東大金融研究会×ミダスキャピタル: 出身者が語る外資系投資銀行の就活とキャリア (セミナーレポート前半)

多くの就活生にとって憧れの的である外資系投資銀行。各金融機関での採用数は例年若干名程度で、どのような基準で外資系投資銀行が学生を選んでいるのか、そしてどのような人が活躍するのかという情報に触れられる機会は決して多くありません。

2022年1月13日、株式会社ミダスキャピタルでは「外資系投資銀行キャリアセミナー」をオンラインで開催しました。セミナーには外資系金融機関での勤務経験があり、現在「CxO」やプライベート・エクイティ・ファンドで活躍している5人のメンバーが登壇し、学生たちにメッセージを届けました。

前半では、登壇者が体験した外資系投資銀行の就活談と、面接官を担当した登壇者の視点をお伝えします。

 

■登壇者プロフィール

株式会社GENDA 代表取締役社長
申 真衣

2007年ゴールドマン・サックス証券株式会社入社。法人営業で金融機関向け債券営業に従事。その後、2010年より商品開発部 にて、金利・為替系デリバティブの商品開発・提案業務、グローバルな規制にかかる業務等幅広い業務に従事。 2016年4月、商品開発部部長、 2018年1月、マネージング・ディレクターに就任(当時最年少)。 2018年5月に株式会社GENDAを共同創業。 2019年6月より現職。東京大学経済学部経済学科卒。

 

株式会社ミダスキャピタル ディレクター
久山 貴久

2018年4月、ゴールドマン・サックス証券株式会社入社。投資銀行部門アドバイザリー・グループにてM&Aのアドバイザリー業務及び株式・債券等による資金調達関連業務に従事。 2021年10月、株式会社ミダスキャピタル入社。投資本部にて案件ソーシング・企業価値評価・DD・契約交渉業務・既存投資先支援等に従事。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。

 

株式会社GENDA CFO
渡邊 太樹

2011年4月、株式会社みずほコーポレート銀行(現・株式会社みずほ銀行入行。本店営業にて、 事業法人のリレーションシップ・マネージャーを担当。2015年4月、ゴールドマン・サックス証券株式会社入社。 投資銀行アドバイザリー・グループのヴァイス・プレジデントとして、主にクロスボーダーM&Aの助言業務及び株式・債券による資金調達関連業務に従事。2021年6月に株式会社GENDAに参画し、現職。一橋大学商学部卒業。

 

<ファシリテーター>

株式会社ミダスキャピタル 取締役パートナー
寺田 修輔

2009年よりシティグループ証券株式会社にて株式調査業務や財務アドバイザリー業務に従事し、ディレクターや不動産チームヘッドを歴任。 2016年に株式会社じげんに入社し、取締役執行役員 CFOとしてM&Aを中心とする投資戦略、財務戦略、経営企画の統括や東証1部への市場変更、コーポレート体制の強化を牽引。 2020年7月より株式会社ミダスキャピタルに取締役パー トナーとして参画。 東京大学経済学部卒業。Chartered Financial Analyst(CFA 協会認定証券アナリスト)。

 

登壇者が体験した就活

 

寺田:皆さんが新卒のとき、どのような就活軸やキャリアビジョンを持って就職先を決められたのでしょうか。まずは申さんから教えていただいてもよろしいでしょうか。

 

株式会社GENDA 代表取締役社長 申 真衣氏

 

申:私は経済学部だったのですが、2年生のときに授業でオプション理論を勉強して、すごく面白いなと思いました。金融工学のゼミに入っていたので、自然な選択肢であったということもあるのではないかと思いますが、実はBCG(ボストン コンサルティング グループ)も受けて不合格になったこともありました。

 

寺田:ちなみにBCGはどういった点で不合格になったのですか。

 

申:BCGでは、『新幹線の中のコーヒーの売上を2倍にするには』という質問をされ、回答しながら興味がなくなってきてしまって(笑)。恐らく私にはあんまり向いていなかった職種だと思うので、不合格になってよかったんだと思います。

 

寺田:差し支えなければ、そう思われた背景を教えてください。

 

申:私、時間のプレッシャーに対する耐性はあるほうなのですが、その一方で『99点を100点にするためにじっくりと時間を使う』といったことはあまり得意ではなく、コンサルティングにも向き不向きがあるのではないかと思います。

 

寺田:なるほど。そのような背景もあって実際に金融機関へ入ってみていかがでしたか。

 

申:2007年当時のチームは、お客様とのアポイントに出向いてからプライシングしたり資料を提出したりといったことを帰社後、遅い時間に作業するため、みんな2時3時まで会社に残っているのが普通でした。一度夕食に出た後、戻ってきて続きの作業をするということが日常で、その代わり朝は遅めで、9時ぐらいに出社する人がチームとして多かったように思います。

それでも新人はほかの営業やトレーダーと一緒に朝会に出なければならず、朝の6時には会社に到着していないといけない、オフィスと自宅を往復するだけといった生活が続きました。

週末も出社してほしいとまでは言われませんでしたが、『この本を読んでおいた方がいいよ』と多くの人が置いていきます。平日に読む時間はありませんが、一方で読んでいないと『読んでいないの?』という反応をされてしまうので、週末に何とか時間を作って読むようにしていました。書籍だけでなくレポート等もあり、うず高く積まれた資料を消化していく生活でした。

 

寺田:それでは次に久山さん、いかがですか。

 

