シコメルフードテックが挑む「食品×ITテクノロジー」西原直良社長インタビュー

2019年創業の株式会社シコメルフードテック。「世界中の飲食店オーナー・食品会社をITテクノロジーで救う」を事業ビジョンとして、店舗の仕込みや発注をスマホのアプリからできるサービス「シコメル」などを提供している。2021年5月にミダスファンドが筆頭株主となり、ミダス企業群のひとつとして順調に成長を遂げているシコメルフードテック。今回は、西原直良社長に、シコメルフードテックのこれまでの歩みと、これから目指すところについて話を聞いた。

 

「日本の食にまつわる課題を解決したい」

 

――2002年、学生時代に有限会社西友フーズを立ち上げられたんですよね。

西原:大学を中退して、21歳の時に、韓国人の留学生と一緒に焼肉など韓国料理の専門卸である西友フーズを立ち上げました。元々私の父親が草履や靴の加工業をしていたのですが、父親から「事業をするなら食品がいい」と勧められていたことも一因です。最初は家の近くのコリアンタウンで買った食材をレストランに配達するなど、買い物代行のような仕事からスタートしました。

その後は自社で韓国から食材を輸入して、商品の卸もしていました。ただ、輸入卸だと100億円以上売上がないと、利益が出なかったんです。そこで、全くそれまで経験はありませんでしたが、食品工場を借り上げて焼肉食材の製造業を始めることにしました。当時の焼肉屋では、オリジナルの味を出したいと思っていても、たれやキムチを注文に応じて作ってくれる会社が他になかったんです。ですから、「ポジションを取ってしまえば成功する」と確信していました。最終的には、取引先が1500店舗にまで達しましたね。

 

――経験ゼロから、なぜそれが実現できたのでしょうか?

西原:私たちのコンペティターになる人というのは、個人商店で昔ながらの商売をしている人だけだったんです。当時の私のような元気な若者が一生懸命やれば、難しくなく勝てる構図は見えていました。

 

――そこで満足せず、シコメルフードテックを創業されたのはなぜですか?

西原:30歳になった頃、ある程度事業はうまく行っていたので、さまざまな事業にチャレンジしました。そこでは、「何が一番面白いか」を探しながら、多くの失敗も経験しました。そして、37歳になった時に創業20年を迎えましたが、改めて自社を見つめ直したら売上は10億円前後で、「全然大したことがない」と思ったんです。

それから、上場している全ての食品会社の時価総額と売上と利益を調べて、自分たちはどこを目指そうか改めて考え直してみました。すると、誰もが知っている食品会社でも、時価総額は200億円〜300億円くらいしかないことにハッと気がついたんです。当時、印刷で有名なラクスル株式会社の業績と時価総額をみてみると、売上は100億円でも時価総額が1000億円もありました。そこで、食品工場を連合にしてプラットフォーマーになり、日本の食の問題点を解決すれば、会社としても勝っていけるのではないかと思ったんです。そこで、食品工場3社、テック系企業1社、個人2者に入ってもらって立ち上げたのが、株式会社シコメルフードテックですね。

 

仕込み代行サービス「シコメル」

――シコメルフードテックの事業内容について教えてください。

西原:弊社では3つのサービスを展開しています。一つ目は「シコメル」で、飲食店向けに無料の受発注アプリを提供して、仕込みを代行するサービスのことです。飲食店はシコメルにレシピを預け、完成した仕込み品の味に納得できたら、アプリを通じて仕込み品を発注できます。それまで店舗で作っていた仕込み品が、衛生的に優れた衛生環境で作られ、賞味期限も長くなるので、とても喜んでいただいています。さらに、飲食店が他の店の仕込み品を、業務用として購入することもできます。

二つ目は「タノメルbyシコメル」です。昨年、緊急事態宣言が出た時に、飲食店の中には商品を通販で売る取り組みが顕著でした。ただし、通販となると、調理して梱包して送る必要があり、とても手間がかかります。それを全て代行するのがこのサービスです。三つ目は「タノメルクラファン」で、「タノメル」から仕込み品を発注している飲食店のクラファンを支援するサービスです。

