ベンチャー転職の決め手は「その会社のビジョンや理念にどれだけ共感できるか」 株式会社イングリウッド堂田隆貴CFOと岸本裕史氏に聞く

株式会社イングリウッド堂田隆貴CFOと岸本裕史氏

ECを起点として、AI・データテクノロジー事業を中心に業績を伸ばして続けている株式会社イングリウッド。未上場ながら、2020年での売上は150億円を超え、社員数で割ると1人当たり約1億円の売上を出している計算だ。イングリウッドの社員の中には他の会社から転職してきた人も多く、CFOの堂田隆貴氏とAI戦略事業本部の岸本裕史氏もベンチャー転職の経験者だ。今回はそんなお二人に、ベンチャー転職やイングリウッドへの転職について聞いた。(敬称略)

 

公認会計士として会計監査やM&Aアドバイザリーを経験

――堂田さんは、イングリウッドに参画されるまでは、どのようなキャリアを歩んでこられましたか。

堂田隆貴氏

堂田 大学在学中に、何らかの秀でた専門性を持っておきたいと、公認会計士の資格を取得しました。公認会計士はただ数字と付き合うだけではなく、法律やビジネスに直接的に関与できる職業であったからです。そして将来を見据えさまざまな可能性を想定して、自らがビジネスの土台をきちんと形成したいと考え、監査法人への入所を決めました。

 「監査」はかなり堅い仕事だと思われていますが、単に数字をチェックするだけではなくて、その数字がどのように作られているかという視点が大切なのです。ですから、決算書や財務書類を見るだけで、その会社のビジネスを理解して、数字の妥当性を感覚的に把握しなければいけません。そういう意味では、ビジネスの土台をそこで鍛えることができたと思います。また、様々な業界のクライアントを担当したことで、多くのビジネスモデルに触れることができたことも、いい経験になりましたね。

 

――その後、グループ内の別の会社に転籍して、M&Aのアドバイザリーの業務に関わられたんですよね。なぜ、転籍されたのですか。

堂田 監査の仕事を続ける中で、公認会計士として、さらに専門性を高めて磨き上げていきたいと考えるようになりました。2000年代後半から、M&Aは日本のみならずグローバルに拡大していた時期だったので、当時M&Aの実務に携わることは、自身にとって経験値が上がる重要なファクターだと感じました。

 

――それから、イングリウッドに転職されたんですね。

堂田 転職意欲が強かったわけではないのですが、何となくモヤモヤ感を抱えていた時期でした。また、商社への出向期間中に、最終的に社内で意思決定まで進めるという経験をして、大変充実感を覚えたんです。そのため事業会社への転職も漠然と考えていました

 そんな時に大学の同級生だったミダスキャピタルの吉村代表取締役社長から、イングリウッドCEOの黒川さんを紹介されました。黒川さんに会ってすぐにその魅力に惹かれ、「ぜひ一緒に仕事したい」と思いました。「日本もアメリカも制覇する!」という話を聞いた時に、「この人なら実現できそうだな」と不思議と感じさせられたんですよ。何回か会って、すぐに転職を決めましたね。

 

DeNAからメディカルノート、そしてイングリウッドに辿り着いた

――では次に、岸本さんのご経歴について教えてください。

岸本裕史氏

岸本 私は2011年に新卒採用でDeNA(ディーエヌエー)に入社しました。就職活動した時期はリーマン・ショック後で、日本経済が停滞しており、世界に向けて事業展開できそうな会社はほとんど見当たらなかったんです。そんな中で、最も成長性があると思えたのが、DeNAでした。入社後は、全社の約9割の売上を出していたソーシャルゲームの部署で、ゲームディレクターとプロデューサーを経験しました。事業成長の早い事業に携われたことは、自分にとって大きな経験でしたね。

 その後は希望して経営企画部に異動し、コーポレート側の仕事を経験しました。異動した理由は、ゲーム開発という土俵で仕事をするより、会社から見てもっと自分の価値が発揮できるロールが他にあると感じたこと。もう1点、当時、ソーシャルゲームの事業が好調だったDeNAは、事業を多角化するか、それとも一本足打法で行くかという難しい意思決定を迫られていました。そのタイミングで事業戦略に近くで関われるポジションに就くことは、今後の自分の経験としても重要だと考えました。結果的に、事業とコーポレートの二面から、立場を変えてキャリアを積めたことは、大変貴重な経験になっています。

 

――それから、スタートアップに転職されましたが、どのような理由があったのでしょうか。

岸本 事業とコーポレートを両方経験して、どちらも総合的に行えるポジションが自分に向いていると感じました。大企業で両方のロールをやりますというのは現実的ではないと考えて、スタートアップへの転職を決めました。前職でも事業以外も広範に挑戦させていただきましたが、イングリウッドは株主構成もシンプルで、事業成長に多面的なかかわりができることから、スタートアップらしい挑戦の場だと感じています。

 

これまでのキャリアをイングリッドでどう生かしているか

――イングリウッドに転職後、前職で培ったどのようなスキルが役に立っていると感じますか。

株式会社イングリウッド堂田隆貴CFOと岸本裕史氏

堂田 弊社でもM&Aを既に何件か手がけているので、前職での経験は非常にいかせていると感じます。M&Aにおける交渉については、基本的に上層部である程度の意思決定がなされるべき事象だと思うので、売買の具体的な金額とそのロジックについて、CFOという私の立場上、必ず理解していないといけません。M&Aは一人では絶対にできなくて、いろいろな立場からデューデリジェンスをしながら、成功に導いていくものです。さらに、統合したら終了ということでなく、その後もPMI (Post Merger Integration)などしっかりとハンドリングする必要があります。そういった現場の中では、当時の経験が役に立っていますし、今後も持っておくべき知見だと考えていますね。

