2040年に時価総額100兆円 新たな景色への共感 BuySell Technologies 岩田匡平社長兼CEO、今村雅幸CTOに聞く

バイセルメーン写真1

ネット型リユース事業を展開するBuySell Technologies(以下、バイセル)は、ミダスキャピタルによる投資の第一号案件になった企業だ。バイセルがミダスキャピタルの企業群に参画したのは2017年。2年後には上場を果たした。バイセルの岩田匡平社長兼最高経営責任者(CEO)と、4月に最高技術責任者(CTO)に就いた今村雅幸氏にバイセル参画の経緯や、ミダスキャピタルとのシナジーを聞いた。(敬称略)

 

大手広告代理店で気付いた不条理
日本発のメガベンチャーを支援したい

――バイセルで現職に就くまでにどんなキャリアを歩んできたのでしょうか。

岩田「博報堂を経て2014年に起業しました。ベンチャーや中小企業に特化したマーケティングコンサルティング会社を立ち上げ、ベンチャーを支援してきました。

具体的な起業プランを考えたのは博報堂時代です。当時、私は多くのナショナルアカウント(全国的な知名度を持つ企業)を担当していました。大企業は年間で数百億円規模の広告予算があり、一本のCMを作るために多くの人が関わり、入念な打ち合わせを行います。一方で、潤沢な予算を割けないベンチャーから広告の相談があっても、ごく簡単なやり取りで終わってしまっていました(もちろん今はそのようなこともないと思いますが)。ベンチャーがいいマーケティングサービスを享受できないことに疑問を感じていました。

マーケティングにおいて日本は特殊な環境です。狭い国土に約1億2000万人もの人が暮らし、言語は日本語(単一言語)が使われ、放送局の数はそれほど多くない。TVCMを活用したマスマーケティングは実に多くの人にリーチが可能な素晴らしい手法だと思います。それにも関わらず誰もが知るようなメガスタートアップは日本からなかなか生まれていません。上場時点で「マス」プロダクトと言えるほどだったのはメルカリさんぐらいではないでしょうか。

一方、米国や中国は多言語で放送局の数も多く、一本のテレビCMでマスリーチすることは難しい。でもシリコンバレーや中国からはメガベンチャーが次々と生まれている。マーケティングコンサルの知見を活かし、マスブレイクスルーする日本発のベンチャーを支援したいと考えてきました」

 

リユース市場に魅せられた
データドリブン経営で、粗利率改善

――2016年にバイセルのコンサルティングをしたことがきっかけで同年10月、取締役として参画しました。参画の理由は何だったのでしょうか。

バイセル岩田社長2

岩田「打診を受けた理由は3つあります。1つはリユース市場の規模が大きいこと。小売市場、2次流通市場に眠っているモノは数十兆円規模とされています。2つ目は、業界に目立った競合がいなかった点。当時、業界トップ企業の時価総額が1,000億円規模で、これは可能性があると思ったのです。3つ目は時代の後押しです。日本のGDP(国内総生産)が下がっていく中で2次流通マーケットは堅調な成長をみせていました」

 

――岩田さんがバイセルに参画した当時、会社はどんな課題を抱えていましたか。

岩田「経営や事業のデータ管理に課題を抱えていました。コンプライアンス(法令順守)意識も改善の余地があった。2017年9月に社長に就任してからは『目の前の利益を逸するとしても、まずはいい会社であることを大事にしたい』と繰り返してきました。

また、データ基盤を整え、データドリブンな経営に舵を切りました。当社はリユース品の訪問買い取りをしていますが、KPI(評価指標)を1訪問あたりの粗利単価に据え、単価を押し上げる要因を徹底的に分析したのです。分析結果を踏まえた改善プランを大量に実行し、訪問粗利単価を高めました」

 

ヤフー→起業→ZOZOのCTO 次に飛び込んだのは?

