“従業員一人当たり売上1億円超”の株式会社イングリウッド 達成できた理由は人材獲得と社員教育に振り切った経営方針

株式会社イングリウッドは、「商品を売る最強の集団であり続ける」ことをミッションに掲げ、小売に特化したDXソリューションカンパニーとして注目されています。その躍進の背景には、非上場にもかかわらず、社員1人当たり約1億円の売上を達成している高い実力があります。しかし、それまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。今回はイングリウッドの代表取締役社長兼CEOの黒川隆介氏に、イングリウッドが社員一人当たり一億円の売上を達成するまでの軌跡について話を聞きました。

 

◆プロフィール

株式会社イングリウッド 代表取締役社長兼CEO
黒川 隆介氏

大学卒業後、アメリカ製品のインポート事業をスタート。2005年に有限会社イングリウッドを設立し、取締役社長となる。2014年、株式会社イングリウッドに組織変更し、現職に就任。アメリカのDEXTER NYC,CO.,LTD.CEOも兼任。データテクノロジー事業、AI戦略事業、セールス・ライセンス事業を3本柱に事業を展開する。

 

創業から順風満帆だった歩みの中で立ちはだかった壁

 

――イングリウッドはどのように創業されたのですか?

大学卒業後、個人事業主として働き始め、その後有限会社イングリウッドを設立しました。それまでは、当時流行していたスニーカービジネスに注目して、アメリカからインポートしていたんです。それから2011年まではBtoC事業を中心に携わり、少人数ながらも高収益を上げられるBtoCビジネスの基盤を築くことができました。

 

――事業を始めるうえで、ご苦労もあったと思います。

確かに、2014年までは自己資金だけでやっていたので大変なことも多かったですね。特に、在庫の管理は、回転率やその後の減損リスクなど、最も苦労した部分でした。ただ、その中でもそこからは順調に売り上げが伸びていって、2011年からはBtoBとBtoCのハイブリッド型の事業を展開できたので、概ね順調に成長の階段を登っていけたと思います。当時はまだアナログな店舗販売がメインで、まだECにはあまりフォーカスされていなかったということもあり、注目されていたと思います。

 

 

――そこから、順調に成長を続けてきたのでしょうか?

実は、2012年から2014年にかけて、売上自体は下がっていないのですが、1人あたりの生産性が下がってしまった時期がありました。1人ひとりの採用自体はかなり強化していたのですが、だからこそ、それぞれのレベル自体にムラがある状態になってしまったんです。さらに、当時の教育プログラムは、かなり「OJT」に寄っていて、先輩が後輩に教える形だったので、なかなか均一化せず、どうしても社員の成長度合いにもムラが出てしまったんです。

 

一人あたりの生産性が再び上がった理由は”人材育成”の強化

 

――それから、どのようなことに力を入れてきましたか?

社員教育にはかなり力を入れて徹底的に行っています。入社時の研修において、我々が小売業全般に携わっているからこそ、小売業全般にわたる教育プログラムを徹底しています。我々は単一のKPIではなく、かなり複雑なKPI管理が必要なので、全社員にファイナンスやテクノロジー、クリエイティブ、そして販路やリサーチなど、多岐に渡る内容を理解してもらう必要があります。さらに、Eコマースだけではなくて、リアル店舗への卸やポップアップの企画など、一人一人に企画提案力と、裏付けとなるデータ分析力も必要です。新卒・中途に関わらず、それらの教育プログラムをクリアできなければデビューはさせません。それに対しても、「頑張りたい」という思いで入社してくれる人がとても多いですね。

 

――社内ではどんな変化がありましたか?

