2023年12月に経営統合を発表した、R-Square & Companyと株式会社トキハナツ。株式会社Xpotentialといして経営統合後、「セールスイネーブルメント」をグローバルスタンダードにするという大志に向かって取り組んでいます。元R-Square & Company代表・現株式会社Xpotential代表である山下氏と、元株式会社トキハナツ代表・現Xpotential副社長である梅野氏に、経営統合の経緯やXpotentialが目指す未来について聞きました。
◆プロフィール
株式会社Xpotential 代表取締役社長 兼 CEO
山下 貴宏(やました たかひろ)
法政大学卒業。日本ヒューレット・パッカード株式会社、株式会社船井総合研究所、マーサー・ジャパン株式会社、株式会社セールスフォース・ドットコム Sales Enablement本部長を経て、2019年株式会社R-Square & Companyを共同創業、代表取締役CEOに就任。株式会社トキハナツと経営統合後、現職。
株式会社Xpotential 取締役副社長 兼 CDO
梅野 真也(うめの しんや)
東京工業大学卒業。米マサチューセッツ工科大学(MIT)大学院修士課程修了。東芝にてデータマイニング・機械学習の研究開発に従事。楽天のデータサイエンティストを経て、2017年よりマイネットに参画。2018年mynet.ai代表取締役社長、2019年マイネット執行役員に就任。2023年2月株式会社トキハナツ代表取締役社長に就任。株式会社R-Square & Companyと経営統合後、現職。
データを基点に、「セールスイネーブルメント」の成果を最大化させるシナジー
――2023年12月に経営統合を発表しましたが、どのような狙いがあったのでしょうか。
山下
我々は、それぞれ「セールスイネーブルメント」支援に特化したベンチャーでした。
R-Squareは体系化したプログラムやコンサルティングが強みである一方、トキハナツは、データ分析のノウハウに強みがありました。
「セールスイネーブルメント」の一連の流れで説明すると、最初に行う「どれくらいスキルを伸ばしたら、業績がいくら上がるのか」をデータに基づいてモデル化する作業は、トキハナツの得意分野。次に行う、具体的に行動変容を促していくコンサルティングは、R-Squareの得意分野。最後に行う効果検証はトキハナツの得意分野、といった感じです。
このように両社の強みをうまく組み合わせ、データを基点にお客様の「セールスイネーブルメント」構築を全面的に支援できるようにしたいというのが、今回の経営統合の狙いです。
梅野
当時トキハナツには、2つの要素が足りないと感じていました。
1つは、顧客を獲得していくためのトラックレコード。僕は「セールスイネーブルメント」の世界ではなく、データサイエンティストという横の世界から入ってきた人間です。新しい顧客を獲得していくために「セールスイネーブルメント」にがっつり関わってきたという実績の必要性を感じていたのですが、山下さんは、まさにその実績を兼ね備えている人でした。
もう1つは、案件数です。僕自身の得意分野は、データサイエンスや仕組み化の部分なのですが、その力を発揮できるのは多くのデータがあってこそ。n=1、n=2という世界では、データサイエンスを使ってアイディアを広げるのが難しいですし、アイディアを試すこともできないため、ずっともどかしい思いをしてきました。
一方R-Squareは、実際の案件数やお客さんのネットワークが圧倒的に多い。R-Squareと経営統合したら、データサイエンティストとしての力を縦横無尽に発揮できるようになると考えたのです。
GENDA上場に関するYouTube動画がきっかけで、ミダスキャピタルへ
――お互いが、まさに必要としている要素を兼ね備えていたのですね。
経営統合の話は、どのように持ち上がったのでしょうか。
山下
過去にミダスキャピタル投資先の経営者の方とお会いしたことがありましたが、その時は情報交換で終わりました。その後R-Squareの事業成長を考えている中、私がYouTubeでGENDAのインタビュー動画(https://www.youtube.com/watch?v=kssPdyLJKr0)を観たのがきっかけで、一度ミダスキャピタルと話をさせて欲しいと打診したところから始まりました。
その動画は、BuySell Technologies代表取締役社長兼CEOの岩田匡平さん、GENDA代表取締役社長の申真衣さん、ミダスキャピタル取締役パートナーの寺田修輔さんが出演されていて、GENDAがどのように上場を果たして、ミダスキャピタルがどのような支援をしてきたのかについてのトークが展開されています。
この動画は、すごく面白かった。「こんなファンドによる支援のあり方があるのか」と、大変学びになりました。これまでもR-Square & Companyの活動で「セールスイネーブルメント」を広めてきましたが、もっと飛躍的に成長スピードを上げなければという危機感があったんです。そこで経営の知見や資金的リソースが豊富なミダスキャピタルから支援が得られれば、ギアチェンジして成長を加速していけると思いました。
意気投合し、チーム一丸となってカルチャー融合へ
——こうして、ミダスキャピタルの一企業であるトキハナツと出会ったのですね。
その後、経営統合に至るまではどのようなスピード感だったのでしょうか
山下
かなり早かったです。「これはいけるな。勝てるな。」と思ってから意思決定をするまで、1ヶ月かからないくらいのスピードでした。
梅野
経営統合の話が持ち上がり、会食の場で代表同士のお見合いみたいなことをしたんです。始まって15分くらいのうちに、すっかり意気投合しました。お互いの発言すべてに「それそれ!」「そうなんだよ!」と言い合う感じになり、考えていることがまったく同じだということが分かったんです。
会話のリズムも合うし、人としても合いそう。これは経営チームとしても良いチームになると確信しました。山下さんはどうでした?