――今村さんは、ヤフーやZOZOテクノロジーズのCTOなどエンジニアとしてののキャリアを積んでいます。

バイセル今村氏

今村「2006年に新卒でウェブエンジニアとしてヤフーに入社しYahoo!FASHIONなどのファッション系の新規サービスの立ち上げの開発に携わりました。2009年、ヤフーの同僚とファッション情報アプリを運営するVASILYを共同創業し、取締役CTOに就任、ファッションテックカンパニーとしてSNSサービス、アプリ開発などに注力してきました。2017年10月に『ゾゾタウン』を運営するスタートトゥデイ(現ZOZO)から一緒にやっていこうと声を掛けられ、会社を売却することを決めたのです」

 

――売却を決めた理由は何だったのでしょうか。

今村「当時、ZOZOは『ZOZOSUIT』の開発を進めていた。スーツのプロトタイプを見せてもらった時に、本気で世界でファッションを変革しようという気概が伝わってきたんです。あの時、ZOZOSUITを見なければ一緒にならなかったでしょう。

ZOZOはエンジニアの採用に課題を抱えていた。ファッションEC事業を担うエンジニアはいても、新しい技術を持ったエンジニアがいなかったのです。VASILYではエンジニアのスキルの高さを保つことを意識し、常に技術的な挑戦をしてきました。ZOZOは、ファッションテックカンパニーとしてやってきた私たちの技術力を魅力的に感じていましたし、私たちもZOZOでならビジョンを実現できると感じ、売却を決めました。

ZOZOでは、全社の技術戦略からエンジニアの採用までを担い、テックカンパニーにしていくことに注力してきました。どのような取り組みを行ってきたかはこちらのブログでも紹介しています。ZOZOにジョインしてもうすぐ3年が経過するというタイミングで、自分自身このままZOZOに残ってやるのか、新しいチャレンジをするのか考えていました。そんな時、ちょうど知人からバイセルの事業内容を聞く機会がありました。岩田さんのお話を伺う中で、リユース業界自体のマーケットの大きさや、エンジニアとしてまだまだ挑戦しがいのある課題がたくさんあることにも魅力を感じ、参画することにしたのです」

 

ミダス参画で知識やノウハウ共有 自社ECにも還元

――バイセルは2017年に、ミダスキャピタルの投資先企業になりました。ミダスキャピタルのどんな点に共感したのでしょうか。

岩田「ミダスキャピタルの投資方法は3つあります。①対象企業の株式を買い取るバイアウト、②オーナー経営者が持つ株式を現物出資してファンドに参画する方法、③そして起業、新規設立する方法――です。バイセルは①のバイアウトで、ミダスキャピタルの1号案件となりました。

ミダスキャピタルの投資先企業は、未上場含めて現時点(2021年4月時点)での時価総額総計は約1,200億円です。ビジョンでは2024年に1兆円、2030年には10兆円、そして2040年には100兆円を目指しています。この規模感が私にとってはリンクしやすかった。一社、一人ではたどり着くことがなかなか難しいこの途方もない目標に向かい、会社や個人の集合体である『群』で目指すという点に共感しています」

バイセル今村氏2

今村「ソフトバンクグループでも時価総額は現在約20兆円です。だから100兆円という想像できない世界を見ていたいという気持ちも強くあります。ミダス企業群には、経営、テクノロジー、マーケティング、ファイナンスといった分野のプロフェッショナルが参画しています。時価総額100兆円と聞くと難しいかもしれませんが、ミダスに関わるプロフェッショナルとなら実現できると思っています。

もう一つは、エンジニアとしての思いです。エンジニアの職業の間口は広がり、小学校でプログラミング教育が必修化されました。しかし、本気でビジネスをしようとするエンジニアはまだ少ない印象です。ミダス企業群の一員となることで、経営者目線で技術を活用できるCTOやエンジニアを増やし、エンジニアという仕事の価値をもっと高めたい」

 

――ミダス企業群に参画してバイセルにどんなシナジーが生まれたのでしょうか。

バイセル岩田社長3

岩田「企業間の垣根を超えた知識の共有が大きいです。具体的にはチームの組み立て方、事業運営、経営手法、資金調達の方法に関する勉強会を開いています。例えば、バイセルは2020年、ブランド品買い取り企業を子会社化したのですが、買収後のPMI設計をミダスキャピタルから教わりました。

このほか、企業を横断したテックチームを作り、若手CTOの育成を図っています。

実は4年ほど前まで、バイセルは卸売りのBtoB事業がほぼ100%で、BtoCはやっていませんでした。そこで、ミダスキャピタル投資先の企業向けEC支援サービスの会社から取締役会の手続きを踏んだ上で、ロジスティックも含め、コンサルティングをして頂きました。

今は売り上げに占めるEC比率が13%ぐらいまで成長しています。2020年12月期の自社ECの売上高は、前期比約3.3倍に増えました」

 

――今後、バイセルをどんな企業に成長させますか。

岩田「経営者としてとにかく四の五の言わずに、企業価値を高めたいと考えています。ミダスキャピタルは2024年に1兆円を掲げていますから、その内一定程度はバイセルの時価総額で貢献したいと思っています」

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