2019年9月にGENDAに入社し、2021年8月に26歳の若さで執行役員経営企画部長に就任した羽原康平氏。
大学在学中に公認会計士試験に合格し、在学中から監査法人で上場企業などの監査業務を経験。卒業後は財務アドバイザリー会社で30件超のM&A案件に関与するなど豊富な実務経験を持っています。そんな羽原氏がGENDAで執行役員となるまでのご経歴、並びに就任後の軌跡についてお話を伺いました。
◆プロフィール
株式会社GENDA 執行役員 経営企画部 部長/公認会計士
羽原康平(はばら・こうへい)氏
神戸大学在学中に公認会計士試験に合格し、有限責任あずさ監査法人にて上場企業を中心とした監査業務に従事。2017年、神戸大学経済学部経済学科卒後、PwCアドバイザリー合同会社入社。エンターテインメント企業案件も含め、30件超のM&A案件に財務アドバイザーとして関与。2019年9月、株式会社GENDA入社。2021年8月より現職。
在学中に公認会計士試験に合格、世界4大会計事務所を経て、エンタメ業界へ
――在学中に公認会計士資格を取得後、4大会計事務所を経て次のキャリアを考える段階では、さまざまな選択肢があったように思います。中でも羽原さんが事業会社であるGENDAにジョインされた経緯と決め手についてお聞かせください。
前職はM&Aの経験を積むうえで、素晴らしい環境でした。しかし一方で、アドバイザーという第三者としての立場ではなく、当事者として自分の所属する会社の成長のためにコミットする、という経験をしてみたいと思うようになりました。
そんな思いを持ち始めた頃、当時GENDAの取締役CFOだった前職の元上司から、「まだ管理部門も何もない会社だが、一緒に管理部門の立ち上げをしないか」と声を掛けられたのがきっかけでした。
はじめて片岡(株式会社GENDA 代表取締役会長 片岡尚氏)と申(同代表取締役社長 申真衣氏)と面談した際に、片岡が「世界一のエンタメ企業を創りたい」と言っていたことが印象的で、「自分は今40代半ばだが、残り20年ほどのキャリアで世界一のエンタメ企業を創るには、ベンチャーを起業し、M&Aを軸に会社を大きくした方が夢に近づく。20年でウォルト・ディズニーを超えてみせる」と熱く思いを語っていました。
今まで片岡のように熱意を持って事業を語る人に出会ったことがなかったため、魅力を感じました。会長の片岡といい社長の申といい、あれだけのキャリアを持った人たちが人生を賭けてGENDAにコミットしている。当時まだ設立1期目のベンチャー企業でしたが、この人たちは「世界一のエンタメ企業」を実現するだろうと確信し、その場で「ジョインします」と即答しました。
4000名規模の大規模M&A後の経営体制構築を主導
――事業会社での新たな挑戦となったGENDAで、最も印象的だったプロジェクトについて教えてください。
私の主幹業務はM&Aの推進ですが、中でも2020年12月に、アミューズメント業界最大手であったセガエンタテインメントを、設立3期目のベンチャー企業であるGENDAが、M&Aでグループの一員にしたことですね。
私は当時、経理部長としてIPOに向けた体制構築をミッションとして担当していたのですが、社内のM&A経験のあるメンバー2人とともに、急遽このM&A案件も任されることとなりました。
具体的には、M&Aのエグゼキューションと呼ばれる、スキームの検討からバリュエーション、基本合意書の締結、デューデリジェンス、契約書の作成・交渉、クロージングまでの一連の手続きを管理、実行しました。このM&Aでは前職のPwCアドバイザリー合同会社で培ったM&Aの経験をすべて活かし、タイトなスケジュールながら、迅速に成し遂げ、最高のM&Aが実現できたと思っています。
アドバイザーではなく、当事者としてこの規模感の企業のM&Aを行うのは初めてのことで、その意味では前職のときとは違う緊張感を持って案件に携わりました。
――立場が変わったことで戸惑いや、工夫された点はどのような点でしたか。
一番は規模の違いでした。GENDAは当時、従業員わずか30人程度の規模だったのに対して、セガエンタテインメントはパート・アルバイトを含めると従業員4000人規模で、売上高も400億円ありました。その大きな会社をグループ会社として仲間にしようとしたわけで、そこには非常に難しい部分が様々ありました。
一方で、M&Aと言っても、人対人です。セガエンタテインメント側の意向にも配慮し、役職員の皆さんが心地よくGENDAグループの一員になれるための雰囲気づくりをし、リスペクトの精神を忘れないよう心掛けました。
具体的には、GENDAの意向を押しつけるのではなく、「一緒にIPOを目指そう」「いい会社にしよう」「共にやろう」という想いを大切にし、ディスカッションを繰り返しながら進めていきました。
――セガエンタテインメントのM&Aは大きなニュースとして取り上げられました。このM&Aの意義について改めてお聞かせください。
