2022年6月、創業4年目という速さでIPOを実現したAViC。業界からも注目を浴びる同社に、この夏新たに参画したのが、第1マーケティングDX本部の奥川哲史本部長です。同業他社で社長業まで務めた奥川氏のこれまでの歩み、さらにAViCに感じた魅力や今後の目標について伺いました。
◆プロフィール
株式会社AViC 第1マーケティングDX本部 本部長
奥川哲史(おくがわ・さとし)氏
2009年に 株式会社ネットフロンティア(現:株式会社アイトリガー)へ新卒入社。運用型広告のコンサルティングに従事し、2019年に代表取締役社長に就任。就任後はチャットコマース「Penglue」、DataHub「Boyciana」を開発。日本に9人のLINEの認定講師「LINE Frontliner」としても活動中。2022年7月より現職。
「思いがけない就職」で気づいた、自分の長所
――2009年に新卒として入社以来、ずっとインターネット広告に携わられてきました。学生時代から広告に興味を持っていたのでしょうか?
明確なビジョンがあったわけではなく、漠然と広告業界に憧れていました。若い頃はミーハーだったので、「あの仕事は自分がやった」と誰かに言ってみたかったんです。新卒で内定先が決まったのは2008年春。インターネット広告の企業とクリエイティブエージェンシーから内定をもらって、後者を選んだという経緯があります。ちょうどその夏にリーマンショックが起き、「内定取り消し」が大きく報道されましたが、自分には無縁だと思っていました。
就職のため、生まれ育った京都から上京したのが2009年の3月。入社予定の会社にコンタクトを取ると「リーマンショックの影響でいろいろとあり、入社を一カ月遅らせてほしい」と。仕方がないと思いつつ、生活費が必要なので、4月は池袋のガソリンスタンドでバイトして食いつなぎました。ところが4月末になって会社に電話をしたら全くつながらない。会社のある場所に行ってみると、もぬけの殻です。倒産したんだ……と初めて気づきました。
急いで就活をしなければと動き始めましたが、当時の就活サイトは既卒が登録できなかったんです。それでYahoo!(当時はOverture)の代理店一覧ページに掲載されていた代理店に上から電話して、一件一件問い合わせました。前職のアイトリガー(2009年当時はネットフロンティア)に入社を決めた理由の一つは、選考にスピード感があったから。連絡翌日に面接して、すぐにまた次の面接。ベンチャーということもあり、動きが速いことにも魅力を感じました。
――過去に内定をもらったこともあったインターネット広告の世界に、期せずして入ることになったのですね。
思い描いていた「広告業界=キラキラした世界」とは異なり、インターネット広告は地道な作業の連続でした。営業志望でしたが、当初の配属先は広告運用の部署。ただ、数字をもとにお客様と対話するような仕事が自分に向いていると気づきました。
もともと、興味を持ったら突き詰める性分なんです。大学時代はガソリンスタンドとドレスアップカーを作るお店のバイトを掛け持ちしていたほどの自動車好き。お金がないので自分の車のドレスアップや整備も自分で行っていましたが、わからないことはインターネットで調べて実現するということを繰り返していました。好きなことに没頭する性格は、インターネット広告のアルゴリズムを考える上でも向いていました。
その後、自社メディアの運用も担当しましたが、これも大きな経験になりました。顧客ありきではないので思いついたらすぐ実行、失敗したらそれを突き詰めることの繰り返し。これまでは広告が中心でしたが、SEOやHTMLなどプログラミングの知識・スキルも身につきました。この経験は、その後営業に異動してからも大いに役立ちました。
マネジメントの失敗から学んだ「人を型にはめない」という考え方
――その後、社長就任に至るまで、どんなキャリアを歩んできたのでしょうか。
入社6年目も終わるころにリーダーに昇格。その2年後に営業部の部長になりました。でもさまざまな要因が重なり、部署は解散。自分自身のマネジメントの問題を痛感しました。
