飲食店と仕込み済み食品工場を結ぶ「シコメル」、ネイリストとユーザーをマッチングする「Nailie」など、クライアントと共にCtoC・BtoBにおける多領域でのマッチングプロダクトを生み出しているC2C PTE LTD.。システム開発からビジネスモデルの戦略設計、マーケティング、資金調達、業務コンサルティングまで包括的な支援を行っているのが特徴です。現在、シンガポール、ベトナム、日本の3拠点で事業を推進。2030年までに時価総額1兆円企業への飛躍を目指す同社の社風や事業のグローバル展開について、創業者の薛悠司氏、村上英夫氏、そして2021年に取締役兼CFOに就任した羽嶋優氏にお話を伺いました。
◆プロフィール
C2C PTE.LTD. Founder CEO
薛悠司(そる・ゆさ)氏
慶應義塾大学法学部政治学科在学中に有限会社VALCOM(現株式会社エアトリ)の立ち上げに参画。その後、2005年株式会社リクルートに入社。2011年、Soltec Vietnam Company社を立ち上げ、代表取締役に就任。2012年ITオフショア開発事業のEVOLABLE ASIA CO., LTD.(ベトナム法人)を創業し、代表取締役に就任。東南アジア最大の日系オフショア開発企業に成長させる。2014年ソルテックグループの統括法人としてSOLTEC INVESTMENTS PTE.LTD. (シンガポール法人)を設立し代表取締役に就任。2017年、ダイレクトマッチングに特化したプラットフォーム開発事業のC2C PTE.LTD.を創業し、代表に就任。2021年、筆頭株主である株式会社ハイブリッドテクノロジーズ(2016年設立・Evolable Asia Co., Ltd.より事業譲受)がベトナム人経営者率いるスタートアップ企業として初めて東証マザーズに上場。
C2C PTE.LTD. Founder CTO
村上英夫(むらかみ・ひでお)氏
九州大学大学院人間環境学研究科卒業。在学時に犬小屋建築事業を手掛ける。2000年企業のIT課題を解決する株式会社サハラ(現株式会社パイプドビッツ)を設立、代表取締役に就任。同年、Webサイト制作・運営などを手がける株式会社ハイデザインズを設立し、代表取締役就任。2008年株式会社Grasの取締役就任。2018年、CtoCサービス開発コンサルティング事業のstoooc株式会社を立ち上げ、CEOに就任。2017年薛悠司氏とともにC2C PTE.LTD.を創業し、CTOに就任。
C2C PTE.LTD. CFO
羽嶋優(はじま・ゆう)氏
京都大学法学部卒業。2007年新日本監査法人(現・新日本有限責任監査法人)入所。国際部にて外資系企業及び総合商社の法定監査に従事。その後UBS証券株式調査部、デロイトトーマツフィナンシャルアドバイザリー株式会社を経て、2015年よりアント・キャピタル・パートナーズ株式会社にてプライベート・エクイティ投資業務に従事。2021年C2C PTE LTD.に参画。
世界3拠点をまたぐグローバル体制でプロダクトを開発
左から、C2C PTE.LTD. Founder CEO 薛悠司氏、C2C PTE.LTD. Founder CTO 村上英夫氏、C2C PTE.LTD. CFO 羽嶋優氏
――まずは、C2Cでの皆さんの役割について教えてください
薛 当社は「シコメル」「Nailie」などさまざまな業種のマッチングアプリの開発を手掛けていますが、私はCEOとして全体の総括をしながら、主にマーケティングや営業といったビジネスサイドをマネジメントしています。
村上 僕はCTOとして、約80名のエンジニアが在籍するベトナムの開発拠点の統括を担当しております。プロダクト開発がメインのミッションとなり、プラットフォームの基盤づくりを行っています。
羽嶋 私はCFOとして、C2Cの経営管理体制の構築、資金調達、IPO準備などを手掛けています。また、当社の顧客はスタートアップの企業が多く、顧客側での資金調達ニーズもありますので、クライアント支援の部門責任者として、代表の薛とともにクライアントの資金調達のお手伝いも行っています。
――プロダクトや会社としての強みはどのような点だと考えていますか。
村上 これまで様々なマッチングサービスを作ってきた実績から、膨大に蓄積したデータを活用できる点がプロダクトとしての強みであり、それを支える技術、文化、体制があります。そしてクライアントの成長を様々な観点からサポートすることができます。エンジニアからすると、作ったものがどれだけ使われるかが幸福度に直結する。幸福度はモチベーションに、モチベーションは品質に直結するんです。だからコンサルティングができることはとても大事なんです。
