「伝説のバンカー」がミダスキャピタル専務へ 幅広い人脈で企業群の成長を導く

みずほ銀行で長年、スタートアップの支援に尽力してきた大櫃直人氏。年間1,000社のスタートアップと面談し成長支援を続け、「伝説のバンカー」として広く知られる存在です。その大櫃氏が2025年10月1日付でミダスキャピタル専務取締役パートナーに就任しました。 大櫃氏に就任の経緯と抱負を聞きました。

◆プロフィール

株式会社ミダスキャピタル 専務取締役パートナー
大櫃 直人(おおひつ・なおと)氏

1988年、富士銀行(現・みずほ銀行)入行。複数の営業店勤務を経て、本部にてM&A業務や法人取引獲得を推進。2018年に執行役員、2022年にみずほ銀行 常務執行役員 リテール事業法人部門・副部門長に就任。スタートアップ成長支援をライフワークにし、年間1,000社と面談を重ねてきた。政府の「新しい資本主義実現会議」の下に開催された「スタートアップ育成分科会」構成員も務める。2024年、銀行員として初めてNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演。2025年4月、ミダスキャピタル社外取締役、同年10月1日付で専務取締役パートナー就任。

“稀有な経営者”の存在を世の中に伝えたい

――最初に、これまでのキャリアとミダスキャピタルとの接点について教えてください。

大櫃
みずほ銀行に36年間勤務し、銀行員としてキャリアを積んできました。特に後半の10年間はスタートアップやグロース市場の新興企業といった、日本の産業の新陳代謝を牽引する企業の支援に携わってきました。

企業支援を通じて、多くの方々とのご縁が生まれ、スタートアップのエコシステムの強化に貢献する。これが銀行員としての使命感でした。そして、ミダスキャピタルのメンバーの方と知り合うことができました。

代表の吉村英毅さんには、エアトリ時代にお会いしました。今でも鮮明に覚えているのは、創業初期の事務所に伺ったときのことです。狭い会議室に通されると、「会議は30分まで」と貼り紙がありました。徹底した時間管理に驚きましたね。多くの会社が「時間を大切に」と言いますが、来客も使う会議室に貼り出されていたのは初めてで、その姿勢に強い印象を受けました。

ミダスキャピタルの投資先企業である、BuySell Technologiesの代表取締役会長・岩田匡平さんともビジネスの場で知り合いました。穏やかな方というのが最初の印象でしたが、お付き合いを重ねるうちに、深い洞察力と先を読む力に、傑出した経営者と感じるようになりました。

そしてミダス企業群のベンチャーキャピタル運営会社である、Dual Bridge Capital代表パートナーの寺田修輔さんですね。寺田さんが、株式会社じげんでCFOだったときに出会いました。「カミソリのような切れ味」という表現がぴったりで、頭の回転の速さや、物事を高い解像度で分析する力に圧倒されました。この5年でさらに才能を磨かれ、群を抜く存在になっていると感じます。

このように異なる場所でお会いした3人が今、ミダスキャピタルに集まっています。吉村さんの持つ懐の深さや、求心力によって傑出した人材が自然と引き寄せられてきたように思います。

――2025年10月1日付で社外取締役から専務取締役パートナーに就任されました。経緯についてお聞かせください。

大櫃
ミダスキャピタルにジョインしようと思った背景には、いくつか理由があります。1つは、吉村さんという稀有な経営者の存在をもっと多くの人に知っていただき、世の中に伝える一端を担いたいという思いです

正直に申し上げると、吉村さんに対しては、最初から傑出した経営者という印象を持っていたわけではありません。むしろ、お付き合いを重ねる中で、次第にその才能を感じるようになりました。

優秀な人は次の行動や思考をある程度予測できるとされています。しかし、いわゆる天才型の経営者は、その思考プロセスが周囲には読めません。天才型の代表例を挙げると、孫正義さんですが、一見理解できないような一手でも、後で振り返ると、すごい判断だったことが分かります。

吉村さんはまさに天才型の経営者だと思います。故に近しい方たちには理解されていても、外からは全貌が見えにくく、何を仕掛けてくるか分からない。しかし、最終的には圧倒的な結果を出すのが吉村さんであり、現代の天才型経営者のお一人だと感じています。