株式会社ミダスキャピタル ディレクター 久山 貴久氏

 

久山:私も経済や金融のバックヤードは全くなく、大学時代は政治を勉強していました。また、学生時代はずっと部活で弓道をやっていたので、ビジネスの経験が全くない状態で就活を迎えました。ビジネスの世界で活躍している人に早く追いつきたいと思い、社会人になったら思う存分働けるところがいいと思っていました。

その観点で目をつけたのが戦略コンサルティングや投資銀行です。大学3年生の終わりに戦略コンサルティング企業から内定をいただいて、そこにしようかと思いましたが、最後にGS(ゴールドマン・サックス)から内定をいただけました。

どちらに行こうかと思ったときに、私が就活をしていた頃はちょうど戦略コンサルティング企業が採用人数を大きく増やしたタイミングでもあり、自分の裁量や仕事の領域が狭まってしまうのではないかといった危機感があったので、投資銀行に行ってみようと思いました。

 

寺田:渡邊さんの就活軸はどうでしょう。

 

株式会社GENDA CFO 渡邊 太樹 氏

 

渡邊:私だけ中途で外資系投資銀行に入っています。私が新卒のときに考えていたのは、入社して席について働き始めるDay1からビジネスの最前線に立ちたい、という観点でした。多くの人が外資系投資銀行を目指す中、私はそれによって自分の成長曲線を差別化できると思っていました。

銀行という組織は、ビジネス界での発言権は非常に高く、これを私は学生時代に他の学生よりも理解していた、と思っていました。銀行の持つ構造的な威力、新卒1年目の若者を先頭に立たせてもいいという土壌、など、間違いなかったと思います。一方で痛感したのが、戦場に出たはいいものの、自分には何も武器が無いということでした。M&Aで専門性を磨きたいと思い、転職しました。

私は大学3年生のときに大学の交換留学制度で留学していたのですが、そのときにボストンキャリアフォーラムというものがあり、その1日、2日程度で就活自体は終わりました。

 

面接官は素直な学生を求める

 

寺田:久山さんはGS時代に一次面接の対応をされていたと思います。新卒採用の面接において久山さんはどのような点を見ていたか教えていただけますか。

 

久山:正直なところ皆さん理論武装されていますので面接はとても難しかったですが、素直な印象があるかどうかをよく見ていました。

一定程度プライドを持ちつつ、一方で素直にやってみることができそうかという観点を見ていました。その姿勢は、質問されたことにちゃんと答えよう、求められていることを考えて答えようとしてくれる人に当てはまると思う一方で、自分の話したいことばかりを話されてしまうと、少し疑問符がついてしまうところがありました。

 

寺田:なるほど。キャッチボールできるかどうかという感じですね。渡邊さんはいかがですか。

 

渡邊:そうですね。私も面接のキーポイントは二つあって、一つは久山さんと一緒で、素直さです。仕事をしていく中で非常に大事な要素ですし、その人の成長曲線にも大きく関わる要素なので、すごく見ていました。

これを見るために、申し訳ないことだとは思いつつも、学生さんが聞かれて嫌だろうな、ということを敢えて深掘りしていきます。そうすると、段々と不機嫌になっていく学生さんと、それでも丁寧に答えてくださる学生さんがいますが、後者の方のほうが一緒に働けるイメージがあります。実際の業務でも、仕事を突き詰める観点でネガティブチェックをしながら物事を詰めていくことが多いためです。

もう一つは、物事をよく深掘りができるかどうかでした。投資銀行業務の特徴は、1つ1つの仕事を細部まで突き詰めることだと思っています。スポーツでも勉強でも 何でもいいのですが、何かの分野で深掘りしたことがある人の方が、この仕事にあっているのだろうと思います。

 

寺田:なるほど。ありがとうございます。深掘りの部分について久山さんはどう見ていましたか。

 

久山:そうですね。基本的には『なんで?』と深掘りをしていく。その中でどのような気持ちの変化があってどのような行動に繋がったかを見ます。

ESでは書ききれない部分なので、頑張って何かしたことについて深掘っていくと、『もっと頑張れたのではないか?』と思うこともあります。そういう具体的なアクションについて、気持ちの変化にまで落として深掘りしてもらいます。仕事において外からの刺激があったときに、どう反応してどのようにアクションを起こすかというところを、金融や経済と関係ない場面からでも垣間見ることができます。

また、会社に入ると同じ間違いを二度とくり返さないことがとても重要になってきます。指摘されたのに顧みずに結局同じミスをし続ける人は、会社の中で重用されなくなっていくというか、仕事にアサインされなくなっていくということにもつながります。

 

株式会社ミダスキャピタル 取締役パートナー 寺田 修輔氏

 

寺田:共通して、何をやってきたかよりも深掘りを重視していますね。私はシティグループのリサーチでリクルーティングヘッドを担当していました。リサーチとはいわば株屋なので、学生時代に株式投資をしていたかどうかは見ていました。株に興味があるのであれば株式投資をしてみることは自然の流れであり、アクションを起こしているという点はポジティブでした。

 

久山:私が内定時に社員の方から言われたことは『何にも染まっていないスポンジがほしい』でした。これは素直で吸収力があることを表していて、GSの投資銀行部門に関しては金融の知識や経験があるかどうかはあまり関係ないと思います。

 

寺田:ありがとうございます。

 

(後編に続きます)

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