M&Aを繰り返し着実に拡大するGENDA。M&Aとファイナンスの鍵を握る同社CFO・渡邊太樹氏が語るゲームセンター市場の魅力とGENDAの強みとは

商業銀行、投資銀行を経て2021年6月にGENDAに加わった株式会社GENDA 執行役員CFO 渡邊太樹氏。GENDAとの出会いやその決め手、事業の魅力や今後の展望についてお話を伺いました。

◆プロフィール

株式会社GENDA 執行役員CFO
渡邊太樹(わたなべ・たいじゅ)氏

一橋大学商学部経営学科卒。
2011年4月、株式会社みずほコーポレート銀行(現・株式会社みずほ銀行)入行。本店営業部にて、事業法人のリレーションシップ・マネージャーを担当。
2015年4月、ゴールドマン・サックス証券株式会社入社。投資銀行部門アドバイザリー・グループのヴァイス・プレジデントとして、主にM&Aの助言業務及び株式・債券による資金調達関連業務に従事。エンターテイメント業界の案件を含む、20件超の案件発表を経験。
2021年6月より現職。

 

「出会ってしまいましたね!」という会長の一言が決め手となり、金融業界からエンターテインメント業界へと舵を切る

――銀行、証券会社出身というご経歴ですが、金融業界に強く魅力を感じたのはいつ頃でしたか。

大学2年生で学んだ財務管理論という授業との出会いが大きかったと思います。いわゆるコーポレート・ファイナンスと呼ばれるもので、可能な限り資金調達のコストを低くして可能な限り高い利回りで運用することを目指す理論なのですが、効率を徹底重視する側面があり、「恐らく正解に近いであろう意思決定」が定量的に示されることに惹かれました。

 

――金融業界からエンターテインメント業界への転職は、それまでのキャリアから考えると大きな転換点となりました。GENDA入社の決め手はどこにあったのでしょうか。

学生時代からUFOキャッチャーは好きだったので、まずはお話を聞くだけという程度の軽い気持ちで、前職出身であったGENDA代表取締役の申 真衣の話を伺いました。

初めてお話を伺うまでは、ゲームセンター事業は成長性が高くないと思っていましたが、実際には市場が5年連続で成長を継続していたこと、コロナで一時的にPL自体は痛んでいたものの、予想以上に底堅い営業キャッシュフローを生み出していること、一方でメンテナンスCAPEX(設備投資)が大きくなく、結果的に潤沢なフリーキャッシュフロー(企業が自由に使える現金)を創出していることに驚きました。

ビジネスの構造も、証券会社時代に自分が案件を担当したエンターテインメント企業に似ていて親近感を感じました。固定費偏重型の限界利益率が高いビジネスモデルで、損益分岐点を超えると急速にマージンが改善する。そういったビジネスモデルを、株式投資家及び債券投資家にどのようにアピールすればいいかを考えるのに相当な時間を費やしていた経験があったため、ゲームセンターを主力とするGENDAで自分が出せる付加価値を具体的にイメ―ジすることができました。

その後、代表取締役会長の片岡 尚にも会いました。直近まで世界一のゲームセンターの東証一部上場企業であるイオンファンタジーの社長を勤められており、ゲームセンターに留まらないエンターテインメント事業への情熱はもちろん、オーガニック(既存の経営資源を利用した成長)・インオーガニック(他社との提携やM&Aを通じた成長)を組み合わせた今後の経営方針における数字感や合理性に大変感銘を受けました。

エクイティファイナンスによる資金調達を重ねることが必要な一般的なスタートアップと異なり、GENDAは既に潤沢なキャッシュフローが出ており、銀行を含む債券投資家との取引も既に実績があったことや、そのキャッシュフローを担保としたM&A、EPS(1株当たり利益)を中心とした株主への規律付けのアピール等、商業銀行と投資銀行両方の経験が活かせるという可能性を感じました。

最後に片岡から、「出会ってしまいましたね!」と言われたとき、それが自分の中でも直観的に腹落ちしたので、入社への思いが確信に変わっていきました。

 

「実は」魅力的なゲームセンター市場。中でもオールジャパン経営、M&A/ファイナンス、DXの3軸がGENDAの強み

――ゲームセンター市場の現状はコロナ禍でどのように変化されたのでしょうか。

国内のゲームセンター市場は、コロナ前まで5年連続で右肩上がりの成長を続け、5,400億円まで拡大しています。これは同年の映画市場の約2倍、eスポーツ市場の35倍以上の規模となっています。

