【ミダス財団が見据える未来】少年期の夢が世界を変えるきっかけをつくった 吉村英毅代表理事インタビュー

世界中の貧困の連鎖を断ち切り、人々の人生の選択肢を広げてより良い社会をつくりたい——。そんな思いから設立されたミダス財団。実はその構想は20年以上前からありました。そのミダス財団が設立された目的や具体的な支援内容に迫ります。第1回は、財団の代表理事でミダスキャピタル代表パートナーの吉村英毅氏に聞きました。「ビジネスと社会貢献活動を両立させるのが夢だった」と語る、吉村氏の原点とは?

 

◆プロフィール

株式会社ミダスキャピタル 代表パートナー
吉村英毅(よしむら・ひでき)氏

東京大学経済学部卒業。2003年大学在学中に株式会社Valcomを創業。2007年株式会社エアトリを共同創業し代表取締役社長に就任(現在は退任) 。 2016年株式会社エアトリを東証マザーズに、2017年東証1部に上場。エアトリグループ会社の株式会社まぐまぐ、株式会社ハイブリッドテクノロジーズをそれぞれジャスダック、マザーズに上場。2017年株式会社ミダスキャピタルを創業。同年ミダスキャピタル第1号案件として株式会社BuySell Technologiesを買収。後に取締役会長に就任し、2019年東証マザーズ上場。2022年ミダス企業群の株式会社AViCが東証グロース上場。

 

ビジネスを繁栄させるだけでなく、世の中に対する価値を提供することに意義がある

――吉村さんは財団の構想を中学生時代からお持ちだったと伺いました。

伝記を読んだのをきっかけに、ある2人の人物の生き方に心を奪われました。一人はマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ。幼少期から漠然と「社会的に影響力を持つ人物になりたい」と思い、政治家や総理大臣に憧れた時期もありました。でもビル・ゲイツの存在を知って、「自分たちのビジネスを世界的に広げていくことは、一国の元首よりも大きな影響力を持つと言えるのではないか」と考えるようになりました。

ゲイツはハーバード大学在学中にマイクロソフトを立ち上げました。それなら自分も東大に行って、起業しよう。それが進学先を決めた大きなきっかけです。在学中も先輩のビジネスを手伝いながらビジネスについて学び、20歳のときにエアトリを創業しました。

同じように憧れたのが、グラミン銀行を創設したムハマド・ユヌスです。経済学者で実業家でもある彼がバングラデシュで始めた、貧困層を対象にした低金利の無担保融資(マイクロクレジット)によって、多くの人々が絶対的貧困から抜け出しました。国連が解決できなかった問題を、グラミン銀行が解決したのです。さらにその後、銀行だけでなく、電話会社やソフトウエア開発などにも手を広げ、「グラミンファミリー」と呼ばれるまでに成長しました。

一つのモデルで社会課題を解決しつつ、ビジネスもどんどん拡大していくことは簡単なことではありません。ビジネスと社会課題の解決を両軸にする前に、とにかくビジネスを大きくして、その結果として生まれた利潤を純然たる社会貢献活動に振り分けていこう。そう決めました。

 

――エアトリ創業直後ではなく、ミダスキャピタル設立をきっかけに財団を立ち上げたのは、そうした背景があったからでしょうか。

エアトリが上場したこともあり、上場企業として財団を運営するのが難しかったという事情もあります。一方で、ミダスキャピタルは自己資本のみのPEファンドです。これなら自分でどうやって運営していくかを決められます。そこでミダスキャピタル全体の売り上げの10%、さらに私個人から年間1億円の寄付をすることで、財団を運営しようと決めたのです。

財団を立ち上げる際に意識したことがあります。それは「どんな会社であっても、100年以上強い会社であり続けることはできない」ということ。仮に100年間強い会社であったとしても、やがて残るのは「その会社や関係者が、100年間金銭的に潤っていた」という事実だけ。なくなっても特に誰も困らない。それはとても寂しいことではないでしょうか。ビジネスを繁栄させるだけでなく、世の中に対する価値を提供していく。それこそに意義がある。ミダスキャピタルとして、やる価値はあると考えました。

2040年までに1億人の人生にポジティブな影響を与えたい

――財団を立ち上げる際の、周囲の反応はいかがでしたか?

学生時代から「いつか財団を立ち上げたい」と口にしていたものの、理想論と思っていた人もいたでしょう。でも「吉村ならやれる」と信じて応援してくれる人もいました。4年前に立ち上げた際は身近な人を中心にボランティアで運営に当たりました。事務局は妻で、今も日本における活動は妻が中心になってくれています。彼女も昔から社会活動に高い関心を持っていて、子育てのかたわら、かなりの時間を財団に割いてくれています。

立ち上げ時にみんなで議論し、「世界中から貧困の連鎖を断ち切ること」という財団のビジョンを決めました。2025年までに1万人、2030年までに100万人、2040年までに1億人の人生にポジティブな影響を与えることを目標にしています。2022年は日本において貧困状態における子どものサポートとして、子ども食堂の支援にも取り組みました。また海外ではベトナムで学校建設も行いました。

 

――「ベトナム学校建設プロジェクト」として、貧困地域の小学校を建て替えに取り組んでいます。世界の貧困の中でも、ベトナムに着目したきっかけを教えてください。

2011年にエアトリのグループ会社をベトナムで立ち上げたことがきっかけになりました。私も何度も現地に足を運んでいたので、現地の現状を耳にする機会が数多くありました。ベトナムの総人口約1億人のうち、10%が貧困層と言われており、特に山間部、少数民族の多いエリアに集中しています。社会主義国ということもあって教師は国から派遣されるのですが、学校自体は吹きさらしで、勉強に集中できる環境ではないようでした。

また、学校があってもさまざまな事情で通えない子もいます。小学校につながるただ一つの橋が大雨が降るとすぐに使えなくなる、遠くの川まで水をくみにいかなければならない、寒いのに着るものがないなど、地域によって困っていることが異なります。そこで現地の状況をヒアリングし、北部のSon La省にあるNa Khoang Elementary Schoolの建設に着手することになりました。

ベトナム北部の貧困地帯の小学校の様子。校舎は吹きさらしで、雨が降ると授業を受けることもままならない環境だった

 

――第2回では、ベトナムの学校建設にあたって具体的に意識したことや、建設の力になってくれたある人物との出会いなどについて紹介します。

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