採算性の低いプロジェクトを立て直し、1年間で収益性を5倍に成長

当初は採算性の低かったオンラインクレーンゲーム事業。入社早々に事業立て直しを図り、1年間で収益性を5倍にまで成長させた株式会社GENDA CPO 重村裕紀氏に、その改革の全容についてお話を伺いました。

◆プロフィール

株式会社GENDA CPO
重村裕紀(しげむら・ひろき)氏

2016年4月 FiNC Technologiesの立ち上げ期にエンジニアとしてジョイン。2018年12月に同社プロダクトマネージャーに転向し、ヘルスケアアプリFiNCのプロダクトマネジメント業務に従事。
2020年10月 株式会社GENDAに入社。同年12月よりCTOに就任し、開発組織づくりやコーポレートITの導入支援などを担当。2021年10月に同社CPOに就任し、オンラインクレーンゲーム事業や、ゲームセンターのDXの推進などに従事。

 

採算性に課題があったオンラインクレーンゲーム事業の立て直し

――オンラインクレーンゲーム「LIFTる。(りふとる)」の概要について教えてください。

オンラインクレーンゲームは、スマートフォンで実際のクレーンゲームを遠隔で操作して景品を獲得する仕組みのスマートフォンゲームです。実際のマシンは倉庫にずらりと並べられていて、景品が落ちると、登録されたアプリ会員住所宛にスタッフが景品を発送するので、ユーザーは自宅にいながらクレーンゲームを楽しむことができます。「LIFTる。」はGENDA Gamesが運営するオンラインクレーンゲームです。

 

――重村さんは入社早々にオンラインクレーンゲーム事業の立て直しをミッションとされたわけですが、お聞きになった際はどのように感じられていましたか。

「LIFTる。」はオンラインクレーンゲーム業界の中では後発でした。大手ゲームセンター企業が運営するサービス競合も多く、シェアを拡大するのが難しいビジネスだと感じていました。市場環境などを加味すると「撤退も検討したほうがよいのでは」という意見は社内からも一部ありました。しかし、自分としては入社後の最初のプロジェクトであったため、必ず何かしらの成果を出し、社内の信頼を得たいと考えていました。

 

――事業の立て直しはどのように行っていきましたか。

フェーズとして2段階必要だと考えており、継続的な事業投資のために、まずはコスト削減から着手する必要があると考えました。そこで、コスト比率の大きかった広告予算、開発予算などの大幅削減から着手しました。また、開発投資の生産性を向上するために、開発の内製化にも踏み切りました。当時は社内にエンジニアチームがいなかったので、基本的にすべての開発を外部パートナーに外注して進めていました。ところが、コストに対して十分なリターンを得られていない中で開発を全て外部に依存している状態は今後機能開発を進めていく上でリスキーだと感じました。そこで、まずはそのシステム開発を内製化することから着手しました。エンジニアを採用し、開発の内製化を図ることで開発費を大幅に削減するだけでなく、開発投資のROIを向上させることにも成功しました。

 

――内製化以外のコストカットについてはいかがですか。

元々サービス自体が後発組だったこともあり「シェア1位を獲得するまで広告予算は可能な限り掛ける」という方針で進めていましたが、当時の効率でシェア1位を獲得するまで広告費用を掛け続けるのは、予算的に不可能だということがわかりました。そこで、持続的な事業投資を実現するために、シェア拡大から利益最大化のために広告予算を使う方針に変更しました。結果的には広告予算を60%ほど縮小するとともに、顧客獲得効率を高めることにも成功しました。

他にも、変動費として、配送費用や決済手数料といった間接費用も、システム開発で一定量削減することが可能です。例えば、アプリ版だけでなく、ウェブ版のサービスをお客様に利用していただくことで、決済に関わる手数料等を削減することが可能です。配送費用も個別に送るのではなく、複数の景品を一括で配送する形式に変更するといった形で、地道なコストカットを積み重ねていきました。

 

――コストカットが成功してきた段階で、続いて着手されたのはどのような点でしたか。

コストカットフェーズが終了すると、続いて改革はグロースフェーズに入りました。
改革には、プロフィット意識とエンジニアの内製化、そして顧客視点という3つがテーマだと感じていましたが、特にオンラインクレーンゲーム事業については顧客理解が非常に重要となってきます。
当時はデータドリブンに意思決定をする体制が不十分であったため、リリースした機能がどの程度利用されたのかを細かく分析出来ていませんでした。また、企画段階においても、顧客のニーズを十分に検証出来ているとはいえない状態でした。そこで、本当にお客様が求めているものは何なのか、それをより効率よく、低価格で作るためにはどう開発すべきかを突き詰めました。前者は企画段階での精度を高めるという点に集約されます。

