“隠れたネクストユニコーン”イングリウッドが副社長・CGOを迎えた理由 イングリウッド黒川社長×三好副社長対談(前編)

小売に特化したDXソリューションプロバイダーとしてB2C、B2B共に伸ばし続けてきたイングリウッド。資金調達をほとんどしていなかったが、調達時の時価総額が450億となり注目を集めた。そんな中、新たな経営陣として2022年7月に三好悠介取締役副社長兼CGOが参画。そこで今回は前後編にわたって三好氏と黒川隆介代表取締役社長兼CEOの対談をお届けします。前編は黒川氏、三好氏のこれまでのあゆみや三好氏が入社した経緯、さらに2人の意外な共通点についてです。

◆プロフィール

株式会社イングリウッド 代表取締役社長兼CEO
黒川 隆介(くろかわ・りゅうすけ)氏

大学卒業後、アメリカ製品のインポート事業をスタート。2005年に有限会社イングリウッドを設立し、取締役社長となる。14年、株式会社イングリウッドに組織変更し、現職に就任。アメリカのDEXTERNYC,CO.,LTD.CEOも兼任。データテクノロジー事業、AI戦略事業、セールス・ライセンス事業を3本柱に事業を展開する。

 

株式会社イングリウッド 取締役副社長兼CGO
三好 悠介(みよし・ゆうすけ)氏

2006年株式会社リクルート入社。営業、新規事業開発、マネジャーを経て、15年リフォーム・領域横断推進部部長、17年賃貸営業統括部部長を務め、各事業のターンアラウンドを推進。19年株式会社リクルート住まいカンパニー執行役員、20年より株式会社リクルートにてディビジョン長を務め、各事業・組織の成長を牽引。22年7月株式会社イングリウッド取締役副社長兼CGO就任。

 

「周りの人の幸せに貢献する」人たちと仕事がしたい

――イングリウッドはベンチャー企業らしからぬ売上、利益を上げていますが、資金調達をほとんどしていません。そのためメディアに露出することも少なかったかと思います。どのような経営方針だったのでしょうか?

黒川 弊社は基本的に黒字経営を続けており、自社で上げた利益を次の投資に回すというスタイルでやってきました。私が就職せずに始めた会社なので、ここまで色々な苦労はありましたが、ここまでの規模になり、業界への影響力も高まりつつあることは良かったと思っています。

数年前にプライベートカンパニーのまま進むのか、株式公開してより社会への影響力を高めていくのか考える機会があり、上場準備に入りました。上場しなくても利益を出し続け、成長し続けることもできるのですが、よりインパクトある投資を行うために意思決定しました。個人的にはあまりメディアに出るようなことは好きではないです。(笑)

 

――どのような経緯で起業し、ここまで会社を大きくされたのでしょうか?

黒川 私は高校まで野球推薦で進学しており、プロ野球選手になってひとりで育ててくれた母親に親孝行しようと思っていました。ところが高校生の時にプロ野球選手になるよりビジネスで成功した方が良いと気づき、野球をやめてしまいました。大学ではまずは人が嫌がる仕事をして社会を知ろうと思い、トイレを地下に掘る仕事から道のガムを取り除く仕事まで経験しました。卒業後、当時はろくに英語も話せないまま、アメリカに渡りました。全米を車で回る中でスニーカーを日本に輸出する仕事に出会い、今の会社に繋がっています。日本に帰ってきてからは東大和市の家賃4万円のアパートで事業を始め、EC黎明期に徹底的に研究をして爆発的に売りました。その後、業界で名前が知られるようになり、B2Bのコンサルティングで事業を拡大しました。

そのような経緯ですので、同世代と比べて相当な胆力は身に付いたと思います。また、常に誰からでも何でも学ぼうという姿勢は常に大切にしていて、昔から新しく仲間に加わってくれたメンバーにも色々教えてほしいと言い続けていました。

 

――漫画のようなストーリーですね。なぜチャンスをつかめてきたと思いますか?

黒川 自分の特徴は「夢も語るが、コツコツと努力できること」だと思います。そして何より仲間を大切にしています。今でも地元の友人とも深く付き合っていますし、会社を興してからは自分を信じて入ってくれた仲間は絶対に裏切らないと思って努力し続けてきました。起業したいという理由でイングリウッドを離れるメンバーにはその後も支援をし続けていたりもします。

 

――イングリウッドを評価する声として「家庭的で温かい雰囲気」だとよく聞きます。ここ数年で従業員数が大幅に増えていますが、そのカルチャーを維持するためにどんなことを意識していますか。

黒川 規模を拡大する中で、以前と比べて従業員とのコミュニケーションが減ってしまったという自覚はあります。組織規模が大きくなると仕方のないことかもしれません。でも毎月入ってくる新しい社員には、「周りの人の幸せに貢献する」という私たちのバリューを自分の口からしっかり伝えるようにしています。