その成長を牽引しているのが、プライズゲーム(景品を獲得することを目的としたゲーム)、いわゆるUFOキャッチャーです。プライズゲームは市場の6割超を占めており、国内市場全体でのプライズゲーム売上はコロナ前までの5年で1.7倍と、爆発的に需要を伸ばしています。

これは少し一般的な感覚と異なっているのではないかと思いますが、数値は事実です。その背景には、世界的な日本アニメの人気と、昨今登場した複数の動画ストリーミングサービスが影響していると我々は考えています。

過去の日本アニメというのは、たとえば「平日の夕方、テレビの前に日本で一定時間座っていられる人が、1日に1話だけ」しか楽しめないコンテンツでした。ところがAmazon PrimeやNetflix等の動画ストリーミングサービスが登場したことによって、様々な制約から解放され、世界中でいつでもどこでも誰でも、そして何度でも何話でも見られるようになりました。

また、これまでのテレビアニメの常識では、例えば「ワンピース」のような超人気コンテンツが既に放映されている場合、この視聴率を超えることが見込めない限り、この枠に新たな番組が参入することはできませんでした。ところが、動画ストリーミングサービスでは、ニッチなアニメであっても、そのような作品と並列で並ぶことが可能となり、好みの分化が進みました。

日本のアニメが今や世界中で親しまれているのは想像に難くないかと思います。いまやアニメは、子供だけではなく大人が自分の趣味の一環として楽しむ時代となり、世界的に市民権を得たと言えると思います。

このアニメ人気とGENDAとの関係性に立ち返ると、アニメの世界を現実世界で体験する方法として、フィギュアやぬいぐるみといったキャラクター商品が有力な手段となっています。キャラクター商品への需要に対して、供給チャネルを担っているのがゲームセンターだと考えています。プライズゲームは、そもそものゲーム性に加え、お客様がアニメのキャラクター商品が欲しいという目的意識を持っていらして頂く場所になったのだと我々は考えております。

 

――アニメファンのお客様が、キャラクター商品のために、わざわざゲームセンターのクレーンゲームをプレイする理由は何でしょうか?

コアなファンの方々は、高価なフィギュアを購入するために専門販売店を訪れるようですが、今需要が拡大しているのは、流行りのアニメを見たライトなファン層です。そこに、もともとのプライズゲームのゲーム性が加わり、お客様がただ購入するのではない、キャラクター商品×ゲーム性という魅力的な体験価値を提供できている、ということだと思います。

今はインスタグラムでフィギュアをとても美しく撮影して投稿するインフルエンサーなどもたくさんいらっしゃいます。写真は言語の壁を超えていくので、世界中からフォロワーや「いいね」がつくことで「また取りに行きたい」と感じるようになりますし、そのインスタグラムをご覧になっているフォロワーさんも「自分も取りに行きたい」と考えてプライズゲームに挑戦してくださっているのだと我々は考えております。

 

――競合他社と比較した場合のGENDAの強みについて改めて教えてください。

まず、ゲームセンター業界トップ5社のうち、4社の社長及び経営幹部がGENDAに在籍しており、オールジャパンでの経営ができております。特にM&Aを行った初年度では、ショッピングモールにあるゲームセンターにおける経営改善が大きく奏功し、目標を大きく上回る結果を出すことができました。

また、GENDAは、M&Aやファイナンスに詳しいプロフェッショナル陣営を社内に擁しており、ゲームセンター業界を中心としたM&A、及びそれに対する資金調達において、EPS及び株式価値の最大化を企図した規律の効いたファイナンシングを継続しております。

加えて、ヤフーやグリー、ZOZOといった名だたる企業の最前線で活躍されてきたエンジニアが多数在籍しています。テクノロジーのエキスパート人材によって、これまで業界では難しかったようなDXを進めております。

 

――右肩上がりを続けるGENDA。今後の展開について教えてください。

GENDAとしては、「世界一のエンターテイメント企業を目指す」というのが目標です。足元では、最も得意とするゲームセンター業界で経営基盤を築くことに成功し、堅調なPLとキャッシュフローを創出する体制が完成しました。

私自身としては、既存事業から創出されるキャッシュフローに適切なレバレッジを掛け、債権者及び株主の目線からも規律の効いた資金調達手法を用いて、ゲームセンター業界を中心としたM&Aを主戦略として、GENDAの株式価値の最大化に努めていきたいと思っています。

M&A後のPMI(M&A後の統合効果最大化を目指すプロセス)では、弊社の業界屈指のエンジニアチームと共にDXを推し進め、従来型のオーガニックグロースの枠組みを超えた新たな価値を創出していきたいと考えています。

長期的にも、ファイナンス、M&A、PMIにスピード感を持って取り組んでいきたいです。

 

――ありがとうございました。

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