このM&Aを契機に、GENDAがアミューズメント業界のゲームチェンジャーとして、業界内外に認知してもらうことができたことも、大きな成果だったと思います。
2021年8月1日には、M&Aの推進及びグループガバナンスの強化のためにGENDAを純粋持株会社化し、その下に現GENDA GiGO Entertainmentなどの事業会社を紐づける現在の経営体制の構築を行いました。同時に、私も現職である執行役員 経営企画部 部長に就任しました。
常に期待の一歩先を行く成果で「やり抜く」、若き執行役員の仕事術
――仕事をするうえで、特に意識されていることはありますか。
2つのことを意識しています。1つは、どんな仕事であっても、必ず実行前に投資対効果を考えることです。アウトプットが大きな意味のあるものになるかどうかを考える。ヒト、モノ、カネのリソースが限られている中で、会社にとって価値が最大化されるように考えて行動するようにし、注力すべきものをまず決めるということを心掛けています。
もう1つは、とにかくやり抜くということ。壁にぶち当たってもコミットし続けて、「この人は多分ここまではやってくれるだろう」という相手の期待の一歩先まで狙って着地させる。そうやって結果を出し続けることで、自然と自分の限界も伸びていくと感じています。
逆に自分がプロでない領域については、適切な人とディスカッションして思考を深めることが重要だと感じます。
――20代という若さで執行役員になられましたが、ご自身のキャリアを考えるうえで、当初から強く執行役員になると意識されていたのでしょうか。
特別「早く執行役員になろう」といった目標を持っていたわけではありません。目の前のことに真剣に取り組み、相手の期待を超える成果を出そうと思ってやって来たことが、結果として執行役員への道を切り開いたと感じています。
私はどちらかというと目標がないと頑張れないタイプなので、そのためマイルストーンを区切って物事を進めるようにしています。公認会計士の試験では、まず半年で簿記1級に合格しよう、次にこれをしようと、細かくマイルストーンを区切って1つずつクリアしていきました。
M&Aでいえば、その案件をクロージングすることが目標の1つですが、そのために自分ができることを1つひとつやっていき、最終目標を達成する。今まで学んできたこと、経験してきたことが、目の前の実務で活きているという実感が持て、それによって成功体験を積み重ねていく楽しさがあります。
――執行役員として活躍するために必要なことは何だとお感じになられますか。
難しい質問ですね(笑)。好奇心かもしれないですね。それから、とにかくやり抜くこと。
新しいことを始めようとするとき、自分の業務範囲内ではないと抵抗感を持つ人が少なくありません。しかし私は、新しいことに取り組むことが好きです。分からないことがあれば調べればいいですし、専門家に聞けばいい。
ここで失敗したらキャリアが台なしになるなどと心配したことはありません。とりあえずやってみる。しかし、実行するときは自分のできる最大のパフォーマンスを出す。そうすればそれさえも自分の新たな力になっていきます。恐れることはありません。
また、GENDAグループの平均年齢は、役員、社員含めて40歳ほどで、私はおそらく最年少に近いでしょう。
年下の上司ということで、私に対して思うところがある人もいるのかもしれませんが、私はパフォーマンスを出し続ければ、皆さんにも納得してもらえるのではないかと思っています。実際、皆さん協力的で、仕事が進めにくいと思ったことは一度もありません。
むしろ、経営の中核として、意志決定に関わる場面に出会う機会が多く、自分の与えられた権限の範囲内で意志決定する仕事は、非常にやりがいを感じます。
起業最短でのIPO、そして世界一のエンタメ企業を目指す
――既に若くして執行役員となられた羽原さんですが、今後の目標はどのように設定されていますか。
まずGENDAとして、起業から最短でのIPOを実現したいと思っています。同時に、GENDAが創業以来掲げている「世界一のエンタメ企業」を創るため、M&A戦略をブラッシュアップし、事業規模及び事業領域を拡大させるM&Aを連続的に実現させていきたいと思っています。
そうしたオフェンシブなアクションを起こして、高いパフォーマンスを発揮するためには、コーポレート部門としてディフェンシブな機能が充実していることが重要です。そのため、攻めと守りのバランスの取れた組織をつくり、さらなるGENDAの成長に貢献していきたいと思っています。
普通の事業会社では専門性の高い分野になると、外部の専門家に委託して、それを社内の会議体に報告して決定するといったケースが多いようです。しかし、GENDAでは社内に高い専門性を持った人材を置いたほうがいいのではないかと考えています。その方がスピード感があり、意思決定の質も向上すると思っています。経営企画部に限らず、社内のメンバーの専門性を高めて、さらに強いチームにしていきたいと考えています。
――ありがとうございました。