うまく行かなかったのは、人を型にはめて見ていたから。人それぞれ得意、不得意が違うということに気づかず、自分のやってきた成功パターンを押し付けようとしていました。痛い経験をしてからは、人の得意なところに目を向けるように意識しました。また、失敗を咎めるのではなく、次にどう生かせるかを一緒に考えるようにもしました。私自身が一度失敗から立ち直ったように、誰にでもセカンドチャンスはあるんです。
その後、新部署の立ち上げや拡大などを経て、2018年8月に執行役員になり、30人ほどのメンバーを統括。2019年の10月に代表取締役社長に就任しました。
――社長に就任することに、恐れや迷いはなかったのでしょうか。
執行役員に就任した時点で、「社長になりたい」という気持ちはありました。とはいえ、これよりも少し前には、「大きな代理店に移ってもっと大きな仕事をやりたい」と思ったこともありました。でも、大きな案件を担当できないのは会社ではなくて自分の責任ではないかと思い至りました。一緒に仕事をするメンバーも信頼していたし、アイトリガーの業績を上げてもっと業界の注目を浴びたいという思いもあり、踏みとどまりました。社長業として、それを実現していきたいと思ったんです。
――内定先の倒産など、奥川さんの人生にはさまざまな転機があったかと思います。誰かにアドバイスを求めることはあるのでしょうか。
いつも大事なことは自分で決めているかもしれません。内定先の倒産を知った際、父親に連絡してアドバイスをもらおうとしたら、返ってきたのは「がんばれ」の一言(笑)。選択して突き詰めることを繰り返して、今までやってきたような気がします。
社長になって今まで見えていた景色とは全く違うことも実感しました。困難を感じたことも少なくありません。ただどんなことも自分が最終的に決定権を持つことで、うまく行ったときの喜びも今まで以上に感じました。お客様からメンバーに対する評価を聞くのもうれしかったですね。
守備範囲が広く、成長意欲が高いメンバーが多いのがAViCの魅力
――AViCとはどのように出会ったのでしょうか?
経営側に回って2年半が立つころ、さまざまな事情が重なり社長を退任することになりました。退任してから1ヶ月ほどは旅行に行ったり、京都に帰省したりと休息した後に転職活動をはじめました。退任する直前まで自社のプロダクト開発に力を入れていまして、転職にあたっても当初考えていたのは、プロダクトを持っているSaaS企業への転職。ところがエージェントにAViCを紹介されて、社長の市原と出会いました。
市原は私と同学年で、業界大手のサイバーエージェントで運用型広告の組織のトップだった人。一体どんな人物なのだろうと興味を持ちました。でも、心はまだ決まっていなかった。それが、オンラインで面談した際、仕事に対する考え方や温度に共感すると同時に、その誠実な人柄に引き込まれました。市原との会話を通して、インターネット広告業界でトップを目指すという自分の目標を思い出したんです。
――入社して数ヶ月が経ちましたが、改めてAViCのどんなところが魅力的だと感じますか?
BtoC、BtoB、ウェブ、アプリなど、それぞれの領域のプロフェッショナルがそろっていて組織の能力が高いところです。成長意欲が高いメンバーが多く、新卒も優秀。うかうかしているとすぐに追い抜かされるのではないかと思うほどです(笑)。いくつになっても素直な人に魅力を感じますが、AViCにはまさにそうした人材が育っています。物事を吸収して伸びようとする人にこれからも集まってほしいと考えています。
成長するのは、マネジメントの立場である私も同じ。同業だったとはいえ、これまでと全く違うアプローチなので日々学んでいるところです。マネジメントとして人を型にはめないようにすること、成功パターンを当てはめないようにすることを意識していましたが、知らず知らずのうちに自分は一つの勝ちパターンにはまっていたと感じました。転職によって、そのこだわりを捨てることができた気がします。
――今後の目標について教えてください。
AViCが現在ターゲットとしているのは、クライアントの広告予算が月500〜5000万円のミドルマーケットです。まずはこのマーケットで圧倒的な1位を取ることを目指しています。プライベートでは6歳と1歳の息子たちの成長が何よりも楽しみ。どんな分野でもいいので、彼らの好きなことを伸ばしていけるようにサポートしてあげたいです。
――ありがとうございました。