薛 僕らは開発を基軸に様々なグロースのための支援をし、クライアントの成長にコミットすることを事業としています。村上さんはいい意味でエンジニアっぽくないというか、ビジネス側のマインドがあってその手段としてのエンジニアリングを考えてくれている。クライアントのビジネスを理解して、それをどうテック側の組織に落とし込んでいくかを考えられるのが当社の強みになっています。
羽嶋 システム開発に加えてビジネスコンサルティングの機能を持っていることが強みだと思います。クライアントがグロースするまでコミットするというのが当社の特徴ですが、0から1にするのは本当に難しい。スタートアップをグロースするまで伴走する、それをやり切るのが面白いところで、他社とは大きく異なる点だと思います。
――ダイバーシティに富んだ社風が魅力だと伺っています。
薛 シンガポール、ベトナム、日本の3拠点で約100人の社員が働いています。開発メンバーであるベトナム人が8割と圧倒的に多いんですが、アメリカ、韓国、ベルギー、中国、インド、日本とさまざまな国籍の人材が在籍しています。20‐30代の若手が中心で、女性比率は現状1割ほどですが、バックオフィスだけでなく、エンジニアの女性も増えつつあります。
ダイバーシティに富んだ明るく風通しのいい社風
村上 当社のカルチャーを一言で言うと、個々のキャラクターが濃いこと。特にベトナム人エンジニアは、若くてパワフルです。コロナ禍ではリモートワークを行っていましたが、それまでは、ホーチミンのオフィスでわいわい楽しく仕事をしていました。みんな意欲的で、どんどん技術のスキルアップをしていくぞ、という熱気があります。僕は、開発人材はプロダクトに対する愛が大事だと思っているんですが、彼らは「プロダクト愛」が本当に強い。コミュニケーションも密に行っており、チームで国内旅行に出かけたりもしています。常にいいものを生みだそうと前向きで、国、地域、言語を超えて視野を広げています。
羽嶋 加えて、当社はかなりフラットな組織だと感じています。上下左右の壁がなく、いろんな人とコミュニケーションが取れる。まだ100人ほどの会社なので、経営陣にダイレクトにアプローチできる。例えば、25歳の新入社員が代表の薛に同行して技術面の話をすることも日常的にあります。年齢や国籍、価値観の違いに縛られず、いろんな人が交わって働ける点がC2Cの魅力の一つだと感じます。
――グローバル展開には課題や難しさがあると思いますが、工夫されている点などがあればお聞かせください。
薛 僕らは最初に本社をシンガポールに作り、開発拠点はベトナム、日本ではセールスを、とスタートアップの時点からグローバル体制を敷いて立ち上げました。オンラインでのコミュニケーションや英語での会議も立ち上げ当初から行ってきました。日本人の中には英語のコミュニケーションがまだ難しいと感じる社員もいるため、英語学習の支援も行っています。
羽嶋 ベトナムでは、プロダクトのことはわかるけれど、日本の市場やユーザーがどのようにプロダクトを使っているのかがわからないという壁があります。一方日本でも、ベトナム人の働き方を理解せずに日本人と同じ感覚で仕事を進めようとして失敗するケースがある。そこで、お互いの国の文化を知ってもらうために、ショートタームでエクスチェンジプログラムを行っています。例えば、日本側からエンジニアを2週間から3カ月ほどベトナムに派遣して、ベトナムのエンジニアと一緒に働いてもらう。帰国したらその経験を日本の社員と共有します。逆のパターンもあって、ベトナムのマネージャー以上の社員に来日してもらって、自分たちが作ったプロダクトを実際に使う体験や日本のマーケティングのやり方を勉強する機会を作りました。社員からの要望で日本語教室も行っています。相互理解が深まるような取り組みを今年から始めたので、今後が楽しみです。
村上 社員がベトナム、日本、シンガポールを行き来することはリフレッシュにもなるし、一緒に仕事をしたり、会って話したりすると刺激を受けるので、すごくプラスになると思うんですよね。ベトナムのエンジニアからすると、自分たちが作っているプロダクトを使った利用者の生活が豊かになったり、ライフスタイルが変わったりすることがイメージしやすくなる。その結果、プロダクトがさらに良くなっていくと思います。
第二創業期を迎えるC2C社。IPO、そして2030年には時価総額1兆円企業へ
多国籍のメンバーで構成されるC2C社のメンバー。現在人材登用にも力を入れている
――お話の内容から、お三方の強い信頼関係を感じます。お互いをどのように御覧になっていますか。
