開発チームを立ち上げ、4000名のIT基盤構築に成功したCPOの挑戦

初のIT人材として2020年に株式会社GENDAに入社。その後、GENDA CTOとしてGENDA GiGO Entertainment(当時はGENDA SEGA Entertainment、以下GiGO)のPMIプロジェクトを担当されたGENDA CPO 重村裕紀氏に、プロジェクトの概要や経緯についてお話を伺いました。

◆プロフィール

株式会社GENDA CPO
重村裕紀(しげむら・ひろき)氏

2016年4月 FiNC Technologiesの立ち上げ期にエンジニアとしてジョイン。2018年12月に同社プロダクトマネージャーに転向し、ヘルスケアアプリFiNCのプロダクトマネジメント業務に従事。
2020年10月 株式会社GENDAに入社。同年12月よりCTOに就任し、開発組織づくりやコーポレートITの導入支援などを担当。2021年10月に同社CPOに就任し、オンラインクレーンゲーム事業や、ゲームセンターのDXの推進などに従事。

 

4000名規模のIT基盤を構築する巨大プロジェクト始動!

――現在の業務領域とミッションについてお聞かせください。

CPOとして、GENDAグループ全体のオンラインクレーンゲーム事業のプロダクトマネジメント業務やマーケティングの支援、ゲームセンターのDX推進などのほか、ゲームセンターのお客様向けにクーポンなどを提供する会員アプリのプロジェクト推進にも携わっています。
なお、オンラインクレーンゲームは現在3つほどのサービスを運営しています。

 

――昨年携わられていたPMIプロジェクトの概要についてお聞かせください。

2020年10月に入社後、同年12月には株式会社GENDAが株式会社セガ エンタテインメントの株式を85.1%取得しました。セガ エンタテインメント(現在GENDA GiGO Entertainmentに社名変更、以下GiGO)のグループ参入直後に、IT領域のPMIプロジェクトを任されることになりました。当時はGENDA CTOとしてPMIプロジェクトに参画しましたが、GENDAのIT人材は私一人でしたので、ITと名の付くものはすべて関わらせて頂きました。

PMIプロジェクトとして行ったことは大きく3つです。

1つ目は、自社のゲームセンターの会員向けアプリの戦略策定・開発内製化。2つ目は、オンラインクレーンゲーム事業のデータ分析・マーケティング戦略の策定。3つ目が最も大規模プロジェクトでしたが、GiGOの従業員4000名の情報システム基盤の構築です。

 

――プロジェクトを任された時はどのようにお感じになられましたか?

当時ビジネスIT領域の事業は拡充していたものの、戦略や開発体制、マーケティング、収益性の面など、様々な課題が有りました。また、コーポレートIT領域は、プロジェクトの大きさや納期の短さもさることながら、規模の大きさ故に構築に係る費用も大きく、QCD(Quality・Cost・Delively)全てを成立させる必要性を感じました。

特に私は、コーポレートITの経験がなかったため、不安は大きかったです。しかし、ミダスキャピタルの別の投資先のCTOの方などにこまめに相談させて頂いたり、非常に頼りになる外部パートナーの方を紹介頂けたことで、何とか進めることができました。

 

――実際にどのようにプロジェクトを進めていかれましたか。

まず取り組む必要があったのが、喫緊の課題であったコーポレートITの領域です。GiGOがGENDAグループ参画した直後の1年間は、それまでGiGOの親会社であったセガサミーホールディングスのIT基盤をお借りしている状態だったため、1年間という期限内に自社でIT基盤を構築し、セガサミーホールディングスのシステムから卒業する必要がありました。何より人事、経理、稟議フローといった、日々の企業活動を遂行する上で必要不可欠な領域であるため、遅延や失敗が許されないプロジェクトでした。
また、従業員4000名が利用する基幹システムを刷新することから、プロジェクトの予算計画もかなり大きな額を見込んでおり、可能な限りコストを抑えて実現すべくプロジェクトに参画しました。

 

ITをコストセンターからプロフィットセンターへ

株式会社GENDA CPO 重村裕紀氏

――コスト削減についてはどのように実現しましたか?