岸本 入社前から新規事業プランの議論をしていたので、実際入社してすぐ人材プラットフォーム「ビズデジ」の新規事業の立ち上げに取り組み、半年で黒字化できました。これにはこれまで、さまざまな事業のフェーズを立場を変えて、多角的に見ていたことが生かせたのではないかと考えています。「ビズデジ」という事業推進の視点だけではなく、全社の状況もバランスよく考えて、いい選択ができたという感覚ですね。もしかすると、事業を立ち上げグロースさせることについては他にもできる人がいるかもしれませんが、数字には出てこないような部分まで見つめて、全社のバランスも考え、会社としての価値の向上を考えられる視点は、自分のこれまでのキャリアの中で身につけた強みだと思っています。

 

転職して気づいたミダス企業群だからこその強み

――イングリウッドはミダスキャピタルの投資先のひとつで、ミダス企業群としてもその動向が注目されています。働く中で、ミダス企業群であるがゆえのメリットは感じますか。

株式会社イングリウッド堂田隆貴CFO

堂田 ミダスキャピタルは「企業群全体で企業価値を上げていこう」という構想を持っているので、企業同士の横の連携する機会が多くあります。通常はファンドが複数の会社に投資した時、投資先同士が強く連携することはほとんどありませんが、ミダスキャピタルの投資先の企業間の連携は、いい意味で高いレベルにあると感じます。具体的には、ナレッジの共有や勉強会の実施などがありますね。また、ミダスキャピタルは、投資先企業の意思決定や経営方針を尊重しながら、経営にうまく生かせる材料を提供してくれてくれる存在だと思います。

岸本 ミダスキャピタルは株主としての立場というよりも、事業目線で新たな知見を教えてくれる存在です。例えば、一企業だけではプロフェッショナルな方に講演をしていただくことは難しくても、企業群として開催していただけて、社員が参加できるというのはシンプルなメリットだと感じています。

 

「その会社のビジョンや理念にどれだけ共感できるか」が転職の決め手

――ベンチャー転職を考えている人へのアドバイスはありますか。

堂田 転職の入り口としては「何をするか」を重視してもいいと思うのですが、最終的には「誰と働くか」を最重要視してほしいですね。ベンチャー企業は、大企業と比較するとそこまで組織化されていませんし、人数も少なくて一人が担当する仕事の範囲は増大しがちです。だからこそ、働く人が持っているビジョンや理念にどれだけ共感できるかが、判断の重要な決め手になるのではないでしょうか。

 「いいポジションが用意されているから」というような理由だけで転職を決めると、失敗してしまう危険性も高まると思います。転職前に、代表者や様々な社員に会って、その思いを知る機会を得て、「この人と一緒に働きたい」という純粋な気持ちが抱けるといいと思います。自分なりの物差しを使ってしっかり判断していただきたいですね。

 

――続いて、岸本さんからもアドバイスをいただけますか。

岸本 私は転職するにあたって、求人ではなく相手の事業や会社自体をしっかりとらえることが重要だと思います。

 大企業への転職の場合だと、採用担当者が全社のことを全て把握できていないことが多いと思います。しかしベンチャー企業だと、こちらからの質問に対して網羅的にそして真摯に答えてくれるはずなので、小さい組織ならではのメリットを利用して、積極的に採用条件や具体的な事業内容、社風などについて、聞き出すことが重要だと思います。そして、求人に合致するという狭い範囲で、相手次第のマッチングを目指すのではなく、自分自身の選んだ道を「正解にできるか?」という基準で判断をしていただきたいですね。

 

「事業とともに自分の器も大きくできる人」と働きたい

――イングリウッドでは、今後どのような方に入社してもらいたいと考えていますか。

堂田 弊社では、自社で新しいビジネスを追い続けながら、クライアントに対しても、その変革をサポートするようなビジネスの提供を行っています。そうすることで、結果的に自分自身の業務の変革もうまく体感できるんですよね。おそらく、人材がいくら増えても、新しいことを訴求し続けるという姿勢は、企業文化として持ち続けたいなと考えています。

 具体的には、社内における配置転換も含めて、常に社員にいろいろなことを経験させられる組織にしたいと考えています。やはり、事業サイドとコーポレートサイドの両軸をしっかりと理解できて一人前だと思うんです。特にある程度マネジメントする立場になって成長していくためには、両方うまく経験して、把握しようという姿勢が必要です。イングリウッドでなら、どちらの経験もできると考えています。

 私自身がコーポレートサイドにいるということもありますが、ぜひ事業以外の部署にも、リスクを恐れずに意欲のある方に来てもらえるとうれしいですね。弊社では、多岐にわたるさまざまな経験を積みつつも、より新しい成長が体感できると思いますので、ぜひ検討していただければと思います。

 

――岸本さんは、どのような方に来ていただきたいですか。

岸本 イングリウッドのミッションは「商品を売る最強の集団であり続けること」なのですが、実は営業専任部隊はいないんですよね。私としては、そこが非常に特徴的だと思っていて、役割が定められているわけではないんです。本来は因数分解しがちなところですが、「事業」に真摯に向かえるというのが、イングリウッドの面白さだと思います。事業を起点として、部署を越境して役割を飛び越えて、会社にプラスになるかどうかという視点で社員がみんな動いているんです。

 弊社はまだ規模は小さいですが、事業が大きくなれば会社も大きくなると考えながら、私自身も働いています。会社の売り上げや時価総額だけを見るのではなくて、事業とともに自分の視野も広がり、自分の器も大きくなっていける、そういう思考ができる人と一緒に仕事をしたいなと思っています。

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