サイバーレコードは、2008年に熊本県で設立され、ふるさと納税の運営代行やEC運営代行事業を展開し、九州の地方産業を支える存在として発展してきました。地方創生の一翼を担い、熊本県の「リーディング企業」にIT関連企業として初めて認定されるなど、地域経済を牽引する企業として注目されています。2024年7月には、地方企業として初めてミダスキャピタル投資先企業群に加わり、さらなる飛躍を目指しています。サイバーレコード代表の増田一哉氏に、起業の背景や目指す未来について聞きました。
◆プロフィール
株式会社サイバーレコード
増田 一哉(ますだ かずや)氏
熊本県出身。高校時代にビジネスへの興味を持ち、情報系の専門学校に進学してエンジニアの道を志す。卒業後、半導体関連企業に就職しエンジニアとしてキャリアを積んだ後、通販関連企業に転職し、ネット通販事業の立ち上げに従事。この経験を活かし、2008年に熊本県で株式会社サイバーレコードを設立。設立当初は、自作音楽を販売するプラットフォーム運営やiPhoneアプリ作成をメイン事業として行う。その後、EC運営代行やふるさと納税の運営代行事業にシフト。2024年には、自身が実質的に保有するサイバーレコード株式の一部をミダスキャピタル運営の旗艦ファンドに譲渡し、残りを新規設立したオーナーファンドに現物出資することで、ミダスキャピタル投資先企業群に加わる。
逆境からの起業 ― サイバーレコード誕生の背景
――26歳という若さで起業されていますが、そのきっかけについてお聞かせください。
もともとサッカー選手を目指していたのですが、高校時代にプロになるのは難しいと感じ、サッカーを辞めました。その後、アルバイトでお金を稼ぐ楽しさに気付き、高校2年生の頃には「自分でビジネスをやりたい」という夢を持つようになりました。そこで、IT業界に興味を持ち、エンジニアとしてのキャリアをスタートさせましたが、やりがいを見出せず、次に通販会社に転職し、ネット通販の立ち上げに関わることで、本格的にビジネスの世界に入っていきました。この経験が、起業への大きなきっかけになりました。
――起業後、プラットフォーム運営やEC運営代行などの事業経験を経て、ふるさと納税事業へと進出されていますが、この事業に取り組むきっかけは何だったのでしょうか?
EC運営代行でやり取りしていた楽天の担当者から「ふるさと納税にも対応できますか?」と聞かれたのがきっかけです。当時はまったくふるさと納税に関する知識がなかったのですが、大きなビジネスチャンスになると直感し、「対応できます!」と即答してからすぐに準備を始めました。そこから事業を広げ、今では年間寄付総額が400億円を超え、取引自治体も100以上にまで拡大しました。(直接、間接契約含む)
――ふるさと納税事業を成長させるにあたり、特に注力してきた点はありますか?
自治体や企業との連携です。地域の特産品をゼロから開発するため、自治体が抱える課題を丁寧にヒアリングし、生産者と連携して商品化を進めています。例えば、「原料はあるが加工ができない」といった自治体の課題に対して、生産者と連携して商品化を実現してきました。このように、製造から販売までを一貫してサポートできる体制が、私たちの成長を支える基盤となっています。
地方から挑む ― ミダスキャピタルとの出会いと新たなステージ
――ミダスキャピタルが地方企業に投資したのは、今回が初めてですね。
はい。大都市に拠点を持つ企業が多い中で、ミダスキャピタルが我々のような地方企業に投資してくれたことは、とても大きな意義があると感じています。地方企業でも、全国規模や世界規模で成長できることを証明してまいります。
地方企業には特有の課題があるんですよね。例えば、大企業とのネットワークが限られているため、情報や知見を共有する機会が少ないこと。また、優秀な人材を地方に引き付けることが難しいため、東京や大阪などの大都市圏に比べると、人材面での課題もあります。
――ミダスキャピタルとの出会いにより、こうした課題にはどのような変化がありましたか?
ミダスキャピタルの支援を通じて、新たなネットワークやパートナーシップを築き、これまでの課題を解決するための基盤が整いました。特に、GENDAやイングリウッド、BuySell Technologiesなど、勢いのある企業の経営陣と交流することで視野が広がり、より高い次元での経営戦略を学ぶ機会が得られました。また、東京の優秀な人材を採用できるようになり、地方企業でありながらも全国的な視点でビジネスを進める体制が構築されつつあります。
九州から世界へ ― 成長の次なるステージを見据えて
――今後の展望についてお聞かせください。
私たちは「九州から発信している企業」として、地域の強みを活かしながら、日本全体、さらにはグローバル市場での成長を目指しています。
――特に注目している市場はどこでしょうか?
九州を拠点にすることで得られる地理的優位性を活かし、特に東アジア市場をターゲットにしていきたいと考えています。九州は東アジアに非常に近く、東京からのアクセスに比べて2時間ほど移動時間が短いという物理的な利点があるんです。
そのためにも、地域間の連携は今後ますます重要な役割を果たしていくでしょう。九州全体には観光資源や豊かな食文化といった地域の強みがあり、これらを一つにまとめて活用することで、より大きなインパクトを生み出すことができます。福岡と熊本のように、新幹線で35分前後でアクセスできるようなエリアが力を合わせ、九州全体としての発信力を強化していきます。
――製造業への進出も計画されているとのことですが、具体的にどのような戦略をお持ちですか?
これまで販売代行に力を入れてきましたが、今後は自社で製造した商品を九州から海外市場に向けて展開していきたいと考えています。製造から販売までを一貫して手がけることで、地域の特産品を活かしたビジネスモデルを強化できます。
また、今後の成長戦略の一環として、2027年のIPOを目指しています。製造業への進出や地域連携の強化などを通じて、さらに事業を拡大し、2031年までに時価総額1,000億円を達成することを目標としています。これからも、九州から世界に向けて、新たな価値を発信し続ける企業として成長してまいります。