僕が取り組んだことは大きく2つ。1つはシステムの内製化です。当時システム構築は基本的にすべて外注を予定していたため、そこにコスト削減の余地があっただけでなく、今後の機能改善のしやすさも踏まえ、内製化のメリットは大きいと考えました。そこで、まずは技術者を新たに採用し、自社で開発できるところは可能な限り社内で開発する方向に大きく舵を切りました。内製化に成功すれば数千万円単位でコストカットができる余地がいくつかあったためです。

当時GiGOにもITチームはありましたが、在籍していたメンバーの主なミッションは、各種業務システムを導入して社内に展開していくことであり、プログラミングを書いて開発していくことではありませんでした。従って、まずはシステム内製化に踏み切ること、技術者を採用すること、技術的なサポート体制を構築することが急務でした。

 

――開発エンジニアの採用についてはどのように進められたのですか。

僕は開発エンジニアとしての経験は持っていましたが、コーポレートITの領域は担当したことがありませんでした。逆に当時、GiGOのITチームはコーポレートITの経験はありましたが、開発経験はありませんでした。そこで、お互いにディスカッションしながら、どの部分は内製化が可能でどういった人材が必要なのか、どの領域は外部のベンダーやシステムを導入すべきかといった議論をしていきました。当時、ITチームには5名ほど在籍していましたが、プロジェクトに必要な人員が不足していたため、業務委託の方や社員の方の面接に同席し、開発周りのスキルチェックなども担当しました。

 

――エンジニア採用の面で工夫されたのはどのような点でしたか。

近年エンジニアは売り手市場なので、いいエンジニアを短期間で見極めて採用するというのは難しかったですね。ただ、コミュニケーションツールやリモート環境の整備など、エンジニアが仕事をしやすい環境を整えることは意識しました。また、現時点ではレガシーになりつつある技術を使用していたため、エンジニアの採用が困難であったり、開発の生産性が低い状態でしたので、現在のスタンダードな技術にリプレースしました。それは、ほぼ1から作り直すということと同義でしたが、エンジニアが好む環境を整えたことで採用もうまくいったのではないかと感じます。

 

――意識改革の面で工夫されたのはどのような点でしたか。

主に、3つのメッセージを常に発信し続けることで、意識の定着を試みました。
その1つが「プロフィット意識」です。ITはその性質上、コストセンターという認識を持たれがちです。将来的なIT投資をするためにも、他の部署よりもコスト意識を高く持って取り組み、経営陣からの信頼を得る必要があると考えました。

2つ目が「内製化」です。失敗できない、納期が短い、過去に経験がないなど、今回は内製化を見送る理由が十分にありました。しかし、将来的にITを武器にするためには、一定水準の内製化が必須です。今回内製化にチャレンジできたことは、コスト面だけでなく、将来的なシステムの改善・拡張をしていくにあたっても、成功してよかったと思います。

最後に「顧客視点」です。こちらはコーポレートITではなく、主にビジネスIT領域の話ですが、上からの指示や、自分たちの勝手な思い込みからサービスを設計するのではなく、きちんと顧客にヒヤリングをしたり、顧客データを細かく見ることで、顧客が求めるサービスを提供する重要性を発信していきました。自分も顧客理解はまだまだ不十分な点もありますが、継続的に浸透させていきたいと思います。

それらすべてにおける大前提として、GiGOの方々がとても好意的に取り組んで頂けたことが大きかったと感じます。

 

――「ITをコストセンターからプロフィットセンターにする」ことをご自身のミッションと課して進められた今回のプロジェクトについて、コストカットの最終成果としてお伝えいただけるところがあれば教えてください。

いちばん大きかったのはシステムの内製化です。勤怠管理、人事データベース、経理システム、稟議システムといったさまざまなシステムをつなぐデータパイプライン機能と、自社の独自システムの改修などを内製化することで、数千万円程度のコストカットを実現することができました。内製化以外にも、様々な局面でコスト意識を持って取り組んだことで、全体としては予算比で億単位のコスト削減に成功しました。本当に小さな積み重ねでここまで大きな成果を残すことができたと感じているので、皆さんのご協力に感謝しています。

 

――プロジェクトはこれから事業拡大のフェーズに入っていきますが、現状までの歩みを振り返っていかがでしたか。

当時、GENDA側のテクノロジーメンバーは私一人で、事業・エンジニア組織・コーポレートITなどと幅広い業務に携わらせていただきました。まずは、当初よりも支出を抑えられたこと、GiGOとしてはあまり経験のなかったシステム開発内製化に踏み切れたことは良かったと思います。一方で、GENDAグループ全体としては、オンライン事業の売上規模はまだまだ小さいので、これからは自分の専門分野である、事業成長に注力していきたいと考えています。

――オンラインクレーンゲーム事業の立て直しについては、次回記事で詳しくご紹介できればと思います。ありがとうございました。

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