ミダスキャピタルでディレクターを務める斉木愛子さん。
日本とシンガポールで日系・外資系金融機関に勤務した後、スタートアップ企業での広報やPR会社の副社長を経て、現在もご自身の会社や上場企業の社外取締役を兼務しています。これまでのキャリアの変遷とミダスキャピタルとの出会い、現在の業務内容などについて伺いました。
◆プロフィール
株式会社ミダスキャピタル 企業支援本部 ディレクター
斉木 愛子(さいき あいこ)氏
2008年大学卒業後、大和証券SMBCにて債券セールス、プライベートバンカーとして従事。2014年よりUBS銀行東京支店、2016年からCredit Suisse AG Singaporeでプライベートバンカーとして国内外の富裕層資産管理に携わる。2018年よりbitFlyerならびに日本ブロックチェーン協会にて広報・渉外業務をリード。2019年に独立して個人事業主として開業、スタートアップ企業を中心に広報支援に携わる。2020年にPRASに参画し取締役就任、2023年より取締役副社長として組織マネジメントと親会社のマテリアルグループの上場に貢献。2021年にパレスサイドコンサルティングを創業し代表取締役就任(現職)。2022年にファンドクリエーション社外取締役に就任。2023年2月にファンドクリエーショングループ社外取締役ならびにビットバンク株式会社の社外取締役(監査等委員)に就任(現職)。2025年2月にミダスキャピタル企業支援本部ディレクターに就任(現職)。現在はシンガポールを拠点に日本と二拠点。ファイナンス修士(専門職)Master of Business Administration
金融のプロフェッショナルからPRの専門家へ
――はじめに、斉木さんのこれまでのキャリアについて教えてください
新卒では大和証券SMBCに入社しました。
リーマンショックの起きた2008年に入社したこともあり、入社後三井住友銀行との合弁解消で大和証券単体となり、激動の時代でしたね。最初は債券部門に配属されて法人向けセールス・トレーディングの仕事をしていたのですが、どのクライアントも金融商品の解約や減損など後ろ向きな仕事が多く、今リスクがとれるのは個人投資家だと感じて富裕層の資産管理をするプライベートバンキングの部署に異動しました。
同時に、自費で夜間MBAに通いながら公私共にスキルアップをして、修士号を取ったタイミングでUBSに転職し、結婚したタイミングで夫がシンガポールに駐在していたのでクレディスイスのシンガポール拠点に現地採用で転職したというのがキャリアの前半です。
ただ、シンガポールで第一子を出産直後に夫が転職して日本に帰国するとなった時に私も帯同して転職を繰り返すのは違うなと感じて、今後どこの国に住んでいても時間と場所にとらわれない働き方ができるようにと考えて、スタートアップ業界の広報という職種にキャリアチェンジしました。
PRキャリアの最初はbitFlyerというフィンテック・ブロックチェーン企業で、未経験ながらも広報・渉外担当として採用してもらい企業広報以外に業界団体の立ち上げなど経験をしながら、この頃に第二子も出産しています。
その後、夫の転勤で今度はベトナムに移住するという話が本格化したので、それを見据えてフリーランスとして独立、その後法人化して自身の会社を経営しながら、兼業でPRASというPR会社の副社長などを勤めたり社外取締役を2社兼務して今に至っています。昨年末にPR会社役員を退任したタイミングでPR業界を卒業して金融業界に戻ってきた感じですね。
シンガポールと日本の二拠点 月1回は日本に出張
――現在はシンガポールにお住まいとのことですが日本との二拠点生活はどのように実現しているのでしょうか。
2022年に日本からベトナムへ移住、2024年にベトナムからシンガポールに家族で移住しました。今回のシンガポール移住の目的は子供の教育移住ということもあり、あと15年くらいはシンガポールがベースになると思うのですが、私の仕事は100%日本なので月に1回は東京出張しています。
コロナ禍の後はオンラインミーティングも定着し、業務自体はフルリモートで完結することが多いです。逆にリモートだからこそ子供が寝た後に深夜まで仕事をしてしまう傾向がありますね。ただ、人間関係構築や重要な案件を決めにいく時などはやはり対面コミュニケーションが必要かなと感じています。
夫も海外出張が多いので、シンガポールの自宅ではフィリピン人の住み込みヘルパーさんに育児・家事をサポートしてもらっていて、このインフラがあるからこそ仕事に邁進できる土台があるなと思いますね。
ミダスキャピタルとの出会いと5年間の外部広報支援
――ミダスキャピタルとの出会いから現在に至るまで、どのようなものでしたか。
ミダスとの出会いは、2020年に知人経由で外部広報支援の相談をもらったことが最初です。その後、直近まで5年ほど外部PRアドバイザーというかたちで伴走してきたので一定の事業やメンバーの理解はしていました。