 

――精度を高めるために、具体的にはどのようなことに着手されましたか。

ユーザーインタビューを20本ほど実施したり、データの基盤を整え、ユーザーの行動ログなどの細かく精度の高いデータを収集・分析したりしました。そうすることで新しい機能をリリースした際のユーザーの反応を可視化できるので、PDCAを回していけます。

具体的には初回インストール時に当たるまで無料でプレイできる「当たるまで無料台」を設置したり、画面レイアウトの最適化を図ったり、LTVの低い設定を減らして高い設定を増やすといった改善を行ったりしました。このような地道な施策の積み重ねによって、様々な指標を改善することに成功しました。

また、アンケートを活用したマーケットリサーチなどにも注力しました。自分たちが業界の中ではどのようなポジションにいて、今のユーザーになぜ選ばれているのか分析し、相対的、客観的に自社サービスを評価していく。そうすると自分たちがどの方向に進めば勝てるのかという勝ち筋が見えてきます。そこから逆算してプロダクトのコンセプトに落とし込みました。

このあたりのマーケティング戦略策定プロセスでは、ミダスキャピタルの別の投資先の方の知見を取り入れることで、より良い戦略コンセプトを立案できたと思います。

オンラインクレーンゲーム事業は景品調達チーム、運営チーム、配送チーム、開発チーム、広告マーケティングチームが各施策をそれぞれで実施しており、全体戦略としての統一感がないことも課題でした。そこで、プロダクトのコンセプトを周知・整理して、全チームが同じ戦略のもとで動いてもらえるような体制を整えました。

 

1年間で収益性が5倍に成長

株式会社GENDA CPO 重村裕紀氏

――最終的にどの程度の成果が得られたのでしょうか。

開発内製化、コスト削減、データ基盤整備、マーケティング戦略の立案、プロダクトの改善等、様々な施策を進めてきましたが、突き詰めると広告効率とLTVの向上です。お客様に本質的な価値となりうるコストは削減せずに、最終的には顧客あたりの収益性は1年間で5倍の成長を達成し、売上も前年比160%を実現することができました。お客様から頂いた売上は極力事業をさらによくするための事業投資に回す良い循環が実現出来ていると感じています。

 

――大規模改革を断行していくために、意識したのはどのような点でしたか。

最も重視したのは、プロフィット意識です。プロフィットが出ない限り持続的な事業投資ができません。利益を出せれば新たな投資が可能となり、顧客価値が最大化していきます。そのため、プロフィット意識を持つということは大前提でした。

2つ目は顧客起点です。様々な顧客の様々な側面から顧客を深く理解していないと企画は絶対に当たりません。せっかく作ったものも無駄になってしまうので、改革を進める上で顧客視点というのはすごく意識しましたね。

もう1つ敢えて挙げるとすれば、きちんと一貫した戦略を実現すること。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、チームが分かれているとそれぞれがそれぞれの施策を取ってしまいがちです。プロダクトとして、事業として、どういうターゲットにどういった価値を提供したいのかというのを全体で一致させていくことは非常に重要だと感じます。

 

――今、課題に感じていること、今後取り組んでいきたいことについてお話をお聞かせください。

とにかく今は組織を大きくしていくフェーズですので、採用には今後も注力していきたいと考えています。エンジニア、テック人材という観点ではかなり地盤が強化されてきたと感じていますが、開発の力をビジネスに繋げていくための橋渡し的な存在、すなわちプロダクトマネージャーやプロデューサー人材についてはまだまだ少ないのではと感じているので、その強化も今後は必要になってくるでしょう。そうすることで、事業価値も飛躍的に伸びていくのではないかと思います。

また、個別の事業については、現状オンラインクレーンゲーム事業はGENDAグループ全体の中でもまだまだ割合の小さな事業です。僕としては今後オンライン関連の様々な事業だけでGENDAグループ内の営業利益比率50%を目指していきたい。そう考えた際に、オンラインクレーンゲーム事業だけで実現することは難しいので、次の収益の柱となる新しいサービスを見つけていきたいと考えています。

 

――ありがとうございました。

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