人は不利な状況に置かれると、誰かのことを悪く言いがちになります。でも人を後ろから刺すような行為をやる人は、仲間ではないと思う。自分の意見をしっかり伝えて、話し合って解決するのがプロフェッショナルです。

仕事に熱意がある人に来てほしいのはもちろんですが、性格が良いと感じた人を採用したいと考えています。

 

若手、ベテランがそれぞれ輝くステージをつくることが経営陣の役割

――三好さんはリクルートを経て、2022年8月にイングリウッドに参画されました。入社のきっかけを教えてください。

三好 黒川と共通の知人だった、経営者の先輩の紹介です。過去にも何度か転職のお誘いがありましたが、仕事が楽しくて辞めるつもりは全くなく、それでも一応話だけは聞くようにしていました。そうした状況で黒川に会ったのが2022年の年始。失礼ながら当時はイングリウッドの社名も知らなかったのですが、先輩への義理もあったので会うだけは会っておこうかと。

黒川 そんな感じでしたね。三好が何社も魅力的なオファーを受けながら断り続けていたことは知っていたので、想定通りでしたが。(笑)

三好 ところが義理で来たつもりが、一回の面談で黒川の人柄や考え方に魅了されてしまいました。経営方針と社風も共感できる面が多く、成長戦略を一緒に実現していきたいと思いました。最後は「黒川になら、最悪騙されたとしても後悔はない」とまで考えました。(笑)

私も黒川と同じで、仲間を大切にしたいという気持ちを強く持っています。大学まで続けていたアメフト部の仲間や、前職の仲間も一生の付き合いだと思いますし、常に刺激をもらっています。ちょっと変わっているかもしれませんが、私は仕事が好きで会社の仲間に会うのが毎日楽しみです。だからこそ、その時間をいい仲間と一緒に過ごしたいんです。

 

――リクルートも社風、人柄の良さに定評があります。

三好 リクルートは本当に良い企業で、もう一度学生時代に戻って就職活動したとしても迷わず入社したいと思います。タイミングも良かったと思っていて、入社した頃はまだ負債も残っていたような時期で、入社を親に反対されました(笑)。ただ、その後上場、M&A、グローバル比率ほぼ0から50%超えと変革を繰り返し、退職するころには時価総額10兆円を超えていました。

その間にリーマンショック、東日本大震災、パンデミックといった危機も経験し、私自身も厳しい経験や判断の中で胆力を身につけてきたと思います。私は当時最年少で部長、執行役員と経験させてもらっていましたが、同期に取締役もいましたし、起業して上場している経営者も複数いました。自分がすごいと思うような環境では全くなく、本当に恵まれていたと思います。

 

――大企業だからこそ苦労したことは?

三好 プロモーションタイミングが速かったので、昔の上司が部下になるといったケースもよくありました。リクルートは年齢や役職にこだわらず、事業を伸ばすために合理的な判断をしていくという文化でしたが、全く気にならなかったとは言えません。また、いわゆる落下傘人事で事業をターンアラウンドしなければならないという経験もありました。いずれのケースも目的に対して合理的に判断し、徹底的に実行していくとともに、人としてのリスペクトが何よりも大切だったと思います。どんな組織や人にもバックボーンがあり、そこへの理解とリスペクトを持った上で、進化のために決めるべきことを決める。それから実行していくというプロセスでした。イングリウッドでも多様なメンバーのバックボーンがあり、その理解に努めています。

黒川 三好は入社早々に圧倒的なコミュニケーション量と傾聴力で、既に私も知らない現場の声や課題をキャッチアップしてくれていて、社内からも変革への期待が高いです。

三好 イングリウッドはドラマにできるような興味深い歴史があり、勢いのある若手から業界を知り尽くしたベテランまで多様性に富んだメンバー構成です。メンバーを知れば知るほどワクワクしています。ただこの数年で組織が急拡大してきているので制度面でチューニングが必要だったり、イングリウッドの良いカルチャーを残すために工夫しなければならない点も見えてきています。

私個人としては「三好となら一緒にがんばれる」と思ってもらえるように、これまでの経験を活かしながら事業を伸ばすために何でもしていきたいと思います。業界知見が深い人にはその経験を、若い世代にはポテンシャルを活かし切るステージをつくる。それが経営陣のやるべきことだと考えています。

 

――経歴は違えど、スポーツマンで人情に厚く、自分自身が徹底的に努力をする。黒川さんと三好さんにはどこか似たところがあるような気がします。

黒川 私もそう思います。私は事業を立ち上げ、グロースさせることは得意ですが、マネジメントにおいては不得手もあると自覚しています。三好はどんなメンバーからも信頼を得て、大規模な組織をマネジメントすることに長けています。それぞれの強みを活かしながら、イングリウッドを次の成長ステージに一気に進めていけることを三好と出会って確信できました。それが副社長・CGOを迎え入れた理由です。

 

後編(次週公開予定)では、黒川さん、三好さんが考える勝ち続けるためのスタイル、そしてイングリウッドの更なる成長戦略について伺います。

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