようなエピソードですね。

「倒れる時も前のめり」が好きな言葉。P&GもYCPも、どちらも辞めようと考えたことはありませんでした。優秀な仲間ややりがいなど、全てに満足して働けていたので。でも「コンフォートゾーンに長く居てはいけない」という危機感は常に頭の片隅にありました。ゼストの話を聞いて、できるかできないかだけで判断せず、好奇心の赴くままにチャレンジをしてみようと直感的に思いました。もし倒れるなら、前向きに倒れればいい。そんな気持ちです。

「介護の課題」を解決するために、スピード感を持って成長したい

――ゼストのプロダクトは代表取締役会長の伊藤由起子氏が作り上げました。初対面の際の伊藤さんの印象はいかがでしたか?

伊藤さんは、ゼストが面白いプロダクトであること、そしてご自分の技術に強く自信を持っています。そこに魅力を感じました。また、ご自身がエンジニアとしてプロダクトに専念したいという思いがはっきりしています。私に経営を任せるから、お互いにがんばりましょうと言ってくれました。とても信頼しています。

一方で、入社して見えた課題もありました。私が参画する前は社員数もかなり少なく、組織ができていない状態。営業もしておらず、問い合わせにも十分に対応できていない状況でした。また開発は副業を中心にした体制だったので、まずエンジニアを正社員化することから始めました。

2022年10月に管理部長を採用し、会社のルール作りや事業計画などを一気に進めました。2023年2月にはSaaS営業に長けたCROが入社し、営業人員も増員しました。必要なのはゆっくりとした変化ではなく、劇的に成長していくこと。良いプロダクトを世の中に広めるため、今後も全方位でスピード感を持って推進していきたいと考えています。

 

――世の中がゼストを必要としているスピードに合わせていくのですね。

我々は「護りたい。その想いを護る。」というミッションを掲げています。護りたいのは在宅医療と、そこにかかわる従事者の皆さんの想いです。従事者の皆様は素晴らしい志を持っていますが、人手不足などもあって負荷が大きいのです。業務の効率化が行われておらず、雪の日も炎天下も自転車で訪問していて疲弊し、離脱していく人も多い。だからテクノロジーの力を使って、彼らを支えることに寄与したいと思っています。誰かの役に立つことが自らのモチベーションになるような人たちと、これから一緒に働いていきたいと思っています。ゼストはまだこれから、みんなで作り上げていくフェーズ。自分が考えたことが会社のルールになるかもしれない。そこに楽しみを見出せる人にぜひジョインしてもらいたいです。

 

――今後の目標について教えてください。

これからの3年で、もっと導入事例を増やしたいと考えています。利用者を中心にして介護や医療などにも関わるプラットフォームをつくるなど、横軸の展開もしていけたら。

課題をクリアにしていく中で、ミダスキャピタルの投資先企業群に助けられていることも多いんですよ。CTOやCROはリファラル採用で入ってきてくれた優秀な人材です。一社だけだったら、こうした人材にはきっと巡り会えなかったかもしれません。経営のアドバイスをいただくこともあり、大変ありがたいです。また、皆さんの仕事のやり方から、KPIを明確にして落とし込むことの大事さも再認識しました。相互扶助の効果は、実際に参画してみて明確に感じています。私もこれからまたさまざまなことを吸収しつつ、会社をさらに成長させていきたいと考えています。

 

――ありがとうございました。

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