山下
ケミストリー(化学反応)が起きたとでも言いましょうか。事業の方向性も、目指しているところも、経営チーム同士の相性もフィットしているのを、すぐに感じました。何よりも、「セールスイネーブルメント」を広めていきたいという強い思いが、みんな一緒だったんです。この時の直感は、今も間違っていなかったと感じています。
——すぐに意気投合されたのですね。現在、経営統合はどのように進んでいますか?
梅野
まだ1月に発足したばかりなので、今まさに組織がガチャンと合わさっているところ。モグラ叩きのように、これから少しずつ出てくる組織の課題をチーム一体で解決していくのが、今後の1ヶ月になるのではないかと思います。
山下
R-Squareは社員数が多いので、仕組みやルールを作って結構カチカチに運営してきた面がありました。一方トキハナツはまだ設立から1年もたたない会社なので、ベンチャー感があって、スピード重視。うまく両者が組み合わさると、いいカルチャーになるんじゃないかなと思います。
視座を高めてくれる、ミダスキャピタルの手厚い支援
——まさにこれから、Xpotentialのカルチャーが作り上げられていくのですね。
ミダスキャピタルからは、どのような支援を受けられましたか
山下
ミダスキャピタルからは、本当に手厚い支援をしていただいて助かっています。特に3つの点で、ありがたさを感じています。
第一に、採用支援が非常に手厚いこと。どんな人材を採用したいかというのを共有しているのですが、特にキーとなるマネジメントポジションに対する支援が手厚いと感じます。
二つ目は、経営管理的な実務支援。事業計画やファイナンスの計画など、我々が手薄になりがちなコーポレート系の支援が手厚くて、非常に助かっています。
三つ目は、経営に関するノウハウを共有していただけること。マネジメントチームとしての観点になるのですが、ミダスキャピタルの投資先のうちIPOを目指している他の企業はどのような状況で、どのような課題があって、それをどのように解決しようとしているのかという情報を共有してもらえます。R-Square時代は、このようなネットワークや情報は限られていました。今まで知り得なかった情報を共有していただけるのは、経営改善のスピード感が上がりすごくありがたいと感じています。
梅野
視座を、めちゃくちゃ引き上げてくれますよね。ミダスキャピタルの投資先企業群は、全体として時価総額1兆、10兆、100兆という目標を追いかけているわけですが、その各社においても時価総額1,000億円すら1つの通過点とし、そこから更に成長させるべく貪欲に事業成長に取り組んでいます。
事業成長のスピードに刺激を受けるだけでなく、具体的に「M&Aの戦略を考えた方がいいよ」などと示唆してもらえることもあります。我々単体では到達できないようなレベルまで、経営者としての目線を引き上げてもらえていると日々感じています。
山下
「セールスイネーブルメント」というキーワードで、一番に想起される会社になっていきたいと思っています。IPOという形で、社会の公器として我々のアプローチが市場に受け入れられている状態を目指していきます。
さらに我々は、日本の市場だけに留まるつもりはまったくありません。「セールスイネーブルメント」は海外の方が先行しており、大きな市場ができています。実はすでにニューヨークに社員がいます。3〜4年後など遠くないうちに本格的な海外進出を始め、将来的には私たちの考える「イネーブルメント」をグローバルスタンダードにしていきたいと思います。