 

――コロナ禍で、苦境に立たされた飲食店も多いですよね。

西原:そうですね。店に食べに来てもらえないから、通販に切り替えようという飲食店も多く、それまで私たちにレシピを預けてくれなかったようなシェフも、どんどん考えを変えています。日本中の誰もが、通販の可能性を感じていて、既存の店の売り上げだけではダメだと感じ始めている。「これを作ってください」という依頼は、非常に多く寄せられていますね。

 

――シコメルとしても、役に立てる場所が増えたのはやりがいありますね。

西原:難しい依頼が入ったら、実は私自身が工場に入って作ることもあるんです(笑)。自分になら絶対にできる確信があるので、「やってやろう」という気持ちが強いですね。

 

ミダスに携わってよかったこと

 

――ミダス企業群に参画したきっかけはなんですか?

西原:知り合いからの紹介です。元々ミダス企業群の存在は知っていましたが、知れば知るほど、自分よりも年下のメンバーがしっかりと実績を出されていることに感心しました。私もシコメルの目標を高いところに置いているので、頭を下げてでも入れてもらうべきだと思いました。

 

​​――ミダスグループに参画することで、どのようなメリットやシナジーが生まれましたか?

西原:ミダス企業群の他のメンバーにいつでも連絡が取れて、他のメンバー同士が、私たちを交えて課題解決を一緒にしてくださるのは、何にも変えがたいです。私が今悩んでいる問題を、企業群の他のCEOは数年前に経験していたりするので、知恵を貸してもらえます。他でこのような経験は、きっとできないと思いますね。

事業規模を拡大するにつれて、これまで経験したことがないことに1週間に1度くらいは遭遇しています。そのうち、半分は自社で解決できるよう頑張るけれど、もう半分はミダス企業群のいろいろな経営者仲間に相談させてもらっています。ほとんどのみなさんが答えを持っているので、それを聞いて自社に落とし込むつもりです。

 

「今日の夜ご飯は自宅で有名店の味」を当たり前にしたい

――採用については、どのように行っていますか?

西原:シコメルを立ち上げた当時は認知度が低かったので、私自身の繋がりを通じて採用も行っていました。テック系や食品業界を知っている人はほぼいない状態からのスタートだったんです。ただ、最近では資金調達を行うなどして、認知度も上がってきたので、紹介会社からオファーが来るようになってきました。

シコメルでは、女性幹部登用にも力を入れていて、現在2人がチャレンジしてくれています。もともと私自身は性別の垣根が低く、「男だから」「女だから」という考えはありません。西友フーズでは7割が女性社員だったので、シコメルでも同様に女性登用に力を入れています。女性の幹部登用にも、今後積極的に取り組みたいです。

 

――シコメルフードテックの今後の展望を教えてください。

西原:現在、新たな取り組みとして、日本中の食品工場とレストランが利用できるアプリの開発を進めています。シコメルを介して、全国で受注発注が無料でできるようになれば、日本中の食が豊かになると思うんです。レストランにおすすめの商品をリコメンドしたり、レストラン側が一番売りたい商品をトップに表示させたりと、さまざまな活用方法が可能です。また、レストランに仕込み品を販売するだけではなく、月額制のサービス導入も検討しています。有名店や広く店舗を展開している飲食店などと取引を重ねることで、食品工場のデータ解析に力を入れていきたいと思っています。

そして、最終的には数万店舗からレシピをもらって、10数万点の仕込み品を作っている状態を目指しています。そして、ゆくゆくは個人にも仕込み品を買ってもらえるようにしたい。シコメルで仕込み品を購入していただき、「今日の夜ご飯はあの有名店の仕込み品を使ったら、そのままの味が自宅で楽しめるね」と言っていただきたいですね。

 

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