――ミダスキャピタルの第一印象は。
最初はプライベートエクイティファンド(以下、PEファンド)ということもあり、正直GREEDYな印象でした、笑。
ただ、それは自社が儲けることに関してではなくミダス企業群の時価総額を1兆円、10兆円、100兆円にするという高いレベルを目指していて、そこに到達するべく貪欲に、現状の価値に満足しないスタンスが印象的でした。5年前は目指す金額の桁が大きすぎて現実味がなかったのですが、直近の企業群時価総額が4,000億円を超える水準に達していて、夢物語ではないなと実感がわいてきています。
また、現在までの実績の礎となっているのが、ミダス投資先企業群の経営層とミダスキャピタルのメンバーたちで、このそれぞれの領域で傑出した経営者同士の相互扶助の仕組みがユニークだなと感じました。この相互扶助は、PEファンドの投資先企業群が単に横のつながりを持つようなものではなく、各社の事業成長にドライバーとなる知見や人的ネットワークを惜しみなく出し合うという仕組みです。
ミダスキャピタルへの入社を決めた3つの理由
――外部アドバイザーから入社を決めた理由はなんでしょうか。
個人的に決め手となったのは下記の3つです。
①事業と社会貢献の両立
これは個人的な思い込みだったのかもしれませんが、私はこれまで会社として事業成長や利益を追求することと社会貢献というものは完全に別物と思っていて、自分が働きながら社会貢献事業にもコミットできるとは考えていませんでした。
ですので、個人的にも晩年期に社会貢献性の高い ”Life-work” にコミットするために、50歳くらいまでは “Rice-work”と割り切って人生の土台に必要な資金は稼ぎきるということを掲げていました。
ただ、ミダス財団は社会貢献団体であっても経営のアドバイスや専門人材を紹介するなど、本業と同等のバリューアップを行い社会的インパクトを出している取り組みを知りました。
また、ミダス企業郡の傑出人材がこれまで本業で培ってきた知見や能力を使って社会的インパクトを最大化させるべく活動しているという事実を知った時、 ”Life-work” と“Rice-work”の両立は可能なのかと驚き、私にとっては願ってもない環境だなと感じました。
また、財団のメイン事業である新興国での学校建設や子どもの体験格差是正などの取り組みについても強く共感しています。私は幼少期に両親の離婚による母子家庭で経済的に困窮していた原体験から今の社会貢献への高い関心があるので、財団の活動を通して間違いなく人生が変わった子ども達がいるという実感を得られることが仕事のやりがいにも繋がっています。
②傑出人材と共に働く喜び
日本からベトナムへの移住直前にミダス企業群の一社であるGENDA社長の申さんから食事に誘ってもらって、送別会かなと思っていたらミダスキャピタル本部におけるポジションに興味はないですか、というお話だったので当時すごくびっくりしました。
高い基準を設けて、とにかく傑出した人材を集めるというコンセプトを知っていただけに、自分もその一員に認めてもらったことは単純に嬉しかったですね。当時は海外移住や所属先の上場などを控えていて辞退したのですが、今回またご縁をいただきジョインすることになりました。
③海外からも柔軟に働くことができる環境
前述の通り、私は現在家族でシンガポールに住んでいて勤務する場合はフルリモートになること、自身の経営するコンサル会社や社外取締役など兼職先を退任することは難しいということ、近い将来にはコンサル以外の実業で起業したいことなどもお話したのですが、全て了承した上でオファーをもらえたことは有り難かったです。もちろん特例ということは理解していますが、傑出した人材を集めるためのスタンスというか、徹底ぶりは凄いなと思いましたね。
――現在の業務内容と今後の展望についてお聞かせください。
私の所属チームとしては企業支援本部となるので、業務内容は投資先のハンズオン支援全般です。2月に入社して最初に支援した具体例でいうと、女性社外役員を探している投資先企業に対して女性起業家や社外取締役コミュニティから候補者を紹介しました。他にもPRの知見をもとにミダスキャピタルのブランドエクイティの整理をしています。
――最後にインタビュー記事を読んでいる方へのメッセージをお願いします。
一般的なPEファンドだと投資業務や投資先企業のプロ経営者など金融、コンサル、経営バックグラウンドのない方にとっては縁遠いと感じるのではないかなと思います。ただ、ミダスキャピタルとミダス企業群、財団を含めた幹部人材の方々のバックグラウンドはかなり多様性があります。正直どんな職種・経歴の方でも一定の領域に傑出したスキルや実績があれば、何かご一緒できる機会を見出せないか是非一度お話させていただきたいと思います。ご関心を持っていただけた方がいれば是非ミダスキャピタルのHP問い合わせフォームでも私の個人SNSでも気軽にキャリア相談をいただけたらと思います。