ゼロから最速で事業を生み出す人材を支援したいDual Bridge Capital 伊東駿代表パートナーインタビュー

2023年4月にミダスキャピタルの関連ベンチャーキャピタルファンドとして創業したDual Bridge Capital。「世代や産業を代表する傑出した経営者の輩出」をミッションに掲げ、スタートアップへの支援を行っています。代表パートナーである伊東駿氏は、VC一筋で実績を積み上げてきた人物。なぜミダスとともにVCを創業することしたのか、またミダスのどんな点に魅力を感じたのかを、伊東氏に聞きました。

◆プロフィール

株式会社Dual Bridge Capital 代表パートナー
伊東 駿(いとう しゅん)

慶應義塾大学院修了後、フューチャーベンチャーキャピタル株式会社にて既存投資先の支援に加え、新規ファンド組成業務を担当。ベンチャー企業の資金調達支援を数社した後、ニッセイ・キャピタル株式会社に入社。投資部長としてシードからレイターステージまで幅広く投資を実施した後、2023年5月Dual Bridge Capitalの代表パートナーに就任。

スタートアップエコシステムの発展に貢献することを目指して

――伊東さんは大学卒業後からこれまで、ベンチャーキャピタル(VC)一筋のキャリアを歩まれています。この業界を志したきっかけを教えてください。

主に挙げられる理由は2つあります。1つ目は当時のVC業界はまだまだ発展途上であったことです。成果を残すことでスタートアップエコシステムの発展に貢献できるのではないかと考えました。もう一つは身近に起業家が多い環境であったことです。起業家・経営者の夢の実現をサポートしたいと思い、この業界に飛び込みました。

就職活動を始めたタイミングが人より遅かったこともあり、新卒枠ではなく中途採用枠でフューチャーベンチャーキャピタルに入社。そのため、一番年の近い先輩でも5歳以上年上でした。切磋琢磨する仲間はいませんでしたが、早く成果を出して上に行きたいという気持ちが強かったので、目標となる存在が大勢いる環境に身を置けたのは幸運でした。

転機になったのは、政府機関による若手人材の海外派遣プログラムに応募し、インドのスタートアップを調査するために1年弱行く予定で退職したこと。ところが3週間前に受け入れ先で問題が起きて、渡航できなくなってしまいました。他の国に行くという選択肢もあったものの、あまり心は惹かれませんでした。それなら今後より一層事業・投資の経験を積める場所に行こうと思い、友人の会社を手伝った後、ニッセイ・キャピタルに入社しました。

――ドラマティックな展開ですね。なぜインドを選んだのでしょうか。

自分の領域を広げるためには、シリコンバレーのようにすでに成熟し切った市場ではなく、これから伸びる場所に行きたいと考えました。成熟したところではナンバーワンは狙えません。根底にはいつもこの気持ちがあります。

生産性よりも人脈形成を意識したことで、仕事に好循環が生まれた

――ニッセイ・キャピタルではどんなことをされていたのでしょうか。

ニッセイ・キャピタルは日本生命傘下のベンチャーキャピタルで、豊富な資金力が特徴です。ソーシングからデューデリジェンス、投資先のバリューアップまで全て自分でやるという会社なので、初日から早速ソーシングをしました。

新しい環境に飛び込んだところまではよかったのですが、初年度は散々な結果に終わりました。ソーシングはしたものの、投資実行には一件も至らなかったのです。自分のやり方には問題があるのだろうとは気づいていましたが、では何がまずいのか。そう考えて、今までのやり方を全て捨て、上司の行動、考え方、発言まで、そっくり真似してみることにしたのです。

その結果、これまで自分が「人脈形成」を重視していなかったという事実に気づきました。思えば学生時代から生産性のないことが苦手で、友人たちからも指摘されるほど。サッカーサークルに所属していたのですが、試合は出るけれど飲み会は面倒なので出席しないというスタンスでした。