2年くらい経つと、本当にメキメキと力を伸ばしていってくれていると感じます。特にほとんどの社員が基礎的な会計知識を持っているので、部署ごとに売上や営業利益の管理を行っています。弊社では、デイリーで売上と営業利益の着地を管理しているのですが、そこに関して、予測値の分析は11部署全てで行っています。全員がそれをちゃんと追えているというのが大きいと思っています。

プロフェッショナルになるのに10年や20年かかる職業ってそんなにないと思っています。世の中の移り変わりが圧倒的に早いので。そこに対して、柔軟に対応するためには、「教育+キャッチアップ」が必要不可欠だと思っています。事業全体のことがわかると自分が何をやっているか正確に理解できますし、どのギアを引けば全体の事業がうまくいくのかを考えられる事が大きいところだと思います。

 

――社内の組織編成においても、工夫をされたんですよね。

その後一番意識していたのは、一つひとつの事業やグロースさせていくっていうことはもちろんのこと、新規の事業も始めないといけないので、各部署のメンバーを吸い上げて、「新規プロジェクトチーム」のようなものを横軸に作ったというところです。横軸には「タスクフォース」という「MD」や「人材開発」、「コーポレートブランディング」など、6チームを作っています。そこでは横断的にマネージャーが所属してるんですけど、各チームを横で結びつけたのが非常によかったと思っています。

 

 

社内だけではなく社外との双方向でさらに伸ばしていく

 

――社員教育に大きく舵を切ってから、業績もどんどん伸びていますよね。

そうですね。また、社員教育だけではなく、人材獲得にもかなり力を入れています。実は以前の自分は、人が企業を変えるとはあまり思っていなかったんです。その中でCFOとして参画してくれた堂田との出会いは特に自分にとってはターニングポイントで、「世の中にこんなにすごい人がいるんだ、それなら圧倒的に人を増やしていった方がいいな」と思えたんです。それからは、どこかにいい人材はいないか、常に探すようになりました。

やはり、ミッション・ビジョン・バリューに共感してくれる人を集めるのは大変です。初期からベンチャー企業ですごい人を集めるのは、かなり難しかったですね。でも、転職意欲がない人でも、「来てもらいたい」と思ったら、私が自らアプローチします。そうした姿勢は、人材の重要性に気づいたからこそだと思います。

 

――さらに、イングリウッドでは、社内の教育プログラムを社外に商品として提供しているんですよね。

私たちは社内に蓄積された教育プログラムを社外に提供することも1つの事業にしています。イングリウッドのDX人材開発システムを「ビズデジ」と名付けて、社内の人材開発だけではなく、社外にも提供しています。「ビジネス商流」や「事業計画・ファイナンス」、「マーケティング」、「コマース」、「システム開発」、「デザイン」の6つのカリキュラムに基づいて、社員の「稼ぐ力」を継続的にサポートする教育プログラムです。毎年アップデートが行われていく業界の中で、専門チームが人材教育を研究しているので、社内外に価値を提供できていると思います。

また、社内向けには「IGカレッジ」という、社外のプロフェッショナルに登壇してもらう取り組みも行っています。社員には、社内だけじゃなくて社外からの刺激も受けてもらいたいと思っているんです。社内から社外へ、そして社外から社内へという双方向の流れは非常に重要だと思っています。1社で働き続ける時代はすでに終わったと思うので、社員には自分は外から見てどうなのかという意識を常に持っていて欲しいですね。

 

イングリウッドがこれから目指すもの

 

――これからイングリウッドが目指すところについて、教えてください。

今は、小売りに対する全てのソリューションを高度化して揃えるべく、走り続けている最中です。全ての高度化が叶えられたら、どんな商品でも我々に預けてもらえれば、完璧な設計をしてエンドユーザーに届けられる、そんな存在にイングリウッドはなっていきたいと思っています。弊社の売上は2018年度は40億円、2019年度は110億円、そして2020年度が150億円と、年々大きく伸びています。事業の拡大はもちろんですが、社員一人ひとりの成長が表れた結果だと思っているので、これからも人材獲得と社員教育には力を入れていきたいと思っています。

 

***

イングリウッドは、日本経済新聞掲載の2021年「NEXTユニコーン調査」の企業価値ランキングで13位にランクインするなど、今後の活躍にもますます期待が集まります。

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