薛 我々はクライアントの開発にコミットしているわけではなく、クライアントの成功にコミットしています。クライアントのシェア1位ではなく、圧倒的独占を目指したい。そのために必要なメンバーが集まって来てくれています。村上さんでいえば、ビジネスマインドを強く持ってくれているので、いい意味でエンジニアらしくない、という印象。一つひとつのビジネスに対する解像度が高く、それをどのようにテックに落としていくかというところを考えることができる人材です。採用、定着も含め、ビジネスに機軸を置いたテック、レバレッジを利かせるためのテックを進めてもらえるというところが心強いと感じます。
羽嶋さんについては、IPOを目指していく中で今後真価が問われるところでもありますが、ビジネスでかなりの経歴を踏んできた歴戦の人々の中にあって、離脱やハレーションを起こさないよう、うまくバランスを取って調整してくれている点がありがたいですし、コーポレート部門を含めて見てもらっているのでその点でも大変助かっています。
村上 薛さんがリードしてくれるマーケティングに関して、絶大なる信頼を置いています。新規のビジネスを作る、顧客をつかんでくるという点において活動量もすごいですし、常にアンテナを張っているセンスもすごいと感じています。開発側からすると本当に心強いパートナーです。羽嶋さんは、これまで我々が手の回らなかったところをきっちり詰めてくれるのでとても助かっていますし、何よりも整理上手。バランサーとしてうまく全体を調整してくれる方であり、もちろん資金調達に関しては絶大な信頼を置いています。
羽嶋 私は自分自身どちらかというと現実を語るほうが得意ですが、村上さんは熱意を持って夢を語れる方。村上さんが夢を語ると、人材がついてくる、エンジニアを連れてくることのできる人間力を尊敬しています。また、薛さんは、圧倒的なゼロイチ伴走者。ビジネスモデル構築のセンスがずば抜けていますし、俯瞰的にそこを作っていくという点について、薛さん以外他にはいないと思っています。
――今後の展望とこれから求める人材像についてお聞かせください。
羽嶋 薛さんも村上さんも、熱意を持って夢を語ってくれるんですが、そういう人は本当に少ないと思います。薛さんはとにかくビジネスモデルを作り込むセンスがすごい。村上さんは夢を語れるエンジニア。彼が語る夢に魅力を感じて入社したエンジニアがたくさんいる。僕は現実を見てひたすらがんばるのが得意なので、まずはC2Cを上場させ、その勢いで2030年に時価総額1兆円企業へと駆け上がりたいと思っています。僕らの事業に共感していただける方には、いろんなチャレンジができる土壌があります。
村上 ダイレクトマッチング事業で個人が幸せになる社会を創る、というのが会社として目指すところですが、僕のパートでいうと、そのためのデータ活用をさらに高めていきたい。結局、世の事象の多くはマッチングで豊かにできると思ってるんです。だからそれを実現したいし、会社の成長を支える技術を構築し続けていきたいですね。
開発人材として求めるのは、チームワークができる人。そうでなければ、技術的にどんなにプロフェッショナルでも続けていくのは難しいと思います。もちろん、技術力も重要です。
薛 根本的に小さくまとまりたくないという気持ちがすごくありますね。中国、インドを除くアジアからグローバルベンチャーがなかなか出てこない。2030年に時価総額1兆円企業を目指すと公言していますが、しっかりと社会的インパクトのある事業を生み出して、創業から13年経ったときには最低限、そこに到達していたいという意味です。僕たちの挑戦は1兆円がゴールではなく、単なる通過点。ミダスキャピタルは「企業群全体の時価総額を 2024年に1兆円、2030年に10兆円、2040年に100兆円にする、という目標を掲げているので、その一員として2030年にC2Cで1兆円、C2Cのクライアント群でもう1兆円の規模に成長させ、ミダス企業群の中でもプレゼンスがある存在になっていこうと考えています。
当社は今、第二創業期のような時期。IPO、そして1兆円企業を目指す道のりはなかなか体験できないことだと思います。プロフェッショナルとして、責任を持って自分の領域の遂行をやり切れれば、どこに行っても通用する人材になれる。この時期にC2Cに加わったら大きなチャンスが得られると伝えたいです。
――ありがとうございました。
※本インタビューは、2022年5月に実施されたものです。
2022年6月6日に、日本の証券取引所における上場を目指し、日本法人であるC2C Platform株式会社を最終親会社とする組織再編を実施いたしました。