株式会社BuySell Technologies(以下、バイセル)は2024年4月、新たに徳重浩介氏が代表取締役社長兼CEOに就任し、代表取締役会長となる岩田氏との共同代表体制でリスタートを切りました。国内最大級のリユースサービスを提供し、成長を続けるバイセルがなぜ今、新体制への移行を決めたのか。二人の代表にその狙いと今後の展望について伺いました。
◆プロフィール
株式会社BuySell Technologies 代表取締役会長
岩田 匡平(いわた きょうへい)
東京大学工学部システム創成学科卒。株式会社博報堂を経てマーケティングコンサルティング等を提供するOWL株式会社(現・株式会社AViC)を2014年に創業し代表取締役就任。ベンチャー企業を中心とした急成長企業のマーケティング活動を幅広く支援。2016年6月より当社のコンサルティングを開始し、2016年10月に取締役として当社に参画。2017年9月に当社代表取締役社長兼CEO、2024年4月に代表取締役会長へ就任。
株式会社BuySell Technologies 代表取締役社長兼CEO
徳重 浩介(とくしげ こうすけ)
立教大学社会学部現代文化学科卒。2006年に新卒で株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)に入社。飲食情報領域の営業を経て、株式会社リクルートマーケティングパートナーズにおいてマーケティング支援事業・教育支援事業の責任者として従事。2015年同社執行役員に就任。2019年に株式会社リクルートライフスタイルの執行役員に就任し、飲食店向け集客メディアやDX支援等を推進。2024年4月に当社代表取締役社長兼CEOへ就任。
成長の壁を感じ、新体制への刷新を決断
――今回、新体制への移行を決めた背景を教えてください。
岩田:大きく2つの理由があります。1つは2023年の春頃に報道を賑わせた広域強盗事件の影響で、出張訪問買取事業への警戒感が高まり、問い合わせが激減したこと。これによって業績が大きく落ち込み、ここまで順調に伸びてきたバイセルが初めて大きな壁にぶつかりました。そのタイミングで改めて組織を見渡したとき、抜本的な変化をもたらす必要があると感じたためです。
もう1つは、ここ数年でM&Aを積極的に行い、事業規模が大きく拡大したこと。従業員数も1,300名を超え、子会社も増えました。カルチャーや価値観の違う組織を束ねていくには、既存の経営チームのケイパビリティでは限界を感じ、外部から新しい風を入れて経営体制を刷新する必要があると感じたためです。
――新たに代表に就任された徳重さんとの出会いについて聞かせてください。
岩田:知人の紹介で徳重さんと会ったのは2023年の8月頃。リクルートで私たちよりも大きな規模の事業トップを務めた経験があり、日向を歩きながらも苦労を乗り越えてこられた方だと感じました。経歴だけでなく人間性も含め、一目惚れでしたね。
特に強みだと感じているのは、徳重さんの人を見る目の確かさです。実際、就任からわずか数ヶ月で社内の人材の特性や課題を把握し、適材適所の配置を進めてくれています。ロジカル以外の部分でも人を動かせるので、変革を進めるうえで欠かせない存在だと確信しました。
――徳重さんは、バイセルからのオファーをどのように受け止められましたか?
徳重:まさかバイセルの岩田さんから声をかけていただけるとは思ってもみませんでした。ただ、リクルートにいた頃から、いつかは経営者としてのキャリアを積みたいという想いがありました。岩田さんの誘いを受け、チャレンジするタイミングが来たと感じたのです。
入社の意思決定をするまでに3ヶ月ほど時間を要しましたが、リクルートという大企業におけるキャリアパスを捨てるのは簡単な判断ではありませんでした。周囲とも相談を重ね、何度も自問自答を繰り返しました。最終的には、岩田さんの熱い想いに共感し、一緒にバイセルを盛り上げていきたいと心に決めたのです。
二人三脚の経営で、事業成長を加速させる
――共同代表制の狙いと、お二人の役割分担を教えてください。
岩田:代表取締役を “二人で一つのエンジン” と捉え、共に全力でコミットしていくことが狙いです。経営判断のスピードを上げると同時に、お互いの強みを生かすことで、シナジーを生み出していきたいと考えています。
私の役割としては、0→1をつくる新規事業や、海外展開やM&Aなど非連続な成長を追求する部分を担います。
徳重:私は主力の出張訪問買取事業の拡大に注力します。リクルートでの経験を生かし、非合理なことも含めて理解しながら、人と組織を動かしていきたいと思います。
バイセルは、リユース業界では珍しくテック投資に注力しています。100人近くいる優秀なエンジニアとともに、単にサービスを作るだけでなく、しっかり活用されるサービスを作っていきたいですね。そしてあわせて人事制度や人材、ビジネスプロセスのオペレーションも磨き込むことで、全社一丸となって生産性をあげていきたいと思っています。
岩田:上場企業でCEOのサクセッションプランが成功した事例は極めて少ないと言われていますが、その中でも稀有な成功事例になりたいですね。
――新体制になって数ヶ月が経ちました。手応えはいかがですか?
岩田:この数ヶ月間、徳重さんの推進力には驚くばかりです。まるで2年ぐらい一緒にやっているような感覚ですね(笑)。キャッチアップのスピードが早く、すでに様々なことが動き出しています。登山ルートは真逆でも、同じ頂上まで辿り着いているという互いのリスペクトが根底にあるのかもしれないですね。
徳重:私も岩田さんの経営者としてのスピード感とバイタリティに圧倒されっぱなしです。意思決定が早いので、新しい取り組みを次々と実行できることにワクワクしています。
ソーシャルイシューを解決していると胸を張れる会社に
――最後に、5年後に描いているバイセルの展望についてお聞かせください。
岩田:5年後の目標として、売上規模4,000〜5,000億円、時価総額5,000億〜1兆円の規模を見据えています。なぜその景色を見たいのかというと、日本経済に対して影響力を持ちたいから。ソーシャルイシューを解決しているリユース事業に携わっていると、従業員が胸を張って伝えられるようになるためには、少なくともそれくらいの規模が必要だと考えています。リーディングカンパニーとして業界を牽引していきたいですね。
徳重:私が5年後の状態としてイメージしているのは、5大商社やリクルートなどと比較しても遜色ないほど、一人当たりの生み出す利益が大きく、優秀な人材を輩出できている会社です。そしてバイセルで働く社員全員が会社を通して、それぞれに合った自己実現を果たしている。それが本当の意味での人的資本経営だと思っています。
一人ひとりが高い使命感とオーナーシップを持ち、新しい価値を生み出していく。そんな「エクセレントカンパニー」を目指して、人材育成に力を注いでいきます。
そのためには、定量的成果も出していく必要がありますし、岩田さんとのダブルエンジンの意味が出てくると思います。最終的には、僕や岩田さんがいなくても成長し続ける組織になれると良いですね。
岩田:実は、2024年の年の瀬にふたりで飲みにいく約束をしています。そこで徳重さんから「バイセルにきてよかった。」と言ってもらって握手をしたい。まずはそこでひとつの答え合わせができるのではないでしょうか。バイセルの挑戦はまだまだこれからですが、必ず実現する未来に向かって、二人三脚で歩んでいきたいと思います。