AViCの社外取締役に就任。「最大の強みは人材」長利一心氏インタビュー

2022年12月、WEBマーケティング事業、メディア開発・運営事業を行うAViCの社外取締役に就任した長利一心氏。現職のメルカリで経営戦略をはじめ財務やリスクコンプラまでを担ったのち、Marketplace COOに就任した同氏は、AViCにさらなる発展の可能性を見出し同社の経営に携わることにしたと言います。右肩上がりの成長を続けるAViCの核となる人材の魅力と今後のビジョンについて伺いました。

 

◆プロフィール

株式会社AViC 社外取締役
長利一心(おさり・かずし)氏

京都大学大学院航空宇宙工学専攻修了。戦略コンサルのベイン・アンド・カンパニー シニアマネージャー、株式会社セガゲームス社長室長を経て、2018年3月メルカリ参画。ファイナンスIRグループ、リスク・コンプライアンスグループ、ガバナンスチームのコーポレート各所でメカニズム化やプロジェクトを推進したのち、2019年7月より経営戦略室ディレクター。2020年2月よりメルペイの取締役VPof Corporate and Complianceにて財務、経営企画、法務、コンプラ、リスクを管掌。2022年1月、株式会社メルカリ執行役員 Marketplace COO就任。

 

明確な”事業の核”をグロースさせる

――AViCの社外取締役に就任される前から同社の経営戦略のアドバイスをされていらっしゃったのですよね。

ええ。2022年6月から業務委託という形で週に1度、戦略会議に出席して同社の市原創吾社長や事業部長らと事業の方向性に関する議論を通じて、課題に対する対策を一緒に考えていました。

その後、業務委託契約を延長するかどうかのタイミングで、市原社長から「いっそ社外取締役としてよりコミットメントを深めてほしい」とおっしゃっていただいたので、喜んでお受けし、同年12月、正式に就任いたしました。

 

――AViCに参画されるようになったきっかけを教えてください。

そもそもは、共通の知人からミダスをご紹介いただきお話させてもらったのが始まりです。ミダスの構想をお聞かせいただくうちに、ミダスの企業群に対するフォローアップを依頼されました。

数ある企業群のなかでも、AViCで事業計画のさらなる進化に力を貸してほしいというお話でした。

 

――戦略コンサルのベイン・アンド・カンパニーでのコンサルティング経験や、メルカリにおける全方位での経営手腕を見込まれたのですね。長利さんとしても、Webマーケやメディア開発・運営というAViCの事業は、親和性を抱かれたのでしょうか。

そうですね。当初、お声かけいただいた時点で3〜4社ほど候補があったそうなのですが、真っ先に提示されたのがAViCでした。

例えば、ヘルスケアはその時点で候補から外されますしね。さらに、さまざまな事業開発を手広く展開しているという企業よりは、比較的事業の核が決まっていて、それをどう伸ばしたりコントロールするか、という視点で絞られていたのではないでしょうか。

 

――AViC側からはどのような反応でしたか?

後日談として市原社長からお聞きしたのですが、こんなに経験豊富な方にご協力していただけるありがたい機会をお断りする理由がない」と即決されたそうで、ありがたいお話です。

市原社長も最初は様子を見つつだったと思います。僕自身もマーケティグに強いというよりは、ずっと経営企画の畑を主に担当していましたので、事業のコアが明確であり、それをいかにグロースさせるか、という視点で戦略を立てると考えたときに、AViCの事業ステージとフィットしたのだと思いますね。

 

――業務委託としてスタートされたアドバイザリー業務はどのように進められたのですか?

毎週水曜の夜に定期的なミーティングを開催して、さまざまなトピックを持ち込んでもらうというスタイルなのですが、最初は事業の全容を把握させていただきつつ課題を絞り込んでいきました。

売上を伸ばすための問題点、収益性を維持するために必要なこと、サービスの質を維持するための人材確保についてなど、一通りヒアリングを実施しました。

結果、市原社長をはじめ、シニアメンバーが業界を横断してクライアントを獲得できており、現状の売上は最優先課題ではないと判断しました。

一方、「案件ごとに収益性にばらつきがある気がする」「収益性をさらに成長させるためにどれくらいの人材が必要なのかが不明瞭」という課題が見つかりました。

――課題に対して実際にどのような対策を講じられたのですか?

まず、AViCが抱えている広告案件を全て並べて、収益性のばらつき具合や妥当な目標値を具体的な数値にして可視化しました。数値化すれば、次のステップとして必要な人材の数や質も見えてきますので、採用計画や育成計画もより具体性を持たせて作成できます。それをもとに実際の採用活動に落とし込みました。

ここまでの流れを最初の数ヶ月で行いました。その後は、SEO事業も同じように収益性と人材確保・育成にポイントを絞って改善できました。課題の洗い出しと対策といった”事業診断”を市原社長を含めて進められたので、年末にはAViCとしての優先順位づけがある程度大きなレベルでできました。

以降は、景気の落ち込みによるセールス案件のトラッキングやリカバリーのやり方や人事制度など、個別発生する事案について議論を行うという進め方に移行してきていますので、時間の使い方が変わってきているという実感です。

 

AViCの強みはミドルマーケットへのターゲティング

――長利さんから見たAViCの強みを教えてください。

2つあります。ひとつは、大手でもスモールでもない”ミドルマーケット”を対象としている点。もうひとつは、クライアントに対して必ず成果を上げるという点。具体的には、高い費用対効果でのCPA(Cost Per Action、顧客獲得単価)を達成するということですね。

上記の2点により、一度クライアントになってもらえば競合環境にはさらされず右肩上がりに成長できているというのが現状です。これを達成できている背景として、市原社長をはじめ事業部長陣がこれまでの経験を活かして、一気通貫に高水準の業務を担うことができるチームづくりができているという点が大きい。

特に市原社長は過去の運用経験を元に、広告の出向先であるGoogleやFacebookのアルゴリズムをしっかり把握しています。しかも、それをしっかりとメンバーに伝承できているというのが高いパフォーマンスを維持できている所以だと思いますね。AViCの強みはそういう意味で、人材に集約されているとも言えます。

 

――Webマーケティング業界はまさに群雄割拠で、人海戦術で対抗できる世界でもなく、またSEOルールなども刻々と変化するなかで最適解を見つけるのは難しいイメージがあります。そのなかで市原社長をはじめ「負けないAViC」を維持できるのはどうしてでしょうか。

「普通にやるべきことをやっていない会社が多い」と、市原社長は話していますね。僕が思うに、先ほどお話ししたように大手のエースが当てがわれず、中小では手の届かない”ミドルマーケット”をターゲットとしている点がミソなのではないでしょうか。

ミドルマーケットでは、サイバーエージェントのようなトップ企業でトップタレントだった市原社長たちが行っていたような戦略にはたどり着けていないはずなので、そこにリーチしながら部下を育てている点に「勝ちの源泉」があるのではないかと分析しています。

実はこれは強みでもあり、課題でもあります。トップラインは非常に高水準のフォーミュラを身につけているのですが、今後も成長を維持するにはそれに匹敵するほどの高いレベルまでの人材育成を続けなければならない。「負けないAViC」でい続けるためにも、フォーミュラをいかに「型」として伝承していくか、今後も、人材の獲得と育成に関しては議論を重ねていきます。

 

――ありがとうございました。

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