一方、成果を上げている上司は日常的に起業家の集まりに顔を出したり時には明け方まで飲んだりと、業務時間外での起業家との関わりをとても大事にしている様子でした。実際に一緒に酒を酌み交わしながら起業家と話をしてみると、平場の経営会議では出てこない悩みや経営者としての孤独がぽろりと漏れてくることがありました。彼らの話をしっかり聞くことで、関わり方が徐々に変化していったのです。

信頼関係ができたことで、起業家が別の起業家を紹介してくれるようになり、ソーシングも自動的にできてくるようになりました。

――自分から探しに行くだけではなく、いい案件が自然と集まってくる。そんな好循環が生まれたのですね。

その通りです。例えば1億円投資したいと思ったときに、当時の私のような20代の若者と35歳のベテランがいたら、誰もがさまざまな経験を積んで成熟したベテランに頼むと思います。そこで勝負するなら、「この人とやりたい」と思ってもらえるような人間関係をつくるしかありません。その一点を2年目に突き詰め、そこからだんだんと自分の型ができあがっていきました。

他のVCには真似できない、ミダスキャピタルだけの仕組み

――その後、どのような経緯でミダスキャピタルと出会ったのでしょうか。

ミダスキャピタルの取締役パートナーで、Dual Bridge Capital代表パートナーでもある寺田修輔さんと、知人を通じて知り合ったのがきっかけです。寺田さんとはプライベートでも交流するようになり、話をする中でミダスキャピタルがどのような組織であるかを知りました。

寺田さんから新しいVCを立ち上げたいという話を聞いた当初、私はニッセイキャピタルの投資部長として採用や育成にも関わっており、投資先も多く抱えていたこともあって仕事を辞めようとは考えていませんでした。しかし5年後、10年後のVCを見据えると、今やるべきことがあるのではないかとも感じていました。

これまでのようにVCが単に資金面で支援するだけでなく、「お金以外にどのような価値提供をしてもらえるのか」を起業家側が問い始める時期に変化してきています。ミダスキャピタルとならそれができるのではないかと思い、起業に踏み切りました。

――実際に活動する中で、ミダスのどんな点を強みと感じていますか。

一般的に、VCは属人的になりがちです。しかし、ミダスは経営者が集い立ち上がった背景もあり、他のVCには真似ができない仕組みが構築されていました。ミダスには傑出した経営者が集まっていて、それぞれが培ってきた能力や人脈を共有しています。そのおかげで起業を検討している優秀な人材にもいち早くタッチできますし、人材を欲している企業の要望にも応えられます。この仕組みこそが私が感じたミダスキャピタルの最大の強みです。

VCを新規設立して1年弱。自分自身が経営する立場になったことによって、引き出しがさらに増えました。起業家とも「一経営者」として話ができるようになり、投資先への理解がより深まったような気がします。

――今後の目標について教えてください。

昨年末にファンドサイズを60億円に成長させることができたので、これからは積極的に投資していくつもりです。いい会社を見つけるのはソーシング力さえあればなんとかなります。しかし私たちの使命は有望な会社へ投資するだけではありません。

2024年2月からスタートした「Dual Bridge Studio」は、事業案が確定した段階から投資を検討する従来のアクセラレーターとは異なり、将来的に起業を目指す人材に焦点を当て、見出していくプロジェクトです。必要なものは履歴書、職歴書、面談だけ。応募時点での事業案や起業経験の有無は一切問いません。ゼロから最速で事業を生み出すことに熱意を持った方に、ぜひ話を聞きにきてもらいたいと思っています。

――起業を目指すものの何から始めたらいいのかわからない人にとって、背中を押してくれるきっかけになりそうですね。

起業するのは生半可なことではありませんが、一度きりの人生においてこれほどさまざまなことを学べる機会はないと思います。ただし、短期的に売上利益を出したり従業員に給与を払ったりするためには、事業領域をきちんと決めることが重要です。これだけでも多くの「失敗」は防げますし、さらにチームづくりを成し得れば、誰しもが一定の成功体験ができます。私たちは、その最初の一歩を踏み出すきっかけになりたいと思っています。そうして生み出した事業によって、世代や産業に変化をもたらす。そんな企業を一緒につくりあげていきましょう。

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