また、今までは金融機関の立場で、外から急成長するミダスキャピタルを見てきました。実際に中に入って見ることで、得られる知見や初めて見える景色があると考えています。このような理由で、就任を決めました。

ミダスキャピタルの「多幸感が生まれる会議」

――社外取締役として関わっていたときのミダスキャピタルとのエピソードを教えてください。

大櫃
ミダスキャピタルでは毎週木曜日に定例会議を行っています。投資先企業群の経営陣らが一堂に会する場ですが、まさに「多幸感が生まれる会議」です。全員が一つひとつの案件や議題と課題に真剣に向き合い、厳しい意見が飛び交う場面もあります。ですが、その合間に自然と笑いが起きたりもして、爽やかに議論が進んでいく印象です。

仕事柄いろいろな企業の会議に出席する機会がありますが、このような感覚を持つ会議はあまりありません。笑いを交えながらも、真剣な議論が土台にありますし、その根底には常に温かさや人への思いやりがある

もちろん、議論を尽くしたうえで、結論が決まることもあれば、決まらないこともあります。ですが、終わった後にどこか幸せな気持ちになるんです。こんな会議はとても珍しいと思いますし、一般的な会議にありがちな「面倒だ」という感覚は一切なく、毎回参加が楽しみでした。

――なぜ「多幸感が生まれる会議」ができると思いますか。

大櫃
吉村さんやミダスメンバーが採用の場面で、言葉では表現しにくい人柄の部分を重視されているからではないでしょうか。もちろん能力や実績、実行力などの判断もありますが、根底にあるのは「いい人と働きたい」という感覚なのだと思います。だからこそ、メンバー間で安心感や信頼感が生まれているのです。

「世界に冠たる企業群を創る」というビジョンに共感するメンバーが集まっているため、方向性がぶれることなく物事に取り組めることも多幸感の基盤になっています。

それだけではなく、優秀なメンバー同士が議論を尽くした後の爽快感も関係しています。お互いに納得できる良い議論が、短時間で得られることも多幸感を生み出しているのでしょう。これらの要素が相まって、ミダス特有の充実した議論が形成されていると思っています。

従業員や家族が幸せになれるか ブレない判断軸

――専務取締役パートナーとして、これから現場と関わっていくことになりますが、ミダスキャピタルのメンバーにはどのような期待を寄せていますか?

大櫃
少数精鋭のメンバーが集まっており、それぞれ得意分野やスキルが異なるので、お互いの強みを生かしながらミダスキャピタルの未来を作っていきたいと考えています。

他方、若手メンバーの中には大企業で働いた経験が少ない方もいます。世の中にはもっとすごい組織や会社があること、そして少し言い方が厳しいかもしれませんが、この程度の成功で喜んでいては、吉村さんが描くスケールの世界観には追い付けない、ということも伝えたいです。

そのためには、私自身が、目の前のお客さま、そしてその先にいるお客さまを常に最優先に考えるという軸をぶらさないことが重要だと考えています。例えば、出資案件やディールの判断においても、社長や株主だけでなくその事業に関わる人、従業員の方やその家族の方たちが幸せになれるかどうかが私の判断基準です。これは銀行員時代から変わっていません。

この軸に沿って行動し、判断していることをメンバーに理解してもらいながら、一緒に進めていきたいと思っています。

――最後にミダスキャピタルで挑戦したいことや展望について教えてください。

大櫃
ミダス企業群の時価総額を5,000億円から1兆円規模まで高めるのは現体制でも可能でしょう。ただ、その先の数兆円、10兆円規模を目指すうえでは、現在の仕組みではファイナンスがボトルネックになることが見えています。

金融機関出身として、この課題解決に取り組み、吉村さんの期待に応えたいと考えています。

銀行員時代に培った広範な人脈ネットワークを強みに、ミダスキャピタルが必要とする業界のキーマンと出会う機会を創出し、事業成長に貢献したいです。私自身も投資先企業の優秀な事業家の方から学び、吸収して、自身の金融知識と組み合わせたい。そう思っています。

――ありがとうございました。

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